ダメンズメーカー聖女 〜結婚したくて尽くしまくってたら最強の聖女になっちゃいました〜

鳥柄ささみ

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第二十一話 律儀な王子

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「ありえないだろ! 討伐なんか!」
「え? だって魔法壁作って怯えて暮らすより、元を絶ったほうがいいでしょ」
「それはそうかもしれないが! そうじゃないだろ!!」

 食事などを済ませたあと、とりあえず今日はここで泊まるようにと村長の家の与えられた一室でヴィルが声を張り上げる。相変わらずヴィルは煩いなと思いつつも、宥めるために「まぁまぁ、落ち着いて」と席に座るように促した。

「落ち着けるか! 凶悪な魔物なんだろ!? 危険じゃないか!」
「だからこそ、でしょう? 倒したら村は当分安泰だろうし、こまめに魔法壁張り替えるよりかはよっぽどいいわよ」
「それでも、人を喰う魔物なんてろくなもんじゃないだろ! いくらシオンが強いからって、無茶すぎる!!」
「そこは、ほら、ヴィルにも頑張ってもらって」
「勝手に戦力にされてもオレはまだ駆け出しなんだぞ!」
「それは自信満々に言うことなの……?」

 確かにヴィルが言っていることは最もなことだけど、そうは言っても戦えるメンバーは私とヴィルだけ。
 さすがに村人達を連れて行くわけにもいかないし、応援はないと見て間違いないだろう。
 というか、応援を呼ぶのさえここの村は一苦労だ。その労力を考えると私達でどうにかするのが最善である。

「大丈夫、大丈夫。ヴィルにはめちゃくちゃバフかけてあげるから。敵にはたっぷりデバフもかけるし。こういうのは場数踏んでなんぼだから頑張ろ!」
「聖女が言うセリフじゃないだろ、それ」

 実際、討伐するほうがいいと提案したら「え、聖女様が討伐されるのですか!?」「さすがにいくら聖女様と言えど、それは無茶です!」とジュンと村長に止められたが、「大丈夫です! 私、聖女ですから!」という謎の自信に満ちた答えで彼らを黙らせた。
 きっと彼らは魔物避けの魔法壁さえどうにかできればいいと考えていたのだろうが、やはり危機が迫っているというならその危機ごと取り除くのがベストだろう。

 本音は、ここに何度も来るのはめんどくさいから手っ取り早く問題解決したいだけだけだが。

「とにかく、死なせないように気をつけるから安心して。それとも、そんなに行きたくないならここで待ってる? 私一人でも多分どうにかなると思うし」
「何だよ、それ。……わかったよ、行くよ! 行けばいいんだろ」
「別に無理して来なくてもいいわよ。お留守番さえしっかりしてくれれば」
「いや、行く。ここまで来てシオンに何かあったら困るだろ。それに、一応今回の件は父さんが依頼して来てるわけだし」
「ヴィルって変なとこ律儀ね」

 最初こそ王子を気取っていたけれど、ヴィルは王子のわりにワガママも少ないし、物分かりがいい気がする。かなり私の偏見の入った意見だけど、ヴィルは王子の中でもいい王子だと思う。

「シオンも国民であることに間違いはないし、国民を守るのは次期王である俺の義務でもあるからな」
「わー、カッコいいー」
「バカにしてるだろ」
「してないしてない」

 むすっと膨れっ面になるヴィル。
 感情が顔に出やすいのは次期国王としてどうなのかと思いつつも、一緒に旅をする身としてはわかりやすくてありがたい。

「そういえば、何でヴィルは村長に自分は王子だってことアピールしなかったの? 言ったら扱い違っただろうに」

 田舎の村なせいか国王や王子の顔を村長達は知らないらしく、それに便乗してなぜかヴィルは自分が王子だということを隠し、私を守る護衛ということにしていた。

「無駄に仰々しいのも面倒だからな。あと、王子だからと余計な下心を出されても困る。縁談がどうとか、誰々を重用してくれだとか、キリがない」
「あぁ、なるほど。王子は王子で大変なのね」

 立場によって悩みはそれぞれ違うのだなと納得する。

 確かに身分を明かせばそれ相応の待遇はあれど、それに付随して面倒なこともあるだろう。
 実際、私も過去にどうかこのまま逗留してこの街の守護神として魔物の脅威から守ってくれと頼まれたことがあったことを思い出す。
 断っても断っても縋りつかれて、最終的には夜逃げのように白夜光のみんなで逃げたのは未だに苦い思い出だ。
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