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おっさんは忙しく飛んで行く
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「でも……なぜあの時に王に本当の事を言わなかったのです?」
王宮を出ながら、彼女は言った。ミューは俺が彼女の抗議を止めた事が気になったようだった。
「そうだな、1つは何を言ってもやはり言い訳にしか成らなかったしな、あの黒鉄の玉石の攻撃を阻止できなかったのは事実であったし……もう1つは権力者に好き勝手に使われるのが嫌になっていた事、彼らは自分たちの都合の良いように他人を使う、それに見合うだけの対価も支払わずに……そして俺に頼っているうちは何も進歩しない、自立しない王様なんておかしいだろう?」
「凄い、そこまで考えていたのですね……」
「でも~本当は?」
とミューの風っ子が鋭く突っ込んでくる。
「う……ん、楽園でスローライフを送りたかったからだ……」
「ふふふ、でも私もそうです、ずっとアキと居たい……」
「うむ……」
なにか急に話の方向が変わってしまった。
「ダメですか?」
「そ、そんな事はないぞ……」
「あ、本当は少し面倒って思いませんでした?」
俺が少し心配そうにしているのが伝わってしまったようだ。
「そんな事あるわけない……けれど」
「けれど?」
「……あくまでも仮定の話だけれど、何時かそのうちミューかラムが消えたら嫌だな……と」
「えー!そんなぁ……私消えません!」
「……以前、ラムに言われた事が頭から離れなくてな」
「?」
「ラムは”封印が解けないと死ねない”と言っていた、それは……つまり」
「封印が解けたら死ぬって事ですか?」
「そう……なのかな、と、最近はラムとミューの境が希薄になって来ていたし、それでもし封印が破られたら……」
「……」
「これはアレだね」
「うん、そうそう!」
と風っ子が話している。
「あれって?」とミュー。
「愛って奴だね」
「そうそう」
と風っ子は軽薄に喜ぶ。風っ子が喜んでいるとほのぼのとしてしまう。何故かそれで良いと思えるのだ。
「そうだな、俺は2人とも好きだしどちらかと別れるのは……あまり考えたくない」
「あのね、ラムも同じって言ってます、私もです……」
「ありがとう」
まさかこんな展開になるとは思っていなかった。見渡す限り戦乱の煙が上がっている市街地を、王宮から眺めて話すような事では無かったのは確かだ。ロマンティックの欠片もない。
「でも、封印はそういうものじゃないよってラムが言ってるの!」
「本当か?」
思わず声が裏返ってしまった。
「ええ、多分大丈夫って言ってます」
「多分……か」
「アキ次第らしいです」
「え、そんな……」
その後、何故かミューが真っ赤になって黙り込んだ。ラムに何か言われたらしい事は判ったが……。
ドォオオオオン!
3人の会話をぶち壊すようにして目の前で燃えている黒鉄から黒く大きなカプセルが飛び出した。それは爆音を上げて発射され、飛翔し、加速していく。ミューと顔を見合わせる。
「追わなきゃ!!」
なんだかんだ言っても、目の前で事件が発生すると放置出来る性ではない、と言う事をその時に痛感した。これで又俺の楽園ライフが遠のく……とどこかで考えていた。
猛烈な速度で加速しながら飛翔していくその黒いカプセルを、箒でミューと追いかけていくと次第に速度が低下してついには追いついた。こいつを破壊してやろうと魔法を唱える瞬間に、前方に突如巨大な黒いグルグルが現れて俺達はカプセルごとそれに飛び込んでしまった。
・
・
・
また、例の眩暈の後に視界に広がったのはガリアントの都市だった。ガリアントに戻って来てしまっていたのだ。
そのカプセルは突如として俺たちの前から消えていた。消えたというよりはあの転移渦に飲まれた時には既に別の所に行ったのだろうと思われた。
「ここは?」
「ガリアントだな……」
それで、取りあえず以前作った孤島の楽園に戻る事にした。しかし、俺たちが作った楽園の住居は酷く荒れていた。家や器物の類が全て自然の風化の影響を受けてボロボロになっていたのだ。
「……」
少しの間2人で呆然と眺めていた。
「これはどういう事なんだろう」
「まるで数十年も経っているようです……」
「そうだ!以前町で見たあの占い師に訊いてみよう」
あの占いのオババの事を思い出していた。今もまだいると良いが。その前に2人で魔法をつかって家を建て直した……元通り以上にバージョンアップして砂ドーム形状に作り直した。ミューが、以前作ったあのドームにもう一度住みたいという。今回も可愛らしい白い砂のドームが完成した。念のためにそれに土魔法の防御壁を掛けて覆ってから町に飛空舟で出かけた。
街の様子はあまり変化が無かったが、住人の服装が妙にシックなものに代わっている。以前は原色系の派手な服装だったのに、今はモノトーンばかりだ。そして、占いオババを探すと、居た!以前と変わらない場所にテーブルを出していた。
「やぁ、お久しぶりです。覚えていますか?」
「ふむ、どなたかな……おやその娘は」
オババはどことなく老けていて、オババと言うよりは老婆であった。
「思い出したよ!……でも変わらないね、もう20年経つというのにまだ少女のままとは……」
「あ、この子の事はあまり気にしないでください、それで少しお聞きしたいことが」
「いいよ、掛けて」
勧められるままに椅子に座る。
「20年経つといいましたが」
「そうじゃ、あれから20年じゃな、お前さんも変わらない男っぷりじゃな、ほっほっほ」
「……管理センターの事は何かご存知ですか?」
「しっ、静かに。その名を口にするでないよ」
「何かあったのですか?」
「あれは解体されて今は統合管理庁というのだよ」
「なんですかそれは?」
「あらゆる事態にそなえる軍事組織さ」
「どこにあるのですか?」
「それは極秘だから誰もしらないよ」
そうかありがとうと礼を言って金貨を一枚置いて去ろうとしたら、不思議そうな顔でその金貨を眺めていた。
ああ、そうだった、それはギルドで貰った魔物討伐の成功報酬のものだったのだ。
王宮を出ながら、彼女は言った。ミューは俺が彼女の抗議を止めた事が気になったようだった。
「そうだな、1つは何を言ってもやはり言い訳にしか成らなかったしな、あの黒鉄の玉石の攻撃を阻止できなかったのは事実であったし……もう1つは権力者に好き勝手に使われるのが嫌になっていた事、彼らは自分たちの都合の良いように他人を使う、それに見合うだけの対価も支払わずに……そして俺に頼っているうちは何も進歩しない、自立しない王様なんておかしいだろう?」
「凄い、そこまで考えていたのですね……」
「でも~本当は?」
とミューの風っ子が鋭く突っ込んでくる。
「う……ん、楽園でスローライフを送りたかったからだ……」
「ふふふ、でも私もそうです、ずっとアキと居たい……」
「うむ……」
なにか急に話の方向が変わってしまった。
「ダメですか?」
「そ、そんな事はないぞ……」
「あ、本当は少し面倒って思いませんでした?」
俺が少し心配そうにしているのが伝わってしまったようだ。
「そんな事あるわけない……けれど」
「けれど?」
「……あくまでも仮定の話だけれど、何時かそのうちミューかラムが消えたら嫌だな……と」
「えー!そんなぁ……私消えません!」
「……以前、ラムに言われた事が頭から離れなくてな」
「?」
「ラムは”封印が解けないと死ねない”と言っていた、それは……つまり」
「封印が解けたら死ぬって事ですか?」
「そう……なのかな、と、最近はラムとミューの境が希薄になって来ていたし、それでもし封印が破られたら……」
「……」
「これはアレだね」
「うん、そうそう!」
と風っ子が話している。
「あれって?」とミュー。
「愛って奴だね」
「そうそう」
と風っ子は軽薄に喜ぶ。風っ子が喜んでいるとほのぼのとしてしまう。何故かそれで良いと思えるのだ。
「そうだな、俺は2人とも好きだしどちらかと別れるのは……あまり考えたくない」
「あのね、ラムも同じって言ってます、私もです……」
「ありがとう」
まさかこんな展開になるとは思っていなかった。見渡す限り戦乱の煙が上がっている市街地を、王宮から眺めて話すような事では無かったのは確かだ。ロマンティックの欠片もない。
「でも、封印はそういうものじゃないよってラムが言ってるの!」
「本当か?」
思わず声が裏返ってしまった。
「ええ、多分大丈夫って言ってます」
「多分……か」
「アキ次第らしいです」
「え、そんな……」
その後、何故かミューが真っ赤になって黙り込んだ。ラムに何か言われたらしい事は判ったが……。
ドォオオオオン!
3人の会話をぶち壊すようにして目の前で燃えている黒鉄から黒く大きなカプセルが飛び出した。それは爆音を上げて発射され、飛翔し、加速していく。ミューと顔を見合わせる。
「追わなきゃ!!」
なんだかんだ言っても、目の前で事件が発生すると放置出来る性ではない、と言う事をその時に痛感した。これで又俺の楽園ライフが遠のく……とどこかで考えていた。
猛烈な速度で加速しながら飛翔していくその黒いカプセルを、箒でミューと追いかけていくと次第に速度が低下してついには追いついた。こいつを破壊してやろうと魔法を唱える瞬間に、前方に突如巨大な黒いグルグルが現れて俺達はカプセルごとそれに飛び込んでしまった。
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また、例の眩暈の後に視界に広がったのはガリアントの都市だった。ガリアントに戻って来てしまっていたのだ。
そのカプセルは突如として俺たちの前から消えていた。消えたというよりはあの転移渦に飲まれた時には既に別の所に行ったのだろうと思われた。
「ここは?」
「ガリアントだな……」
それで、取りあえず以前作った孤島の楽園に戻る事にした。しかし、俺たちが作った楽園の住居は酷く荒れていた。家や器物の類が全て自然の風化の影響を受けてボロボロになっていたのだ。
「……」
少しの間2人で呆然と眺めていた。
「これはどういう事なんだろう」
「まるで数十年も経っているようです……」
「そうだ!以前町で見たあの占い師に訊いてみよう」
あの占いのオババの事を思い出していた。今もまだいると良いが。その前に2人で魔法をつかって家を建て直した……元通り以上にバージョンアップして砂ドーム形状に作り直した。ミューが、以前作ったあのドームにもう一度住みたいという。今回も可愛らしい白い砂のドームが完成した。念のためにそれに土魔法の防御壁を掛けて覆ってから町に飛空舟で出かけた。
街の様子はあまり変化が無かったが、住人の服装が妙にシックなものに代わっている。以前は原色系の派手な服装だったのに、今はモノトーンばかりだ。そして、占いオババを探すと、居た!以前と変わらない場所にテーブルを出していた。
「やぁ、お久しぶりです。覚えていますか?」
「ふむ、どなたかな……おやその娘は」
オババはどことなく老けていて、オババと言うよりは老婆であった。
「思い出したよ!……でも変わらないね、もう20年経つというのにまだ少女のままとは……」
「あ、この子の事はあまり気にしないでください、それで少しお聞きしたいことが」
「いいよ、掛けて」
勧められるままに椅子に座る。
「20年経つといいましたが」
「そうじゃ、あれから20年じゃな、お前さんも変わらない男っぷりじゃな、ほっほっほ」
「……管理センターの事は何かご存知ですか?」
「しっ、静かに。その名を口にするでないよ」
「何かあったのですか?」
「あれは解体されて今は統合管理庁というのだよ」
「なんですかそれは?」
「あらゆる事態にそなえる軍事組織さ」
「どこにあるのですか?」
「それは極秘だから誰もしらないよ」
そうかありがとうと礼を言って金貨を一枚置いて去ろうとしたら、不思議そうな顔でその金貨を眺めていた。
ああ、そうだった、それはギルドで貰った魔物討伐の成功報酬のものだったのだ。
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