追放されたおっさんは最強の精霊使いでした

すもも太郎

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王とミューの頼み

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「アキって言うらしいです……」

 「そっかぁ、アキさんも大変だねえ、それでは捜索頑張ってくださいね」


 俺は出来たら関わり合いになりたくなかった。どこの国の王様でも権力者であっても二度と誰かに仕える気分はしないのだ。この素晴らしいスローライフの楽園を手放すなんてありえない。


 「……ちょっと待ちなさいよ!あんたさっきアキって自己紹介したでしょう?」

 「あ、聞こえてた?」


 風同士で罵り愛いをしていたので、聞こえてないと思っていたのだが。


 「あ、そうでしたね」


 などと、魔女っ娘のミューまで気が付いてしまった。この子のぼんやり力に賭けていたのだが、それも無駄に終わった。


 「それで、王に会わせてどうするのだ?」

 「そっから先は知らないのよ!」


 と偉そうに言う。


 「そこ偉そうに言うところじゃないから」 

 「いいのよ、私はずっとこういうキャラなんだから!」


 「……そうか?なんか嫌な予感しかしないのだが」

 「お嫌なんですね……」


 俺がやんわり拒絶すると、ミューが悲しそうな顔になってしまう。止めてくれ、それは反則だろう……と抗議したくなる。


 「……」

 「ではこうしよう、会うけど誰の指図も受けないし、なにも約束はしないという条件付きだ」

 「私には決める権限がありません……」


 とまたしても悲しい顔になってしまう。美少女の悲しい顔とかほんとうにずるい。ほんとうに……。


 「ああ……判ったよ、会ってやるよ……」

 「ええ!本当ですかぁ!」


 と言って目をウルウルさせる……俺の中で何かがうずくのを感じた。


 「仕方ないな……でもなんで見つかったんだろうな」

 「空からみたら丸見えだもんよ!」

 「空?」

 「あそこです」


 と言ってミューが天空を指さす。その先には三日月があって……三日月の黒い部分にダイヤの形の何かが浮かんでいた。


 「貴方が超精霊力でこの島をぼっこぼこにしたのをあそこから見ていたのよ」

 「……あの浮かんでるのは?」

 「大魔法使いラムーの城」


 とミューが言う。世のなかには飛んでもないもの……いや飛んでいるものが存在するのだとその時思い知った。

 それで何となく話が見えてきた、恐らく大魔法使いラムーが王から依頼されてこの一帯に潜んでいるであろう俺を探していたという事なのだろう。でもそんな事なら弟子ではなくて自分で探しにくればいいものを。


 「ラムーさんはなぜ弟子のミューさんに探させるんだろうね」

 「もうお歳なのよ」


 なにか訊いてはいけなかったような気がした。


 「そうか、それでいつ行けばいいんだ?」  

 「明日でお願いできますか?よければお迎えにあがります」


 俺は明日で良いと答えた。答えた後に気が付いたが俺は礼服とか国から支給された類の服は全部置いてきたし、今はボロボロの普段着しかないのだった。王に謁見するという事が大事に思えて俺はやはり気持ちが沈む。


 ここに来たのがミューでなければ絶対に断っていたのに……と思うがもう後の祭りだった。いや、いっそこのまま逃げてしまうのもありなんじゃないか?とも思うが折角土の精霊、風の精霊と共作したこの楽園を捨てるのも惜しい。


 「仕方ない、今回だけだぞ」


 と独り言で自分に言い聞かせる、何が有っても絶対に誰とも何も約束はしないと固く決意して俺はその晩眠りについた。





・ 

 翌日、魔女っ子ミューの迎えでアガターヌの王宮に出向くと俺の恰好があまりにもみすぼらしいので驚かれる。

 マルター王国では余程酷い扱いを受けていたのだろうと、勝手に思われたかもしれない。実際に俺の給料は大したものでは無かった、騎士の称号はあったが名ばかり騎士という奴だ。貰った給料の半分は孤児院に寄付してしまうし、もう半分はレアメタルなどを集める為に使ってしまうので貯金はほとんどない。そのこと自体には全く後悔もないし、気にしては居なかったのだが。


 謁見の間に上がると、王が玉座から降りてきて俺の所までやって来た。俺は初め何かのジョークだろうと身構えていたのだが、次にもっとショックな話が始ってしまった。


 「今日はわざわざ来ていただいて恐縮じゃ……」


 などと、王という地位にある人としては最上級の労いの文句である。これには俺の方が逆に恐縮してしまう。


 「いや、そこまでの事ではないのですが……」

 「実は是非にお願いがある」


 王が超本気の真面目顔で俺の目を見て頼んでくる。こんな事があり得るのかと、担がれているのではないかと思ってしまう程だ。


 「本国へ、マルター王国に戻って欲しいのじゃ」

 「はい?」


 俺は自分の耳を疑った。


 「そなたが国を抜けたというのは聞き及んでおるが、そのためにマルター国が酷い有様なのじゃ」

 「……と言いますと?」

 「知らぬのか?そなたの国では土の大精霊が寝入ってしまい国がボロボロに疲弊しているのだぞ?」


 「それは、初耳です……ですが」


 俺は頭が混乱していた、敵対している国同士で相手が疲弊しているのなら攻め込むチャンスではないのか?それを戻って国を立て直す事に注力してくれとは、どういうことなのだろう……?


 王の話によれば、土の精霊が寝入った事により国内は滅茶苦茶になり、すでに死に体だという。疫病がはびこり飢饉で食料すらまともにない状態が続いていると。


 「それならば攻め落とす好機では……?」

 「判るように申すと、例え現状のマルター国を攻め落としたとしてもボロボロである事には変わらないし、マルター国を立て直す事が非常に困難であるのだ……そして復興を出来るのはそなただけしか居らんと言う事じゃ」


 王が言うには、国内で発生している疫病が蔓延するにつれて隣国にも被害が拡大しているという。アガターヌ国としてもいい迷惑だと。たとえそんなマルター国を手に入れても得するどころか大赤字なのだという。


 俺はため息がでた。こんな話は初めて聞いたわけで、それも敵国の王から直に本国を助けてやれと言われるとは……。この話を信じて良いのやらよくわからなかったが、俺を騙す事のメリットが王に無いような気がしたので信じるしかないようだ。


 「ですが、私はもう国から捨てられた身、今更戻れと言われてもあの王の下で働くつもりもありません」

 「ではこういう事にしてもらえないか?そなたはワシの依頼としてマルター国に行き復興を手助けする」

 「……確かに筋は通っていると思いますが」

 「では、あれをやろう」


 と言うと王が手で合図して特殊な魔法具を持ってこさせた。それは手のひらサイズの四角い透明なクリスタルで出来たものでエナジーキューブと呼ばれていた。


  「これはな大魔法使いラムー謹製の特別品じゃ、この中に土の精霊の力を蓄えて持っていけるのじゃ」


 王が何を言っているのか大体の意味が分かった。俺があの島で土の精霊を使って大工事をしたことを知っているのだ。その土の精霊の力を借りてこれに溜め、マルター国の土の精霊に食わせてやれという事なのだろう。


 俺はそれを仕方なく承知した。だがイザ土の大精霊に会えると思うと心が躍った。俺にとっては実家に帰ると言う事に等しいのだ。


 そうだ、これは帰郷。仕事ではない。そう自分に言い聞かせて旅を始めた。


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