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魔女っ子ミュー

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 ある晩、いつものように神秘的な海と夜空を眺めていたら、不思議な動きをする飛行物体が視界に入る。それは横からスッと動いてきたと思ったら海上でとまり、またスッと動いて止まると繰り返している。なんとなく、沖の小島の周りをフラフラしているようにも見える。


 「なんだろう……?」

 「風の魔女だね」 

 「え?」


 風の精霊の答えに驚いていたら、その光は凄いスピードでこっちにやって来た。


 「うわぁ!!」


 ズザァア……!


 いくらなんでも早すぎるその光る物体は俺のそばの焚火に向かって突っ込んで来てそのまま火あぶりになって居る。焚火の火消しに用意しておいたバケツで燃えているそいつに海水をぶっかけるとようやく火が消えた。


 「あたたたた……」


 と、うめいているそいつは可愛らしい魔女だった。俺はあまり詳しくないのだが、子供の頃に見た絵本の魔女そのものの恰好をしていて、空を飛んで来ていたので恐らく魔女なんだろうと思った。


 ランタンに照らされた明かりに見えたのはツルツルの綺麗な肌をしている、愛くるしい目をぱちくりさせた魔女……というか魔女っ子だ、年齢はおそらくローティーンという感じだろうか。


 「だ……大丈夫なのか?」

 「……はぃいい!!」


 俺の問いかけでやっと俺が居る事が気が付いたらしい。深くかぶった帽子からびっくりした顔を覗かせて叫ぶように答える。


 「びっくりしたなぁ……」

 「ホント、変な娘」


 その魔女っ娘は俺と風の精霊が話しているのを眺めていた。この魔女っ娘には風の精霊が見えるようだ。すると、魔女っ娘の帽子からひょっこり顔をだした風の精霊が現れて文句をいう。


 「ねーねー、あんたたちこんな所で焚火なんてしてたら危ないじゃないの!」

 「おお、これは風の精霊さんこんばんは」

 「え?う、こんばんわ……」


 俺の必殺の挨拶殺法で出鼻をくじくのだ。いつもこうやって怒ってる相手に一発食らわせてから仲良くするのが俺の得意技だ。すると、俺の風の精霊と魔女っ娘の風の精霊がお互い近寄って喧嘩を始めた。……挨拶した意味が無かった。


 「スピード違反だぞ!」

 「そんなの知らないわよ!大体海の上だもん!」


 などと、俺達をほったらかしで始めてしまうが多分あれは彼ら流の挨拶なのだろう。


 「どこか痛くない?」


 と、風の精霊達を放置して魔女っ娘に話しかける。


 「はい……なんとか」

 「君、どこから来たの?」

 「あっちです」


 と言って顔を伏せて夜空の月を指さす。面白い娘だなと思いつつ自己紹介をする。


 「オッサンはアキって言うんだ、君は?」

 「わ、私は風の大魔法使いの弟子のミューです」


 大魔法使い、そんなものは聞いたことが無かったが恐らく隣国なので今まで知らなかっただけだろう。そういえばこの国を統治しているのは風の大精霊だと言う事を以前聞いたことがあった。と言う事はその大魔法使いも風系統なのだろうか。


 「ところでお腹すいた?」

 「は、はい……い、いいえ」


 これも俺の得意技で相手に考えるすきを与えずにハイと言わせるものだ。大抵みんないつもお腹が減っているのだ。


 「温かいスープあるから、飲んでいきなさい」

 「……はい」


 やや強引にスープを飲ませることに成功した。一口飲んで落ち着いた頃に、風の魔法で濡れた衣服を乾燥させている。


 「君たちこんなとこで何してるの?」

 「私たちは隠遁したっていう大精霊使いを探しているのよ」


 俺の質問に、スープを飲んでいる魔女っ娘ミューの代わりに風の精霊が答えてくれた。


 「ふーん、それは大変だね、でも引退したのに探してどうするの?」

 「聞いてくれましたか!それならお答えしましょう!」


 などと芝居がかっている、この風の子は面白いテンションをしている、魔女っ娘ミューとは正反対のようだ。


 「探しだして捕まえちゃうのよ!」

 「何の為に?」

 「国王様の命令なのよ!」

 「ふーん、それは可哀想だね、同情するよ」

 「へ?」

 「だって、引退してるのに捕まえられちゃうのだろ?」

 「まー、それは仕方ないしー、だって王様の命令なんだもん!」

 「君変わってるね」


 俺がそういうと、風君が同意してくれた。


 「精霊なのに王様の言う事に従わされちゃうのっておかしくないかい?」

 「違うの!そうじゃないの!王様は精霊と契約しているの!」

 「ほぅ、それは面白いね、どんな契約なの?」

 「それは内緒なのよ!」


 やっぱり、この風の子は面白いと思った。でも王様と契約ってどういうことなんだろう。そう考えて居たらミューがスープの空のカップをこちらに差し出したので俺は自動的にお代わりを注ぐ。


 「ん!?」

 「ん?」


 やや、間をおいてから「ご馳走様でした」という。

 なるほど、この子は少しうっかりさんなんだなと把握した。焚火に飛び込んでくるあたりは少しうっかりどころではなかったが。


 「それで探している人の名前は、何て言うの?」

 「アキって言うらしいです……」

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