おちんぽさまのいうとおり

鳥柄ささみ

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おちんぽさまのいうとおり

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葵生あおい、あんたおちんぽさまの生贄に決まったから」
「……何て?」

 帰省早々、母親から理解できない言葉をぶつけられて戸惑う葵生。
 けれど、そんな葵生とは対照的に母は淡々とした反応だった。

「だから、あんたがおちんぽさまの生贄になることに決まったの。もう村全体で決めたことだから」
「いや……はい? お……さまってそもそも何?」

 口に出したくもない卑猥な言葉を上手くはぐらかしながら尋ねると、母はそんなことも知らないのかと呆れたように大きな溜め息をついた。

「信じられない。そんなことも知らないだなんて。村の中央に鎮座してるお社があるでしょ。あれがおちんぽさまよ。この村に代々伝わる子孫繁栄の神様で、いつもお参りしてたでしょ」
「え、あれってそうだったの? 全然知らないでお参りしてた。いや、でも、そもそも何で私が生贄にされなきゃいけないの」

 なぜ帰省するなり生贄だなんだと言われなければならないのかと抗議すると、いよいよ頭を抱え出す母。
 その態度は何だか自分がおかしなことを言ってるのではないかと葵生が錯覚しそうになるほど、やれやれといった様子だった。

「この村のあんたと同世代の子はみんな既に結婚してるし、恋人がいるの。あんたはいい年なのに未だに独身で彼氏もいないし、そもそも無職でしょう? 一番都合がいいのは葵生。あんただけなのよ」
「いやいや、いい年ってまだ二十四だし。あと、今は確かに無職かもしれないけど、それは勤めてたとこが急に倒産しちゃっただけだから。これから転職活動もするって言ったじゃん」

 村を出て上京後、すぐに勤めた会社が不況の煽りを受けて昨年末に倒産。
 元々葵生はUターンせずにその地で転職活動をする予定だったが、一度戻って落ち着いてから改めて転職活動すればいいのではと提案してきたのは紛れもなく母だった。

 それなのに、帰ってくるなり手のひら返しで生贄になれなどと、葵生がすぐに納得できるはずもなかった。

「事態は一刻を争うのよ。村のどの若い夫婦も突然不妊になって子供ができなくなってしまって、元々授かってた近所の美奈ちゃんだって急に流れちゃったし、きっとおちんぽさまの不興を買ってしまったんだわ。だから、赦しを乞うためにも葵生が生贄になる必要があるの」
「いや、何でよ。そんな言い分めちゃくちゃすぎるでしょ。不妊だなんだって、ただの思い込みとかなんじゃないの? タイミングとかもあるだろうし、そんなの信じて生贄だなんて今どき何言ってんの」
「いいからつべこべ言わないで! 村を出て勝手したのはあんたなんだから、言うことを聞きなさい!」

 ガタガタガタ、ドタドタドタドタ!!

「なっ、何!? やだっ! ちょ……っ!? やめてよ! 何するの!? いやーっ!」

 母が怒鳴るやいなや、その怒鳴り声を皮切りに葵生がいる部屋のドアが開けられそのまま雪崩れ込むように村人達が入ってくる。
 そして葵生は激しく抵抗するも、そのまま村人達に引きずられるようにお社まで連行されてしまうのだった。


 ◇


「あんたを生贄にするために戻ってこさせたんだから、役目を全うするまで出てこないでよっ」

 お社に着くと、押し込むように中に入れられてそのまま閉じ込められる。
 出ようとしても、外から鍵をかけられてしまったようで、出るに出られなかった。

「うそでしょ。信じられない……」

 思わずへたり込んで顔を押さえながら溜め息をつく葵生。

「こんなことなら帰ってくるんじゃなかった……」

 元から母はいわゆる毒親で。葵生の言うことは聞かずに常に村のしきたりや自分の意見を押しつける人だった。

 そんな生活が窮屈で、自立したい気持ちもあって葵生は逃げ出すように上京したのだが、一応育ててもらっていたということで、勝手に出てきてしまった手前うっすらと罪悪感はずっと持ち続けていた。

 だから今回会社倒産を機に「一度帰ってきてゆっくりしたら?」という母の甘言にちょっと仏心を出して帰省してしまったが運の尽き。
 やはり母は変わっておらず、むしろ悪化していたと気づいても後の祭りだった。

「どうしよ……」

 お社の中は仄暗い。
 ずっと畳が敷き詰められている広間は先が見えないほど続いていて、しんと寝り返っているさまはほんのちょっぴり怖さを感じた。

「そもそも、生贄って何をすればいいのよ」

 何の説明もなく、何も持たされないままお社の中に閉じ込められて、葵生は何をすればいいのかもわからず立ち尽くす。

「さすがにこのまま閉じ込められて死ぬとか嫌なんだけど。……どうにか出られないかなぁ」

 背に腹はかえられない。

 お社の中には食事もなければトイレもなく、生活できる要素が何もないため、このまま閉じ込められたままでは死ぬのは必至だった。
 そのため、どうにか脱出できないかと怖いながらも葵生はお社の中を探索してみることにした。


 ◇


 お社は思ったより広く、外で見たときよりも何もない空間が広がっていた。
 とにかく葵生はあてもなく奥へ奥へと彷徨うように歩いていると、何やら遠くのほうに祭壇のようなものがあるのが見えた。

「何これ」

 恐る恐る近づくと、そこに鎮座しているのは明らかにアレの形をした張り形。
 そういえば、このお社はおちんぽさまが祀られているんだと言われていたんだと、葵生は今更ながら思い出す。

「うわっ、本当だったんだぁ……にしてもデカくない?」

 自分の腕くらいのサイズのアレにドン引く葵生。
 あんなの絶対入らないわと思ったそのときだった。

「立派だろう?」
「うぎゃあ!」

 突然、背後から声をかけられて葵生は勢いよく飛び上がる。
 そのまま転がるように畳に伏して顔を上げると、そこには暗がりでもわかるほどの美丈夫が立っていた。

「可愛げのない声だな」
「こ、こんな暗がりでいきなり背後から声をかけられたら、誰だって驚くと思うけど!?」
「そういうものなのか? ヒトとは難儀なモノだな」

 ふむふむ、と勝手に納得した様子の男。
 葵生は男の言動に不可解さを覚えながらも、驚きすぎたせいか腰が抜けて動けない。

 それを見た男は、葵生の顔を覗き込むようにしゃがみ込んできた。

「おや、そなたは以前からずっと村を出たいと願っていた女子おなごではないか。どうしてここにいる?」
「え、何で知って……え? そんな……! まさか、貴方がおちんぽさま……?」

 葵生は幼少期からずっとこの歪な村のことが大嫌いだった。
 男に好かれるような仕草、立ち振る舞いを強要され、男に奉仕するための存在としてしか価値がないと言われ続けるのが嫌だった。

 そのため、お社の前を通るたびに「どうかこの村から出られますように」と口には一切出さずに内心神頼みをし続けていたのだが、それを誰にも話したことはない。

 つまり、それを知っているのはこのお社の神様だけのはずだ。

「あぁ、ヒトからはそのように呼ばれているみたいだな」
「うそっ、本当に……貴方がおちんぽさまなの?」

 名前からは想像できない整った容姿に目を見張る。

 背丈は高く、はだけた着物から覗く身体つきは筋肉質で逞しく、しっかりとしていて肌の色は褐色。顔は長くうねった黒髪にキリッと鋭い瞳で鼻筋は通っていて、唇は薄い。

 正直、見た目は葵生の好みど真ん中で、内心胸が高鳴った。

「嘘をついてどうする。それで? そなたはなぜここにいる?」
「えっと。それが……その、帰省するなり母から私が生贄だって言われて……」

 葵生がここに連れて来られた経緯を伝えると、おちんぽさまはふむふむと頷く。
 そして、心当たりがあるのか「なるほど。そういうことか」と納得した様子だった。

「我は今まで一度たりとも生贄を所望したことはないんだがな。ヒトは勝手に解釈して暴走するから困ったものだ」
「えっと、だったら私……ここに来た意味って」
「ないな」

 スッパリと言い切られて、葵生はがくりと肩を落とす。

 何のために閉じ込められたのか。
 何のためにここに来させられたのか。

 思い返すと頭が痛くなってくる。

「じゃあ、私……もうここから出て行ってもいいよね。おちんぽさま、出口ってどこにあるの?」
「出口はない。そもそも出たところでそなたは帰る場所などないだろう?」
「それは……そう、かもしれないけど……」

 痛いところを突かれて言い淀む。
 実際、今のこのこ実家に帰っても、状況が改善されない以上またここに戻されることは確実だった。

「それにせっかく生贄を捧げられたんだ、手を出さぬのももったいない。据え膳食わぬは何とやらとヒトの界隈では言うのだろう?」
「え”」

 そう言うと、おちんぽさまは葵生をゆっくりと優しい手つきで押し倒す。
 葵生が戸惑いながら抵抗しようとするも、なぜか金縛りにあったかのように身体が動かず、言うことを聞かなかった。

「な、にこれ……」
「大丈夫だ。悪いようにはせん」
「いやいやいやいや、全然大丈夫じゃな……ん……っ」

 抵抗しようにも抵抗など許されず。
 葵生は全く力が入らないまま、唇を重ねられたかと思えば口内を舌で蹂躙される。

 歯列をたっぷりと舐められて、舌を絡められて、吸われて。唾液が口から垂れるも、手は掴まれて拭うことすらできない。

「は……っん、ふ……っむぅ……んぁ……んちゅ」

 息ができない。
 でも、苦しいはずなのになぜか気持ちがよくて。頭がだんだんとぼんやりとしながらも、気持ち良さだけは背中を駆け上がっていく感覚。

 ぐちゅ……、ちゅぱちゅぼ、ぐちゃ……

 葵生は初めての快楽に惑わされ、流されていく。

「うむ。よい顔だ。案外我と葵生は相性がよいのかもしれぬな」
「ん……っあ……む」

 唾液をたっぷりと流し込まれて、息ができずに苦しくて飲み込む。

 すると、さらに感度が増して頭がおかしくなってくる。

「あ……や……あぁ……っふぅ……ん」
「愛いな」

 ぴちゃくちゅとたっぷりと唾液を含んだ水音を立てながら、おちんぽさまの肉厚な舌で自分の舌を絡め取られて強く吸われる。
 求められ、貪られるように唇が重ねられて、葵生の身体はだんだんと熱くなっていった。

 ダメ……なはずなのに、気持ちいい。おかしくなりそう……っ!

 何度も角度を変えられ、唾液を飲まされる。
 舌を絡める濃厚な口づけを息ができないほど延々とされて、葵生の思考はだんだんと鈍っていった。

 もっと触れて欲しい。もっと求められたい。

 つい先程まで拒絶していたはずなのに、いつのまにか受け入れるほうに傾いている思考。

 それすらも気づかないほど、葵生はおちんぽさまに翻弄されていた。

「……あぁ、そうだ。それでいい。もっと乱れて我を求めよ」

 いつのまにか着ていたはずの服は乱され、胸を露わにされた状態。指で両の乳首を摘まれ、こねられ、引っ張られ。
 散々弄られてどちらもぷっくりと主張してくると、そこにおちんぽさまがむしゃぶりついてくる。

 まるで飴玉かのように舌や唇で弄ばれる胸のいただき。どちらも交互に虐められる。
 優しく愛撫するように舐められたかと思えばたまに歯を立てられて、その刺激で子宮がキュンキュンと疼いた。

「あん……あっ、や……そこ……ばっか……っん、もっと他も……あ……して……ぇ」
「ほう。欲張りだな」

 おちんぽさまがにやりと意地悪そうな笑みを浮かべる。
 そして、ふっと吐息を漏らすように息を吐いたかと思えば、いつのまにか葵生の服は全部綺麗さっぱり消えてなくなっていた。

「やっ……何でっ!? あん……待っ! ……や……ぁ……! そこ汚いから、舐めちゃやだ……っ!!」

 秘部からぬるりとした感触がしたかと思えば、じゅるじゅると音を立てながらクリトリスを舐められる。
 ぺろぺろと強い刺激に思わず腰が浮く。
 快感を逃がそうと腰を引くも、強い力で引き寄せられてしまった。

「やだやだやだ! おかしくなっちゃうぅ……!」
「はは。そんなによいか。では、もっとよくしてやろう」
「あ、あぁあああああ……!」

 クリトリスに思いきり吸いつかれて、脳天を突き抜けるような快感が走る。
 今まで味わったことがない快楽。

 ビクビクと身体を震わせながら葵生が無意識におちんぽさまの後頭部を自分の秘部に押しつけると、おちんぽさまは満足したように笑った。

「人間とは面白いな。嫌と言いつつ身体は我を求めるか」
「はぁーーーー……あ……はぁ……」

 葵生が絶頂の余韻に浸っているのも束の間。
 散々クリトリスを虐めていた舌はそこから移動し、秘部の方へ。

 ぐずぐずになったそこはおちんぽさまの舌を受け入れ、意思とは裏腹にどんどんと中へと誘っていく。

「あ! やだ! そこっ、あ……やっ! あん、あっ! 気持ちいい……! どうしよう。気持ち良すぎて、頭おかしくなっちゃう……っ!」
「あぁ、もっとおかしくなってしまえ。葵生」
「~~~~!!」

 名前を呼ばれながら秘部やクリトリスを舌で蹂躙されて、再び快感が一気に背筋を駆け上がる。
 逃げ道のない快楽の暴力。
 身体はガクガクと震え、全身が性感帯にでもなったかのようにどこもかしこも気持ちよくておかしくなる。

 あまりにも快感が強すぎて頭がスパークすると、葵生はそのまま何も考えられなくてくったりと脱力した。

「あー……はぁー……」
「ふむ。イったか。さて、そろそろ頃合いだな」

 おちんぽさまはそう言うと、既にぐちゃぐちゃに濡れそぼった葵生の秘部に自らの陰茎を宛てがう。
 そして、ぐちぐちとわざと葵生の秘部に擦りつけると、その刺激で葵生のそこはもっと刺激が欲しいと、物欲しそうにひくひくと疼いた。

「挿れるぞ」
「待っ……あ、ダメ……やだやだ……まだ待っ……あぁあああん!」

 言葉とは裏腹に、ずぶずぶとおちんぽさまのそれを飲み込んでいく。
 そして、尻を鷲掴みにされたかと思えば、一気に最奥まで貫かれた。

「~~~~!!」
「挿れただけでイッたか。だが、まだ我は満足してないからな。まだ付き合ってもらうぞ」
「っ! あ、何!? あっ!」

 不意に身体が浮いたかと思えば、そのまま持ち上げられる。
 言わば、体位でいう駅弁状態。
 不安定な体位に思わず葵生が縋りつくようにおちんぽさまに抱きつくと、おちんぽさまは満足そうに笑いながら腰を動かした。

「やはり積極的なほうがよいな」
「やっ! 奥っ! 深ぁあああ! あんっ! あんっ! 気持ちい! あっ!」
「ここか?」

 ごりごりっと奥を穿たれる。
 子宮口に当たると、あまりの気持ちよさに葵生のそこはキュンキュンとおちんぽさまのそれを締めつけた。

「あっ! そこ! 気持ちいい! いく! いく! いっちゃう!」
「そうか。ここがいいのか」
「あっ、あっ、あっ、あっ!」

 リズミカルに腰を打ちつけられると、自重も相まって子宮口にダイレクトに当たる。
 強い快感が脳天まで駆け抜け、脚がガクガクと震え、腰砕けになる。

 あぁ、もっと……もっと欲しい……っ!

 強い快感に、葵生の内側から溢れ出す欲。
 どんどんとさらに強い刺激を求めて、葵生はおちんぽさまを求めるように彼の背に爪を立ててしがみついた。

「っ! ……すごい締めつけだな。我も、そろそろ……果てそうだ……っ」
「あっ、奥! そこっ! すごく気持ちいい! いくいくいくいく……っ! あ、おちんぽさま……っ、キスしたい……チューしながらイキたい……っん! んんぅ……っ」

 葵生がおちんぽさまにキスをねだると、そのまま深く口づけられる。

 息ができない。苦しい。
 なのに、心は満たされてゆく。

「ナカにたっぷり出すからな。受け止めろよ、葵生」
「あんっ! あっ、出して……いっぱい……っ! 全部、おちんぽさまの……欲しい……っ!!」
「っく!」

 びゅるびゅるびゅる……!

 二人が一緒に絶頂すると、夥しい量の液が葵生のナカに吐き出される。
 ねっとりと熱く、人間から出るものとは全く異なったソレ。
 葵生のナカを満たすソレは、孕ませようと次々に子宮のナカへと潜り込んだ。

「……苦しくないか? 無理をさせたな。水を飲むか?」

 絶頂し、力なくくったりと脱力する葵生をおちんぽさまが優しく布団へと降ろす。
 いつのまにか敷かれた布団は、とてもふかふかで温かかった。

「おちんぽさま……」
「ん? 何だ……?」
「もっと……したい。もっと、いっぱい……たっぷりと愛してほしい……」

 葵生が上目遣いでそう言えば、おちんぽさまの瞳が怪しく光る。
 そして、葵生に覆い被さると、望まれるがまま彼女を何度も何度も抱いた。


 ◇


「気を失ったか。さすがに無理をさせすぎた。年甲斐もなくやりすぎてしまったな」

 おちんぽさまが視線を落とせば、そこには意識を飛ばしてしまった葵生の姿が。
 散々愛されたせいでどこもかしこもどろどろで、紅い花片が散っている。

 そんな葵生を愛しげな眼差しで見つめながら払うように手を振ると、葵生の身体は綺麗に清められた。

「ふむ。これでいいだろう」

 満足そうに微笑むと、おちんぽさまは葵生の隣に寝転がる。そして、優しく彼女の薄い腹を撫でながら「早くややこの顔が見たい」と笑みを浮かべた。

「それにしても、ヒトとは愚かよな。村の者の願いでこのような事態になったというのに、勝手に悲観して我に贄を捧げようとするなど。まぁ、葵生が手に入ったから我としてはよいが」

 そう言いながら、未だ目覚めぬ葵生の頬を撫でると、おちんぽさまは優しく口づけをするのだった。




 ◇約一年前◇




「あぁ、もう! 腹が立つ!!」

 一人、女が大きな腹を抱えながらお社の近くを歩いていた。
 その表情は険しく、何かに憤っている様子だった。

「竜也のやつ、浮気したくせに何が『ちょっとした息抜きなんだから許せよ。村以外の女の子とも遊びたかっただけなんだ。子供産まれたらちゃんと面倒見るから怒るなよ』なの!? 許せるわけないでしょ! しかも、お母さんもお父さんも、『浮気くらい大したことないじゃないか。お前は妻なんだし、これから子供も産まれるんだからどーんと構えてればいい』とか言って、全然味方してくれないし! あーくそっ! ムカつくー!!」

 女はそう言って頭を掻きむしりながら顔を上げると、近くにお社があることに気づいた。

「あー、何だっけ。これ。……確か、おちんぽさまだっけ。この村に代々伝わってる子孫繁栄の神様らしいけど、お母さんもお父さんも村のみんなもすごい盲信してるわよね。みんな、おちんぽさまにあやかって子供産め産め煩いし。……本当にご利益なんかあるのかしら」

 女はそう言うと、お社の前まで行く。
 そして、鈴を鳴らして適当にパンパンと手を叩いた。

「こんな村なんかクソ喰らえ。こんなしょうもない村なんか子孫繁栄なんてしないで滅びて、みーんないなくなっちゃえばいいのに! よし、スッキリした!」

 わざと当てつけるようにおちんぽさまにそう言うと、女は満足したのかその場を去る。
 そして、女がいなくなった直後、お社からは鈍い光が発せられた。

 __その願い。叶えてやろう。






 終
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