有能なメイドは安らかに死にたい

鳥柄ささみ

文字の大きさ
338 / 443
5章【外交編・モットー国】

22 乙女の嗜み

しおりを挟む
「地図に書き込みもしたし、食糧の確保も済ませてる。移動手段も手に入れた。うーん、あと他は武器、よねぇ……」

出立の日程もいよいよ明後日と決まり、ここにいるのも残すは今日と明日のパーティーのみである。

明日にはヒューベルトとも合流できるそうで、とりあえず明日に旅路の説明等々するとして、あとはパーティーの準備と足りない物資の補給だ。

武器は一応師匠の家にあった短剣や弓や剣などをいくつかもらえると聞いているが、やはり私としては棍や槍を振るいたい。ないとは思うが、いざというときはやはり使い慣れたもので戦うのがベストである。

「それと、乙女の嗜みに代わるものはないかしら……」

さすがに短時間で薬品を作ることは難しいので、仕方なしにアルコール度数の高い蒸留酒をいくつか師匠に用意してもらった。もちろん飲むわけではなく、火炎瓶の作成や消毒液などに使用するためだ。

あまり量を持ち運べないのがネックだが、そこは仕方ない。一応、各都市によって様々な種類の酒類が販売されているというから最悪、使用後は調達、というのを繰り返せばよい。

スリングは適当な紐をもらい、火打金も用意してもらった。少人数で行動するため、できれば他に煙幕や撒菱まきびし的な撹乱かくらんさせる何かが欲しいが何かあるだろうか。

(持ち運べて、なるべくかさばらない方がいいわよね)

うーん、うーん、と悩んでいると、外からパリーンと何かが割れた音が聞こえて慌てて自室から飛び出す。

「〈どうしたの!?大丈夫!??〉」

見ると、キッチンでメリッサが落とした皿を見ながらおろおろとしていた。

「〈ごめんなさい、あたし……パーティーするためのお皿を用意しておこうと思って〉」

確かに、よく見てみると机に皿がいくつも並んでいた。サイズはまちまちであるから、きっと寄せ集めてきたのだろう。

「〈そうだったの、怪我はない?破片は危ないから気をつけて。手が切れても危ないし、踏んだら大変。私が後片付けするから、メリッサはもう夜も遅いし明日用意しましょう?〉」
「〈……ん、わかった。ありがとう、ステラ〉」
「〈どういたしまして。おやすみなさい〉」
「〈うん。おやすみ〉」

そう言うと、気がかりではあるような素振りを見せつつも、メリッサは彼女の自室に入っていく。

手伝いたいが、足手まといにでもなると思ったのだろうか。彼女は聡い子だから色々と考えつつも素直に指示に従ってくれたようだった。

カチャン、カチャン、と割れた皿を拾って袋に詰めていく。そして、もう破片はないかと机の周りを覗き込んでいるときだった。

「あ……っ!!」

夜も遅いというのに、思いきり大きな声を出してしまって慌てて口を閉じる。

「〈どうしたの?ステラ怪我したの?大丈夫?〉」
「〈ごめんなさい、ちょっと思いついたから声が出てしまって。何でもないの、大きな声出しちゃってごめんなさいね、今度こそおやすみ、メリッサ〉」

不思議な顔をしながらも、再び部屋に戻るメリッサ。

(いけない、いけない。つい声が出ちゃったわ)

そして、破片を全て片付けたあと、自らも自室へと戻る。

「そうよ、この手があったじゃない」

壊れた破片で思いついたが、使ったあとの瓶などを放り投げたら撒菱代わりになるのではないか、と。

そうすれば、荷物も必要以上にかさばらないし、ちょうどいいだろう。我ながらいいアイデアである。

火炎瓶だけでなく、先にある程度中身を撒いてから燃やしたら延焼効果があっていいかも、と危ないことを考えながら己の策に口元を緩める。

「あとは武器だけ。いざとなったらその辺にある棒や物干し竿でもいいかしらね」

とりあえず、粗方揃ったことはいいことだ。あとは明日のパーティーが終わればいよいよ出立である。

「ケリー様、待っててくださいね」

彼の無事と早く再会できるように祈りながら、明日に備えて布団に潜り込み、目を閉じるのだった。
しおりを挟む
感想 62

あなたにおすすめの小説

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

【完結】婚約者なんて眼中にありません

らんか
恋愛
 あー、気が抜ける。  婚約者とのお茶会なのにときめかない……  私は若いお子様には興味ないんだってば。  やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?    大人の哀愁が滲み出ているわぁ。  それに強くて守ってもらえそう。  男はやっぱり包容力よね!  私も守ってもらいたいわぁ!    これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語…… 短めのお話です。 サクッと、読み終えてしまえます。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

「結婚しよう」

まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。 一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。

第一王女アンナは恋人に捨てられて

岡暁舟
恋愛
第一王女アンナは自分を救ってくれたロビンソンに恋をしたが、ロビンソンの幼馴染であるメリーにロビンソンを奪われてしまった。アンナのその後を描いてみます。「愛しているのは王女でなくて幼馴染」のサイドストーリーです。

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

処理中です...