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第七十四話 チート
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やけにヴィルが弱気だ。
やる気になってくれたのはいいことだけど、その分自分の力量が気になるらしい。
まぁ、そういう時期って誰しもあるよね。
誰だって自分のせいで戦況が悪くなるのって嫌だし。
とはいえ、このメンタルで行ったら勝てるもんも勝てないし、どうしたものか。
下手なことを言って気負わせてもダメだし、かと言って期待してないみたいなのもメンタルやられるし。
元ギルマスとしてメンバーを鼓舞するためにはどうするかと頭を悩ませる。ここは元ギルマスとしての腕の見せ所であった。
「ヴィルはさ、何が得意?」
「何だ、突然」
「いや、ヴィルの武器を知っておこうと思って」
「オレの武器?」
「ほら、ここだけは自信ある的なもの」
私が聞くと、ヴィルが顎に手をやりながら考える。パッと出ないということは、きっとそれくらい真剣に考えているということだろう。
「そうだなぁ。シオンの前で言うのもあれだが、火の魔法だろうか」
「なるほど、火の魔法ね。うんうん、いいと思う。じゃあ、それを伸ばそうか」
「うん?」
「全部の魔法を使えなくてもいいから、火の魔法だけしっかり強化していこうってこと。誰にも負けないって自負できるものがあると、心の支えになるから。ほら、いざというときに何かあったほうがいいでしょ?」
「そういうもんなのか?」
「そうそう、そういうもの。ちなみに、私は誰にも負けない魔力量が武器ね。だからやられてもやられても死ななきゃ永遠に回復して挑めるのが強み」
「それチートだよな」
ヴィルが呆れたように笑う。どうやらいつものヴィルに戻ってきたらしい。
「チート上等よ。使えるもんは使わないと損でしょ。そういう意味ではヴィルもチート持ってるじゃない」
「オレが?」
「そうそう。ほら、顔と地位。魔物には通用しないかもしれないけど、人間相手ならイチコロでしょ」
私が言うと途端に嫌そうな顔をするヴィル。……何か変なことを言っただろうか。
「顔も地位も使えるなら意味があるけどな。使っても通用しないヤツもいるから意味ない」
「え、そんな人いるの? ヴィルの顔と地位を使っても意味がない相手がいるなんて……」
ヴィルの存在が通用しない相手がいることに驚く。
ヴィルみたいにイケメンで地位もあったら最強だろうに。王子なんて確実に次期王様になるわけだし、しかもこんなにイケメンだったら子供も絶対美人かイケメンだろうし。お金もあるし、私ほどではないにしてもレベルもそこそこ上がってきて戦闘もできるようになってきたのに、そんなヴィルが通用しない人なんているのだろうか。
「あぁ。オレのことはタイプではないらしいし、オレのチートなんてそいつの前ではかたなしだ」
「へぇ。奇特な人もいるもんだ」
一体どんな人なんだろうか。気になる。
「ねぇねぇ、それって身近な人?」
「あぁ、そうだな」
「もしかして、気になってる人とか?」
「そうとも言えるかもな」
「ふぅん。ヴィルにもそんな人がいるのね」
そういえば以前、恋愛相談をしたときに身近にそういう話をする人がいたと言っていたのを思い出す。
なるほど、その人か。
恋愛もたくさん経験してると言っていたし、ヴィルの身近にいた人ならそういう部分が通用しないのも納得できた。
ズキン
急に胸が痛くなる。
咄嗟にパチンと指を鳴らして回復すると痛みはなくなったが、何だかモヤモヤしたままだった。
やる気になってくれたのはいいことだけど、その分自分の力量が気になるらしい。
まぁ、そういう時期って誰しもあるよね。
誰だって自分のせいで戦況が悪くなるのって嫌だし。
とはいえ、このメンタルで行ったら勝てるもんも勝てないし、どうしたものか。
下手なことを言って気負わせてもダメだし、かと言って期待してないみたいなのもメンタルやられるし。
元ギルマスとしてメンバーを鼓舞するためにはどうするかと頭を悩ませる。ここは元ギルマスとしての腕の見せ所であった。
「ヴィルはさ、何が得意?」
「何だ、突然」
「いや、ヴィルの武器を知っておこうと思って」
「オレの武器?」
「ほら、ここだけは自信ある的なもの」
私が聞くと、ヴィルが顎に手をやりながら考える。パッと出ないということは、きっとそれくらい真剣に考えているということだろう。
「そうだなぁ。シオンの前で言うのもあれだが、火の魔法だろうか」
「なるほど、火の魔法ね。うんうん、いいと思う。じゃあ、それを伸ばそうか」
「うん?」
「全部の魔法を使えなくてもいいから、火の魔法だけしっかり強化していこうってこと。誰にも負けないって自負できるものがあると、心の支えになるから。ほら、いざというときに何かあったほうがいいでしょ?」
「そういうもんなのか?」
「そうそう、そういうもの。ちなみに、私は誰にも負けない魔力量が武器ね。だからやられてもやられても死ななきゃ永遠に回復して挑めるのが強み」
「それチートだよな」
ヴィルが呆れたように笑う。どうやらいつものヴィルに戻ってきたらしい。
「チート上等よ。使えるもんは使わないと損でしょ。そういう意味ではヴィルもチート持ってるじゃない」
「オレが?」
「そうそう。ほら、顔と地位。魔物には通用しないかもしれないけど、人間相手ならイチコロでしょ」
私が言うと途端に嫌そうな顔をするヴィル。……何か変なことを言っただろうか。
「顔も地位も使えるなら意味があるけどな。使っても通用しないヤツもいるから意味ない」
「え、そんな人いるの? ヴィルの顔と地位を使っても意味がない相手がいるなんて……」
ヴィルの存在が通用しない相手がいることに驚く。
ヴィルみたいにイケメンで地位もあったら最強だろうに。王子なんて確実に次期王様になるわけだし、しかもこんなにイケメンだったら子供も絶対美人かイケメンだろうし。お金もあるし、私ほどではないにしてもレベルもそこそこ上がってきて戦闘もできるようになってきたのに、そんなヴィルが通用しない人なんているのだろうか。
「あぁ。オレのことはタイプではないらしいし、オレのチートなんてそいつの前ではかたなしだ」
「へぇ。奇特な人もいるもんだ」
一体どんな人なんだろうか。気になる。
「ねぇねぇ、それって身近な人?」
「あぁ、そうだな」
「もしかして、気になってる人とか?」
「そうとも言えるかもな」
「ふぅん。ヴィルにもそんな人がいるのね」
そういえば以前、恋愛相談をしたときに身近にそういう話をする人がいたと言っていたのを思い出す。
なるほど、その人か。
恋愛もたくさん経験してると言っていたし、ヴィルの身近にいた人ならそういう部分が通用しないのも納得できた。
ズキン
急に胸が痛くなる。
咄嗟にパチンと指を鳴らして回復すると痛みはなくなったが、何だかモヤモヤしたままだった。
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