無双代行人アズマ

鳥柄ささみ

文字の大きさ
32 / 34
第二章 いじめ

いじめ⑬

しおりを挟む
「言いたいことはそれだけですか?」
「な、何よ。貴女は関係ないでしょう!?」
「関係ない、と言ったらさっきの話のほうが関係ないと思いますが、とりあえず私が目撃したお話をします」

 それから、アズマは先に個室に桜が入っていたこと、その個室の中に三人が上からバケツで水をかけようとしたこと、それが誤って手を滑らせて三人にかかってしまったことなどを説明した。

「さっきから、嘘ばっかり! この子を庇おうとそんな嘘をついたって無駄よ!」

 北原の母が大声で抗議する。
 声のデカさでこの場をどうにかしようとしているのが見え見えで、周りの教師達も言葉を挟むでもなく、ただ早くこの場が終わることを祈っているばかりで使い物にならなかった。

(本当、親に流される教師ってしょうもないな)

「さっきから嘘だ嘘だとおっしゃいますが、普通に考えて三人同時にバケツで水をかけるって難しくありませんか?」
「そ、それは……うちの子達が仲がいいからくっついてたからそれで……」
「では、三人もいたのに桜ちゃんがおもむろにバケツを用具入れから取り出して水を入れているのをそのまま何もせずに眺めていたと?」
「そ、その子が変わってるから、トイレ掃除を始めようとしたのかとうちの子は思ったんじゃない?」
「昼食後にトイレ掃除を? さすがにいくらなんでもこじつけが過ぎると思いますけど」

 北原の母が言うことに対し、全て正論で切り返すアズマ。
 言うこと全てに反論され、だんだんと北原の母の身体がわなわなと震え出した。

「な、なんなのよ、さっきからごちゃごちゃと!! 私はその子と話をしに来たのよ! 貴女に関係ないでしょ!!?」
「あぁ、それはすみません、あまりに言い分が酷すぎてつい」
「な、なんですってぇえええ!??」
「桜ちゃんに聞くまでもないですよ。信じてもらえるなら見せるのもアレかと思ってたんですけど、この際仕方ないですね」

 アズマはそこでスマホを取り出す。
 すかさず「何で中学生が学校にスマホなんか!」と噛みついてくるが、「許可はちゃんといただいてますので」とスルーした。

「これ、見てもらえます?」

 そこに映し出されているのは昨日のトイレでの映像だった。
 そこには北原が主導し、西沢が個室の扉を押さえ、南が水を汲んだバケツを個室の上に置いていたところが映し出されている。

「な、何よ、これ……」
「ちなみに、この個室の中に桜ちゃんがいます。ほら、どう見ても画面に桜ちゃん映ってませんよね?」
「……っぐ、……」
「これ、バケツ持ってるの南さんですよね? ほら、それを北原さんは楽しそうに見てる」

 その後は南の方にバケツが倒れ、三人は水を被って大騒ぎしているところが映っていた。
 しかもその後、バッチリと桜が個室からそろりそろりと出てきたところまでも映し出している。

「これ以上、文句がありますか?」
「こ、こんなのデタラメよ!! そもそもこんな動画があるなんておかしいでしょ! どうせあんたが勝手に映像作ったんじゃないの!?」
「残念ながら私もここに映ってますし、この動画、匿名の誰かがSNSで流しているみたいですよ?」
「「「はぁ!??」」」

 アズマの言葉に北原の母だけではなく、校長や教頭までもが大きな声を出した。

「あ、アズマさん、それは本当かね!?」
「はい。さっきからクラスのSNSで誰が流したのかとかで盛り上がってますよ」

 SNSの中身を見せると、「うっわ、これヤバくね?」「北原達おわた」「誰だよ、これ流したやつ!」「バズりそう~!」と生徒達の盛り上がってるコメントが次々流れてきており、それを見て真っ青になる教師陣達。
 校長と教頭は途端にそわそわとしだし、「これがマスコミに漏れたら」「教育委員会に漏れたら」「他の保護者に漏れたら」とぶつぶつと言い始める。

「と、とにかく、この動画が事実なら由々しき問題だ。東雲さんも被害者ということになるし、とりあえず北原さんも改めて今後のことを……」
「あ、あぁ、あぁああぁ……う、嘘よ……まさかそんな……っ、私これからどうすれば……」
「と、とにかく北原さん、今日は一旦お引き取りを! こちらでも事態を収拾せねばなりませんし、もっとちゃんと事実確認をしなければいけませんから。野地くん、北原さんのお母様をお送りして」
「は、はい……っ!!」

 力をなくした状態の北原の母の腕を担ぐように持ち上げる野地。
 そして校長からは「き、キミたちもとりあえずこれ以上遅くなったら大変だから、早く帰りなさい」と礼もなしに帰るように促される。

「わかりました、失礼します。行こう、桜ちゃん」

 呆気にとられる桜の手を引き、バタバタと騒がしくなった会議室を出る。
 もう日はだいぶ沈みかけ、赤い日が窓から差し込んでいた。

「あ、あの、ありがとうございます」
「いいのよ。桜ちゃんは大丈夫だった?」
「は、はい」
「ならよかった。あ、もしよかったら寄り道してく? アガツマが会いたがってたから」
「えっと、じゃあ、お言葉に甘えて……」

 アズマがにっこりと微笑むと、戸惑いながらも笑い返してくれる桜。
 とりあえず北原は片付いた、とアズマは内心ほくそ笑むのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...