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第十一話 ……聞かない
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深夜。
オフェリアはそわそわしながら、落ち着きなく部屋の中をうろうろしていた。
「あー、遅い! いつになったら帰ってくるのよっ」
勝手に夕食前には帰ってくるのだろうと思っていたが、リアムは未だに帰ってこない。
オフェリアは始めこそあまり気にしないようにしていたが、宿題を済ませても、シャワーを浴びても、寝る準備まで終わらせても一向に帰ってくる気配がないリアムにヤキモキしていた。
ジャスパーもリアムが帰ってくるまでは一緒にここにいると先程まで粘っていたものの、就寝前の点呼もあるし、さすがにこのままここにいるのはマズいだろうと説得して、自寮へと帰ってもらった。
だが、一人になったらなったで悪いことばかりが頭に浮かび、余計にそわそわしてしまうオフェリア。
なるべく気にしないでいっそ先に寝ようと一度は布団に潜ったが、結局寝られずに今に至る。
「この時間まで帰ってこないなんて、何かあったんじゃ……」
心配で胸がざわつく。
「あぁ、何もできないのがもどかしい! リアムにどこ行くのか、何しに行くのか、何時に帰ってくるのか聞いておけばよかった……!」
もはやそれは母親仕草であることは自覚してたが、こうして心配することを考えると、その質問事項は必須だったのではと葛藤する。
「いやいや、でも私はあくまでリアムの友人なわけで。そこまで束縛するのは……」
友達以上恋人未満。
だからこそ、大きな一歩を踏み出せない。
もっと関係が進んでいたらそれなりにリアムの生活に踏み込めるのかもしれないが、将来を約束されたとはいえ、それはなんとなく怖かった。
「私ってば自分勝手すぎるな」
そう思うも、不安な気持ちは消えないわけで。好きになれるかわからないと思いつつも、やはりどうしてもリアムのことが気になってしまう。
(でも、これが恋愛感情かと聞かれたらわからないんだよね)
悶々とあれこれ自分に言い訳しつつ、そわそわしていると不意に開くドア。ハッと顔をそちらに向けると、そこにはぼろぼろになったリアムがいて、オフェリアは大きく目を見開いた。
「……あぁ、オフェリア。起きてたんだ。寝ててよかったのに」
ぼろぼろの見た目に反してけろっと軽い口調でヘラヘラと笑うリアム。それとは対照的にオフェリアは今にも泣きそうなくらいに顔をぐしゃっと潰して、リアムに思いきり抱きついた。
「バカっ! おかえり。心配したんだからっ! 寝れるわけないでしょ!」
もっと言い方はあったはずなのに、思いのままの感情をぶつけるオフェリア。そんな彼女に文句を言うでもなく「ごめん。ただいま」と抱きしめ返すリアムの力は、心なしか弱かった。
「ちょっと色々と用事に手間取っちゃってね。僕もこんなに時間かけるつもりはなかったんだけど。心配かけてごめんね」
「本当だよ。それにすごくぼろぼろだし! ほら、こっちに来て。今すぐ治癒魔法をかけるから」
「うん」
リアムはぼろぼろだというのにニコニコと何だか嬉しそうだった。
オフェリアはわけがわからないと思いつつも、目についた頬の腫れや腕の切り傷や脚の打撲などを治していく。
「普段のリアムならこれくらい簡単に治せるんじゃないの?」
「さすが、オフェリアは察しがいいね。絶賛僕は魔力がすっからかんだ。だから、オフェリアの甲斐甲斐しいお世話を所望する」
「キリッとした顔で言わないの。……寝ててよかったとかいうくせに、私に世話させる気満々じゃない」
「オフェリアなら起きてると思ってたし、もし寝てても起きてくれるだろうとは思ってたよ」
「もうっ。……確かに、そうしてた気はするけど」
本当にリアムは私のことをよくわかっているなぁ、とつくづく思うオフェリア。ここまで把握されてるとなると、やはり恋人だったというのは嘘ではないのだろう。
「ご飯は?」
「食べたい。だから申し訳ないけど、ジャスパーを呼んできてもらってもいい?」
「ジャスパーならもう自分の寮に戻ってもらって寝てるよ。だからこれ」
「え? これって、もしかして……」
オフェリアが出したのはサンドイッチ。
リアムがいつ帰ってきてもすぐに食べられるよう事前に用意していたのだ。
「リアムのこと待ってたけど、夕食の時間に間に合わないだろうからって用意しておいたの。……あ、ちゃんとこの部屋のキッチン使ったし、食材はジャスパーと一緒にセントラルキッチンから分けてもらったんだよ。本当は温かいものを用意したかったんだけど、時間によっては軽食のほうがいいかなって。ねぇ、リアム聞いてる?」
リアムの反応がなくてつい色々と喋ったあと不安になってリアムの顔を覗きこむと、ガバッと強い力でリアムに抱きしめられた。
「あー、オフェリア。本当大好き! 僕のためにわざわざ手料理作ってくれるなんて。てか、オフェリアって料理できたんだね」
「なっ! 失礼な。サンドイッチは手料理っていうほどの料理ではないけど、自活してたこともあるし、ちゃんと料理くらいは作れるよ!」
「オフェリアの手料理……か。あぁ、どうしよう。嬉しすぎて食べずに大事に取っておこうかな」
「何言ってるの、食べるために作ったんだからちゃんと食べて! それに、手料理くらいいつだって作るから」
とんでもないことを言い出すリアムを諌めながらサンドイッチを差し出す。
すると、リアムは目を瞑り、大きく「あーん」と口を開けた。
「何してるの」
「え? オフェリアが食べさせてくれるんじゃないの?」
「何でそうなるのよ」
「だって、オフェリアの手ずから食べさせてもらったほうが美味しいだろうし」
「どんな理屈なの」
呆れながらも、リアムの口にサンドイッチを入れるオフェリア。なんだかんだ言いつつも、やっぱりお願いごとには弱かった。
「うん。美味しい」
「ならよかった」
「オフェリアが食べさせてくれたからより美味しくなった気がする。次は口移しで……」
「リアム~?」
「ごめん。調子に乗った」
その後、サンドイッチを完食させたあとやっとリアムの腕から解放されるも、なぜかリアムに腕を引かれてそのままベッドへと連れて行かれる。
「ちょっとでいいから、オフェリアを抱きしめたまま一緒に寝ちゃダメ?」
「えぇ……?」
「ちょっとだけ。ほんのちょっとだけでいいから」
いつもよりも切実そうな願いに、普段ならすぐさま断っているオフェリアもちょっとだけ悩んだ。
(うーん。リアムはまだボロボロだし、ちょっとだけならいいかな)
リアムは先程から気丈にはしているものの、魔力が空っぽということはだいぶしんどいはず。一般的な魔法使いであれば、今すぐ失神してもおかしくないほどの負荷がかかっているのにこのように飄々としているのは、将来悪の帝王になるだけあってさすがの忍耐力である。
「ちょっとだけだよ」
「うん。ありがとう、オフェリア」
そう言って抱き合いながらベッドに転がる。
オフェリアは寝間着なせいか、リアムの細身ながらも筋肉質な身体や体温を間近で感じて、いつもよりドキドキとした。
「ねぇ、オフェリア」
「何?」
「……僕が今日何してたか聞かないの?」
真剣な声音にドキッとする。
顔を上げると、唇が触れそうなほど近い距離にリアムの顔があって、さらに鼓動が跳ねた。
「聞かない。聞きたい気持ちはあるけど、どうせリアムは自分から言わないだろうし。言いたくないんでしょう? だから聞かない」
聞きたい気持ちはあるけど、そこは踏み入れていけない気がしていた。だからこそ、オフェリアはあえて聞かないことにしたのだ。
すると、リアムはふっと優しく口元を緩め、笑った。
「オフェリアらしいね」
「でも、リアムが言いたくなったら聞くよ」
「うん。そうだね。そうしてくれると嬉しいかな」
ギュッとさらに強く抱きしめられる。
「ねぇ、キスしちゃダメ?」
いつになく甘い囁き。
きっと女の子なら誰もが頷いてしまうような、うっとりと脳に響く声だった。
「…………ダメ」
けれど、オフェリアはその甘い誘いに抗う。
まだ恋人でも何でもないのに、不誠実な気がして、オフェリアはグッと堪えた。
「そっか。さて、僕はシャワー浴びてくるよ。オフェリアは今度こそ寝ててね」
「うん、わかった」
リアムはオフェリアを離すと、そのままベッドを降りて行ってしまう。
(断ったくせに寂しいだなんて、私はやっぱり自分勝手だな)
ベッドがなんだか広いなと思いながら、オフェリアは眠るためにギュッと目を閉じる。
人肌恋しいとはこういうことなのかと頭の片隅で考えながら、オフェリアはベッドの中で自分の身体をかき抱くのだった。
オフェリアはそわそわしながら、落ち着きなく部屋の中をうろうろしていた。
「あー、遅い! いつになったら帰ってくるのよっ」
勝手に夕食前には帰ってくるのだろうと思っていたが、リアムは未だに帰ってこない。
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「いやいや、でも私はあくまでリアムの友人なわけで。そこまで束縛するのは……」
友達以上恋人未満。
だからこそ、大きな一歩を踏み出せない。
もっと関係が進んでいたらそれなりにリアムの生活に踏み込めるのかもしれないが、将来を約束されたとはいえ、それはなんとなく怖かった。
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そう思うも、不安な気持ちは消えないわけで。好きになれるかわからないと思いつつも、やはりどうしてもリアムのことが気になってしまう。
(でも、これが恋愛感情かと聞かれたらわからないんだよね)
悶々とあれこれ自分に言い訳しつつ、そわそわしていると不意に開くドア。ハッと顔をそちらに向けると、そこにはぼろぼろになったリアムがいて、オフェリアは大きく目を見開いた。
「……あぁ、オフェリア。起きてたんだ。寝ててよかったのに」
ぼろぼろの見た目に反してけろっと軽い口調でヘラヘラと笑うリアム。それとは対照的にオフェリアは今にも泣きそうなくらいに顔をぐしゃっと潰して、リアムに思いきり抱きついた。
「バカっ! おかえり。心配したんだからっ! 寝れるわけないでしょ!」
もっと言い方はあったはずなのに、思いのままの感情をぶつけるオフェリア。そんな彼女に文句を言うでもなく「ごめん。ただいま」と抱きしめ返すリアムの力は、心なしか弱かった。
「ちょっと色々と用事に手間取っちゃってね。僕もこんなに時間かけるつもりはなかったんだけど。心配かけてごめんね」
「本当だよ。それにすごくぼろぼろだし! ほら、こっちに来て。今すぐ治癒魔法をかけるから」
「うん」
リアムはぼろぼろだというのにニコニコと何だか嬉しそうだった。
オフェリアはわけがわからないと思いつつも、目についた頬の腫れや腕の切り傷や脚の打撲などを治していく。
「普段のリアムならこれくらい簡単に治せるんじゃないの?」
「さすが、オフェリアは察しがいいね。絶賛僕は魔力がすっからかんだ。だから、オフェリアの甲斐甲斐しいお世話を所望する」
「キリッとした顔で言わないの。……寝ててよかったとかいうくせに、私に世話させる気満々じゃない」
「オフェリアなら起きてると思ってたし、もし寝てても起きてくれるだろうとは思ってたよ」
「もうっ。……確かに、そうしてた気はするけど」
本当にリアムは私のことをよくわかっているなぁ、とつくづく思うオフェリア。ここまで把握されてるとなると、やはり恋人だったというのは嘘ではないのだろう。
「ご飯は?」
「食べたい。だから申し訳ないけど、ジャスパーを呼んできてもらってもいい?」
「ジャスパーならもう自分の寮に戻ってもらって寝てるよ。だからこれ」
「え? これって、もしかして……」
オフェリアが出したのはサンドイッチ。
リアムがいつ帰ってきてもすぐに食べられるよう事前に用意していたのだ。
「リアムのこと待ってたけど、夕食の時間に間に合わないだろうからって用意しておいたの。……あ、ちゃんとこの部屋のキッチン使ったし、食材はジャスパーと一緒にセントラルキッチンから分けてもらったんだよ。本当は温かいものを用意したかったんだけど、時間によっては軽食のほうがいいかなって。ねぇ、リアム聞いてる?」
リアムの反応がなくてつい色々と喋ったあと不安になってリアムの顔を覗きこむと、ガバッと強い力でリアムに抱きしめられた。
「あー、オフェリア。本当大好き! 僕のためにわざわざ手料理作ってくれるなんて。てか、オフェリアって料理できたんだね」
「なっ! 失礼な。サンドイッチは手料理っていうほどの料理ではないけど、自活してたこともあるし、ちゃんと料理くらいは作れるよ!」
「オフェリアの手料理……か。あぁ、どうしよう。嬉しすぎて食べずに大事に取っておこうかな」
「何言ってるの、食べるために作ったんだからちゃんと食べて! それに、手料理くらいいつだって作るから」
とんでもないことを言い出すリアムを諌めながらサンドイッチを差し出す。
すると、リアムは目を瞑り、大きく「あーん」と口を開けた。
「何してるの」
「え? オフェリアが食べさせてくれるんじゃないの?」
「何でそうなるのよ」
「だって、オフェリアの手ずから食べさせてもらったほうが美味しいだろうし」
「どんな理屈なの」
呆れながらも、リアムの口にサンドイッチを入れるオフェリア。なんだかんだ言いつつも、やっぱりお願いごとには弱かった。
「うん。美味しい」
「ならよかった」
「オフェリアが食べさせてくれたからより美味しくなった気がする。次は口移しで……」
「リアム~?」
「ごめん。調子に乗った」
その後、サンドイッチを完食させたあとやっとリアムの腕から解放されるも、なぜかリアムに腕を引かれてそのままベッドへと連れて行かれる。
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「えぇ……?」
「ちょっとだけ。ほんのちょっとだけでいいから」
いつもよりも切実そうな願いに、普段ならすぐさま断っているオフェリアもちょっとだけ悩んだ。
(うーん。リアムはまだボロボロだし、ちょっとだけならいいかな)
リアムは先程から気丈にはしているものの、魔力が空っぽということはだいぶしんどいはず。一般的な魔法使いであれば、今すぐ失神してもおかしくないほどの負荷がかかっているのにこのように飄々としているのは、将来悪の帝王になるだけあってさすがの忍耐力である。
「ちょっとだけだよ」
「うん。ありがとう、オフェリア」
そう言って抱き合いながらベッドに転がる。
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「ねぇ、オフェリア」
「何?」
「……僕が今日何してたか聞かないの?」
真剣な声音にドキッとする。
顔を上げると、唇が触れそうなほど近い距離にリアムの顔があって、さらに鼓動が跳ねた。
「聞かない。聞きたい気持ちはあるけど、どうせリアムは自分から言わないだろうし。言いたくないんでしょう? だから聞かない」
聞きたい気持ちはあるけど、そこは踏み入れていけない気がしていた。だからこそ、オフェリアはあえて聞かないことにしたのだ。
すると、リアムはふっと優しく口元を緩め、笑った。
「オフェリアらしいね」
「でも、リアムが言いたくなったら聞くよ」
「うん。そうだね。そうしてくれると嬉しいかな」
ギュッとさらに強く抱きしめられる。
「ねぇ、キスしちゃダメ?」
いつになく甘い囁き。
きっと女の子なら誰もが頷いてしまうような、うっとりと脳に響く声だった。
「…………ダメ」
けれど、オフェリアはその甘い誘いに抗う。
まだ恋人でも何でもないのに、不誠実な気がして、オフェリアはグッと堪えた。
「そっか。さて、僕はシャワー浴びてくるよ。オフェリアは今度こそ寝ててね」
「うん、わかった」
リアムはオフェリアを離すと、そのままベッドを降りて行ってしまう。
(断ったくせに寂しいだなんて、私はやっぱり自分勝手だな)
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