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第四十四話 武者震い
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「あんたなんか、今すぐここで死ね!」
ひらりと花琳は身を躱すと、雪梅が持っていた刃物を叩き落とし、彼女の腕を捻り上げて拘束した。
「どういうつもりだ?」
「何で……何で避けられるのよ!?」
「我を舐めてもらっては困る。これくらい避けるなど造作もない。それで、どういうつもりかと聞いている」
ギリリ、と拘束する手を強めると雪梅が「痛い痛い」と騒ぎ出す。
「昔から気に食わなかったのよ! 全部全部全部、ワタシの思い通りにしないあんたが憎かった! それでワタシは仲考と手を組んだの。あんたを引きずり下ろして国をワタシたちのものにしようと! でも、仲考がワタシを裏切った。だから、ワタシは全部なくすことにしたの! じきにここにも火が回るわ。ワタシの思い通りにならないこんな国も城も王も全部全部全部滅びればいいわ!!」
「何だと?」
「陛下! 火が!!」
良蘭に言われて周りを見れば、いつの間にか至るところから火の手が上がっていた。
どうやら雪梅の女官たちが次々と城内に火をつけて回っているらしい。
「良蘭、行くぞ! 早く峰葵に知らせねば」
雪梅が持っていた刃物を回収すると、そのまま彼女を連れて先を急ぐ。
だが、すぐさま屈強そうな男たちが四人、ぐるりと花琳と良蘭の周りを囲んだ。
「それは困る」
「陛下にはここで死んでもらわなくてはいけないので」
「ここは通さない」
「邪魔だ! 貴様らに構っている暇などない!」
「であれば、我々を倒してからにするんだな!」
(っく、こんなときに……っ!)
事前に仕込まれていたのだろう。
まさかここまで入念に自分を殺しにくるとは思わなかった花琳は、あからさまな殺気に武者震いする。
花琳は雪梅を拘束したままでは戦えないため彼女を離すと、雪梅は腰を抜かしながらもすぐさま視界から消えて行った。
「良蘭。いける?」
「もちろんです。私を誰だとお思いで?」
良蘭はそう言うと、懐から三節棍を取り出す。
そしてすぐさま構えた。
「頼もしいわね。さすが私の女官だわ」
感心しながら花琳は懐から刀を取り出す。
これは彼女の手に馴染んだ愛用の刀だ。
「本当は長物がいいけど、今はそんな贅沢言ってられないわね」
「貸しませんよ? あるもので我慢してください。だから常に携帯すればいいのにと申していたのに」
「棍やら槍やら持ち歩く王なんていたらヤバいヤツでしょうが。無茶言わないで」
距離感を測りながら刀を構える。
あまり悠長にはしていられない。
こうしている間にも火の手はどんどんと上がっていた。
「行くわよ!」
花琳が斬りかかる。
と、見せかけてしゃがみ込む。
男は来ると思っていた攻撃に気を取られて、良蘭の三節棍の打撃を避けることができなかった。
続いてしゃがんだ花琳も屈みながら足元を斬りつける。
「っく、あ……っ!」
「おい、なに女になんかやられてる!」
「くそっ、女だと思って甘く見てると痛い目を見るぞ!」
男が逆上し、斬りかかってくる。
花琳は避けて相手の懐に入ると、そのまままっすぐ刀を突き刺したあと体当たりした。
「っぐ、あ、あ、あぁぁああ」
深々と刺した刀を勢いよく抜くと痛みで呻く男。
刀には毒が塗布してあり、通常よりも痛みは酷いことになっているはずだ。
(まずは一人)
「小癪な……!」
「はぁああああああ!!」
男たちはギリギリと歯噛みする。
その間に良蘭が三節棍で殴りかかっていき、男二人を相手していた。
「私がこちらの二人を相手するので、もう一人をよろしくお願いします!」
「わかったわ!」
「くそっ、女なんかに舐められてたまるか!」
勢いよく床を蹴り、距離を詰めてくる男に向かって先程雪梅から回収した刃物を投げつける。
男が避けた瞬間、花琳は死角に入ると背後に回り込んで背中に深々と刃を刺した。
「ぐっ……ぅううう……!」
すかさず、ふらつき倒れ込んだ男の首に刃を走らせる。
(これで二人目)
「良蘭! どう!?」
「絶賛戦闘中です!」
「こっちは片付いたから加勢する!」
三節棍は複数相手にするにはちょうどいいが、女の力で敵を倒せるかと聞かれたらせいぜい痛みを与えるくらいでほぼ攻撃を防ぐのみだ。
そのため、良蘭は防戦一方であった。
「一気に畳みかけるわよ」
「はい!」
「させるか!」
連携を取りながら攻撃していく。
良蘭が相手の刀剣を弾いて相手が怯んだところで花琳が攻める。
「はぁあああああ!!」
「っく! あぁ、くそ! っつ! 邪魔な小娘だ!」
頭や腕を三節棍で当てられ続け、憤る男。
決定打にならないとはいえ、苦痛であることには違いなかった。
「ここで仕留める!」
「させる、か……!」
「っぐぅ……がはっ」
花琳が男に向かって駆けたところでもう一人が良蘭の腹を思い切り蹴る。
良蘭はその勢いのままに吹っ飛び、壁に身体を激しくぶつけた。
「良蘭!! ……このぉ!」
良蘭が手離した三節棍を拾い上げて振り回す。
花琳は飛び上がると、自分が回って遠心力をかけながら男の一人の側頭部に強烈な打撃をお見舞いした。
「っぐ……!」
ふらついた瞬間を見逃さずに、そのまま仰向けに倒れ込む男の胸元目掛けて勢いよく刀で一突きする。
(三人目……!)
「花琳さま!!」
一突きにした男に跨がった状態でいると、ふと頭上から影が落ちる。
花琳が顔を上げると、ちょうど男が彼女に向かって刀を振り下ろしているところだった。
「死ねぇ!!」
刃先が花琳に向かって吸い込まれるように伸びていく。
(あ、間に合わない)
花琳は動けず、ただ眺めるしかできなかった。
ひらりと花琳は身を躱すと、雪梅が持っていた刃物を叩き落とし、彼女の腕を捻り上げて拘束した。
「どういうつもりだ?」
「何で……何で避けられるのよ!?」
「我を舐めてもらっては困る。これくらい避けるなど造作もない。それで、どういうつもりかと聞いている」
ギリリ、と拘束する手を強めると雪梅が「痛い痛い」と騒ぎ出す。
「昔から気に食わなかったのよ! 全部全部全部、ワタシの思い通りにしないあんたが憎かった! それでワタシは仲考と手を組んだの。あんたを引きずり下ろして国をワタシたちのものにしようと! でも、仲考がワタシを裏切った。だから、ワタシは全部なくすことにしたの! じきにここにも火が回るわ。ワタシの思い通りにならないこんな国も城も王も全部全部全部滅びればいいわ!!」
「何だと?」
「陛下! 火が!!」
良蘭に言われて周りを見れば、いつの間にか至るところから火の手が上がっていた。
どうやら雪梅の女官たちが次々と城内に火をつけて回っているらしい。
「良蘭、行くぞ! 早く峰葵に知らせねば」
雪梅が持っていた刃物を回収すると、そのまま彼女を連れて先を急ぐ。
だが、すぐさま屈強そうな男たちが四人、ぐるりと花琳と良蘭の周りを囲んだ。
「それは困る」
「陛下にはここで死んでもらわなくてはいけないので」
「ここは通さない」
「邪魔だ! 貴様らに構っている暇などない!」
「であれば、我々を倒してからにするんだな!」
(っく、こんなときに……っ!)
事前に仕込まれていたのだろう。
まさかここまで入念に自分を殺しにくるとは思わなかった花琳は、あからさまな殺気に武者震いする。
花琳は雪梅を拘束したままでは戦えないため彼女を離すと、雪梅は腰を抜かしながらもすぐさま視界から消えて行った。
「良蘭。いける?」
「もちろんです。私を誰だとお思いで?」
良蘭はそう言うと、懐から三節棍を取り出す。
そしてすぐさま構えた。
「頼もしいわね。さすが私の女官だわ」
感心しながら花琳は懐から刀を取り出す。
これは彼女の手に馴染んだ愛用の刀だ。
「本当は長物がいいけど、今はそんな贅沢言ってられないわね」
「貸しませんよ? あるもので我慢してください。だから常に携帯すればいいのにと申していたのに」
「棍やら槍やら持ち歩く王なんていたらヤバいヤツでしょうが。無茶言わないで」
距離感を測りながら刀を構える。
あまり悠長にはしていられない。
こうしている間にも火の手はどんどんと上がっていた。
「行くわよ!」
花琳が斬りかかる。
と、見せかけてしゃがみ込む。
男は来ると思っていた攻撃に気を取られて、良蘭の三節棍の打撃を避けることができなかった。
続いてしゃがんだ花琳も屈みながら足元を斬りつける。
「っく、あ……っ!」
「おい、なに女になんかやられてる!」
「くそっ、女だと思って甘く見てると痛い目を見るぞ!」
男が逆上し、斬りかかってくる。
花琳は避けて相手の懐に入ると、そのまままっすぐ刀を突き刺したあと体当たりした。
「っぐ、あ、あ、あぁぁああ」
深々と刺した刀を勢いよく抜くと痛みで呻く男。
刀には毒が塗布してあり、通常よりも痛みは酷いことになっているはずだ。
(まずは一人)
「小癪な……!」
「はぁああああああ!!」
男たちはギリギリと歯噛みする。
その間に良蘭が三節棍で殴りかかっていき、男二人を相手していた。
「私がこちらの二人を相手するので、もう一人をよろしくお願いします!」
「わかったわ!」
「くそっ、女なんかに舐められてたまるか!」
勢いよく床を蹴り、距離を詰めてくる男に向かって先程雪梅から回収した刃物を投げつける。
男が避けた瞬間、花琳は死角に入ると背後に回り込んで背中に深々と刃を刺した。
「ぐっ……ぅううう……!」
すかさず、ふらつき倒れ込んだ男の首に刃を走らせる。
(これで二人目)
「良蘭! どう!?」
「絶賛戦闘中です!」
「こっちは片付いたから加勢する!」
三節棍は複数相手にするにはちょうどいいが、女の力で敵を倒せるかと聞かれたらせいぜい痛みを与えるくらいでほぼ攻撃を防ぐのみだ。
そのため、良蘭は防戦一方であった。
「一気に畳みかけるわよ」
「はい!」
「させるか!」
連携を取りながら攻撃していく。
良蘭が相手の刀剣を弾いて相手が怯んだところで花琳が攻める。
「はぁあああああ!!」
「っく! あぁ、くそ! っつ! 邪魔な小娘だ!」
頭や腕を三節棍で当てられ続け、憤る男。
決定打にならないとはいえ、苦痛であることには違いなかった。
「ここで仕留める!」
「させる、か……!」
「っぐぅ……がはっ」
花琳が男に向かって駆けたところでもう一人が良蘭の腹を思い切り蹴る。
良蘭はその勢いのままに吹っ飛び、壁に身体を激しくぶつけた。
「良蘭!! ……このぉ!」
良蘭が手離した三節棍を拾い上げて振り回す。
花琳は飛び上がると、自分が回って遠心力をかけながら男の一人の側頭部に強烈な打撃をお見舞いした。
「っぐ……!」
ふらついた瞬間を見逃さずに、そのまま仰向けに倒れ込む男の胸元目掛けて勢いよく刀で一突きする。
(三人目……!)
「花琳さま!!」
一突きにした男に跨がった状態でいると、ふと頭上から影が落ちる。
花琳が顔を上げると、ちょうど男が彼女に向かって刀を振り下ろしているところだった。
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刃先が花琳に向かって吸い込まれるように伸びていく。
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