追放されたおっさんは最強の精霊使いでした

すもも太郎

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剣聖と神仙

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一方その頃、帝国ではちょっとした騒ぎになっていた。2度も真魔兵が撃退されたことが広まってしまったのだ。兵には戒口令をしいて口外しないように厳命してあったのだが無駄であった。今まで猪猿のコンビ真魔兵が倒された事などなかったのだから仕方ないのだが‥‥‥。



 アルダイルは王子に作戦の失敗を伝え、苦々しく吐き捨てた。


 「いったい何者なのだ‥‥‥」

 「それは我も知りたいものだな」 


 王子は、だが怒っては居らず寧ろ興味が沸いたという風にアルダイルに言う。


 「既に調査チームが潜入しておりますのでしばらくお待ちください」

 「よい!期待しておるぞ、下がれ」

 「は!」


 それでアルダイルは本日のお役目が終了して自室に戻る。今までの戦果のノートを見直して何か落ちが無いか再度確認する。報告書によれば、前回同様に今回も魔獣の外傷は火によるもの、そして今回においては深い切り傷に大きな氷が残留していたともある。


 となれば考えられるのは同盟が火薬を発明したか、または火と氷の魔法を開発したか。その両方という可能性がある。そこで古い文献をとりだして調べてみると、この大陸の遥か西方に天に続くと言われる天門山があり、そこの山に神仙のブラーフと呼ばれる魔法使いが住んでいるらしい。


 ブラーフは200年前にその天門山に引きこもってから下界と縁を断っていると書かれていた。そいつが今更下界に降りてきて真魔兵討伐などという血なまぐさい事に手を貸したというのだろうか?


 そして、この世界には真魔兵に対抗しうる力を持つ者がもう1人だけ存在していた、彼は通称剣聖のアギトと呼ばれる剣士であり生涯を剣術の修練に捧げているという変人であった。帝国、同盟のどちらにも与せず剣術の鍛錬に励んでいるのだが、一度だけ力試しで猿真魔兵に挑みこれを撃退した事がある本物の超戦士だ。


 あと考えられるのは南の島の伝説の魔女だが、こちらの情報は未だ何もない。伝説によれば土と風の魔法を使うらしいので、今回の報告‥‥‥火と氷‥‥‥では全く属性すら合わないので可能性は非常に低いと考えた。


 一瞬アキとミューの2人組の事が脳裏にかすめたのだが、あの2人は半年前に転移ゲートで追放したばかりだったから、戻ってきている可能性はない。


 いずれにしても調査チームが戻るのを待つほかない。







 ダレーシア国にその日、珍客が来ていた。それも2組。

 初めにやって来たのは剣聖のアギトであった。


 「お久しぶりでございます、国王」

 「うむ、久しいな、益々強盛であるようじゃな」


 「はい、ですが本日は我よりも猛者が居ると聞いてやって参りました」

 「‥‥‥」


 間違いなくアキとミューの事であったのだが、それは一切口外出来ないので王は黙ってしまった。


 「ふむ‥‥‥」


 どう答えようかと自慢の美しく伸ばした顎鬚を指で摘みながら思案していると、突然城内が騒がしくなり近衛兵が飛び込んできた。


 「お知らせいたします、ただいま夜鷹5人衆がまいりました」


 これまた不思議な事が起こった、常は全く姿すら見せない夜鷹5人衆が昼間どうどうと王宮にやってくるとは。王がそれを訝いぶかしんでいると、5人衆と1人の老人が近衛兵に連れられて謁見の間に入ってくるのが見えた。


 「先客がいるのじゃが、まぁよい‥‥‥して、何用じゃ?」


 王が鷹揚に言うと夜鷹5人衆が王ではなく老人に跪いてしまった。おかしな事をしていると思うと老人が突然どこからともなく声を発し、自己紹介を始めた。


 「我はブラーフ」


 神仙のブラーフは口を動かさずに空間に声をこだまさせていた。


 「まさか‥‥‥」

 「はい、我らがお師さまの神仙のブラーフ様にございます」


 と夜鷹代表のシグが答える。


 王は直ぐに玉座から立ち上がり歩み寄って、神仙のブラーフと呼ばれた老人に自己紹介をする。


 「これは初めまして、我は現国王のアルハンドレ3世でございます」


 ブラーフは王には興味がないと言わんばかりに、剣聖のアギトをチラッと見てから宣った。


 「ここに大魔法使いが居ると聞き山を下りて来たのだが」

 「‥‥‥ふむ‥‥‥では失礼」


 と言って王は踵を返して玉座に戻り座り込んでしまう。







 一方、俺とミューは北の大陸の南方へ楽園探しに出かけていた。有り難い事にこの世界では北の大陸でもそれほど気温が変わらず、特に今の時期は大陸の南に行くと暑い程の気候に恵まれていた。


 早速、楽園候補の無人島を幾つか見つけてその1つにドームハウスを作り住み始める。どこの世界にいても、2人は楽園を築いて暮らすというライフスタイルを決して変えたりはしないのだ。


 王宮へはミューの転移ゲートで毎朝出向いている。今は特に戦況に問題もないし、それに同盟諸国に協力依頼を出して準備に入っている段階なので暇なのだ。


 俺とミューは大いに余暇を楽園で楽しむのだった。

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