追放されたおっさんは最強の精霊使いでした

すもも太郎

文字の大きさ
24 / 52

おっさんは忙しく飛んで行く

しおりを挟む
「でも……なぜあの時に王に本当の事を言わなかったのです?」


 王宮を出ながら、彼女は言った。ミューは俺が彼女の抗議を止めた事が気になったようだった。


 「そうだな、1つは何を言ってもやはり言い訳にしか成らなかったしな、あの黒鉄の玉石の攻撃を阻止できなかったのは事実であったし……もう1つは権力者に好き勝手に使われるのが嫌になっていた事、彼らは自分たちの都合の良いように他人を使う、それに見合うだけの対価も支払わずに……そして俺に頼っているうちは何も進歩しない、自立しない王様なんておかしいだろう?」


 「凄い、そこまで考えていたのですね……」

 「でも~本当は?」


 とミューの風っ子が鋭く突っ込んでくる。


 「う……ん、楽園でスローライフを送りたかったからだ……」

 「ふふふ、でも私もそうです、ずっとアキと居たい……」


 「うむ……」


 なにか急に話の方向が変わってしまった。


 「ダメですか?」

 「そ、そんな事はないぞ……」


 「あ、本当は少し面倒って思いませんでした?」 


 俺が少し心配そうにしているのが伝わってしまったようだ。


 「そんな事あるわけない……けれど」

 「けれど?」


 「……あくまでも仮定の話だけれど、何時かそのうちミューかラムが消えたら嫌だな……と」

 「えー!そんなぁ……私消えません!」


 「……以前、ラムに言われた事が頭から離れなくてな」

 「?」


 「ラムは”封印が解けないと死ねない”と言っていた、それは……つまり」

 「封印が解けたら死ぬって事ですか?」


 「そう……なのかな、と、最近はラムとミューの境が希薄になって来ていたし、それでもし封印が破られたら……」

 「……」


 「これはアレだね」

 「うん、そうそう!」


 と風っ子が話している。


 「あれって?」とミュー。

 「愛って奴だね」

 「そうそう」


 と風っ子は軽薄に喜ぶ。風っ子が喜んでいるとほのぼのとしてしまう。何故かそれで良いと思えるのだ。


 「そうだな、俺は2人とも好きだしどちらかと別れるのは……あまり考えたくない」

 「あのね、ラムも同じって言ってます、私もです……」


 「ありがとう」


 まさかこんな展開になるとは思っていなかった。見渡す限り戦乱の煙が上がっている市街地を、王宮から眺めて話すような事では無かったのは確かだ。ロマンティックの欠片もない。


 「でも、封印はそういうものじゃないよってラムが言ってるの!」

 「本当か?」


 思わず声が裏返ってしまった。


 「ええ、多分大丈夫って言ってます」

 「多分……か」


 「アキ次第らしいです」

 「え、そんな……」


 その後、何故かミューが真っ赤になって黙り込んだ。ラムに何か言われたらしい事は判ったが……。


 ドォオオオオン!


 3人の会話をぶち壊すようにして目の前で燃えている黒鉄から黒く大きなカプセルが飛び出した。それは爆音を上げて発射され、飛翔し、加速していく。ミューと顔を見合わせる。


 「追わなきゃ!!」


 なんだかんだ言っても、目の前で事件が発生すると放置出来る性ではない、と言う事をその時に痛感した。これで又俺の楽園ライフが遠のく……とどこかで考えていた。


 猛烈な速度で加速しながら飛翔していくその黒いカプセルを、箒でミューと追いかけていくと次第に速度が低下してついには追いついた。こいつを破壊してやろうと魔法を唱える瞬間に、前方に突如巨大な黒いグルグルが現れて俺達はカプセルごとそれに飛び込んでしまった。







 また、例の眩暈の後に視界に広がったのはガリアントの都市だった。ガリアントに戻って来てしまっていたのだ。


そのカプセルは突如として俺たちの前から消えていた。消えたというよりはあの転移渦に飲まれた時には既に別の所に行ったのだろうと思われた。


 「ここは?」

 「ガリアントだな……」


 それで、取りあえず以前作った孤島の楽園に戻る事にした。しかし、俺たちが作った楽園の住居は酷く荒れていた。家や器物の類が全て自然の風化の影響を受けてボロボロになっていたのだ。


 「……」


 少しの間2人で呆然と眺めていた。


 「これはどういう事なんだろう」

 「まるで数十年も経っているようです……」


 「そうだ!以前町で見たあの占い師に訊いてみよう」


 あの占いのオババの事を思い出していた。今もまだいると良いが。その前に2人で魔法をつかって家を建て直した……元通り以上にバージョンアップして砂ドーム形状に作り直した。ミューが、以前作ったあのドームにもう一度住みたいという。今回も可愛らしい白い砂のドームが完成した。念のためにそれに土魔法の防御壁を掛けて覆ってから町に飛空舟で出かけた。


 街の様子はあまり変化が無かったが、住人の服装が妙にシックなものに代わっている。以前は原色系の派手な服装だったのに、今はモノトーンばかりだ。そして、占いオババを探すと、居た!以前と変わらない場所にテーブルを出していた。


 「やぁ、お久しぶりです。覚えていますか?」

 「ふむ、どなたかな……おやその娘は」


 オババはどことなく老けていて、オババと言うよりは老婆であった。


 「思い出したよ!……でも変わらないね、もう20年経つというのにまだ少女のままとは……」

 「あ、この子の事はあまり気にしないでください、それで少しお聞きしたいことが」


 「いいよ、掛けて」


 勧められるままに椅子に座る。


 「20年経つといいましたが」

 「そうじゃ、あれから20年じゃな、お前さんも変わらない男っぷりじゃな、ほっほっほ」


 「……管理センターの事は何かご存知ですか?」

 「しっ、静かに。その名を口にするでないよ」


 「何かあったのですか?」

 「あれは解体されて今は統合管理庁というのだよ」


 「なんですかそれは?」

 「あらゆる事態にそなえる軍事組織さ」


 「どこにあるのですか?」

 「それは極秘だから誰もしらないよ」


 そうかありがとうと礼を言って金貨を一枚置いて去ろうとしたら、不思議そうな顔でその金貨を眺めていた。


 ああ、そうだった、それはギルドで貰った魔物討伐の成功報酬のものだったのだ。

しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

処理中です...