彼女の願いはあまりに愚かで、切なくて

「杏沙、お願い。私が退院するまでこの人と付き合って」

末期がんに侵された友人の由紀はそう言って、自分の彼氏──永井和臣を差し出した。

「うん、いいよ」

それで由紀の病気が快方に向かうならという気持ちから、杏沙は願掛けのつもりで頷いた。



それから和臣との付き合いが始まった。

手も握らない。キスもしない。身体を重ね合わせることも、彼との未来を想像することさえしない偽りの交際は、罪悪感だけが積もる日々。

そんなある日、和臣は言った。

「由紀にとって、君は一番大事な友達……親友なんだ」

その言葉に杏沙は、ちくりと罪悪感を覚えた。

杏沙は由紀の親友では無い。親友になりたくても、なれない。そんな資格は無いのだ。

なぜなら昔、杏沙は由紀に対してひどい裏切りをしたことがあったから。


友人の回復を信じて偽装恋愛を始めるOLと、偽装恋愛をしてでも恋人の回復を願う大学生のいびつで切ない秋から冬までのお話。

※以前投稿していましたが、加筆修正のためいったん非公開にして再投稿しています。
※他のサイトにも重複投稿しています。
24h.ポイント 0pt
6
小説 220,197 位 / 220,197件 ライト文芸 9,032 位 / 9,032件

あなたにおすすめの小説

知らないうちに離婚されていた男爵令嬢は実家に帰ることにしました【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
結婚して1年。 元・貴族令嬢エヴェリナは、平民商人の夫にこき使われ、自分の時間すら奪われていた。 久しぶりの自由時間を楽しんで帰宅すると、門番が立ち塞がり── 「ここより先には立ち入れません」 夫が勝手に離婚届を偽造し、彼女を家から追放した。 さらに「不貞の証拠」として、エヴェリナのサインを悪用した偽装契約書まで作成。 名誉を守るため裁判へ挑むが、そこで明らかになったのは── ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。ご都合主義です。

『最後に名前を呼ばれた日、私はもう妻じゃなかった』

まさき
恋愛
「おい」「なあ」 それが、夫が私を呼ぶときの言葉だった。 名前を呼ばれなくなって三年。 私は、誰かの妻ではあっても、もう“私”ではなかった。 気づかないふりをして、耐えて、慣れて、 それでも心は、少しずつ削れていった。 ——だから、決めた。 この結婚を、終わらせると。 最後の日、彼は初めて私の名前を呼ぶ。 でも、その声は、もう届かない。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

「お前の看病は必要ない」と追放された令嬢——3日後、王子の熱が40度を超えても、誰も下げ方を知らなかった

歩人
ファンタジー
「お前の看病などいらない。薬師がいれば十分だ」 王太子カールにそう告げられ、侯爵令嬢リーゼは静かに宮廷を去った。 誰も知らなかった。夜ごとの見回り、薬の飲み合わせの管理、感染症の予防措置——宮廷の健康を守っていたのは薬師ではなくリーゼだったことを。 前世で救急看護師だった記憶を持つ彼女は、辺境の診療所で第二の人生を始める。 一方、リーゼが去った宮廷では原因不明の発熱が蔓延し、王太子自身も倒れる。 迎えに来た使者にリーゼは告げる——「お薬は出せます。でも、看護は致しません」

愛人を連れて帰ってきた翌朝、名前すら呼ばれなかった私のもとに王太子殿下が迎えに来ました 〜三年間冷遇された妻、今は毎日名前を呼ばれています〜

まさき
恋愛
侯爵家に嫁いで三年。 夫に名前を呼ばれたことは、一度もなかった。 社交の場ではただ隣に立つだけ。 屋敷では「妻」としてすら扱われない。 それでも、いつかは振り向いてもらえると信じていた。 ――けれど、その期待はあっさりと壊れる。 夫が愛人を伴って帰宅した、その翌朝。 私は離縁状を残し、静かに屋敷を出た。 引き止める者は、誰もいない。 これで、すべて終わったはずだった―― けれどその日、私のもとに現れたのは王太子殿下。 「やっと手放してくれたか。三年も待たされました」 幼い頃から、ただ一人。 私の名前を呼び続けてくれた人。 「――アリシア」 その一言で、凍りついていた心がほどけていく。 一方、私を軽んじ続けた元夫は、 “失ってはいけないもの”を手放したことに、まだ気づいていない。 これは、三年間名前を呼ばれなかった私――アリシアが、 本当の居場所と愛を取り戻す物語。

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。

白い結婚はそちらが言い出したことですわ

来住野つかさ
恋愛
サリーは怒っていた。今日は幼馴染で喧嘩ばかりのスコットとの結婚式だったが、あろうことかパーティでスコットの友人たちが「白い結婚にするって言ってたよな?」「奥さんのこと色気ないとかさ」と騒ぎながら話している。スコットがその気なら喧嘩買うわよ! 白い結婚上等よ! 許せん! これから舌戦だ!!

愛していると気づいたから、私はあなたを手放します

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
愛しているのに、触れられない。 幼なじみの夫は、こう言った。 「もう、女性を愛することはできない」と。 それでも「君がいい」と言い続ける彼と、 子どもを望む現実の間で、私は追い詰められていく。 だから決めた。 彼のためにも、私は他の誰かを探す。 ――そう思ったのに。 なぜあなたは、そんな顔で私を追いかけてくるの? これは、間違った優しさで離れた二人が、 もう一度、互いを選び直すまでの物語。 ※表紙はAI生成イラストを使用しています。