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第二十二話 距離感
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「確かに、この特徴的な見た目……あと甘い匂いはこのページのウマル草に当てはまるかもしれないですね。……って、ち、近くないですか?」
「ん? あぁ、いや、キミの瞳はまるで澄んだ空の色のようだと思ってな。こんな綺麗な色、初めて見たよ」
「あ、ありがとうございます……」
礼を述べながらもフードを深く被り直す。
まだ顔をじろじろと見られるのはどうしても慣れず、私は俯きながらレポートを書くのに集中した。
「これはバジリスク草で間違いなさそうだね」
「はい。蛇のような見た目が特徴と書いてましたから。解毒に使われるのは主にこの分厚い葉の中の汁らしいですね」
「そうだね。……ねぇ、クラリス。せっかく同じクラスなんだ、敬語じゃなくてもっと気軽に話してくれ」
「はい、善処します」
「うーん、手厳しいなぁ。あぁ、こっちの薬草はペラリン草だね。主に育毛に使われる、と」
「そうみたいですね。……だいぶレポートできてきましたね」
エディオンとの会話を淡々とこなしながらレポートを進める。
私が適当にあしらっているのに、めげずに軽口を叩けるのはメンタルが強いなぁ、と思わず感心してしまうくらいエディオンは積極的に私に話しかけてきた。
(こんな会話も盛り上がらないつまらない変な女と話してて、何が楽しいんだろ)
ぶっちゃけ自分なら絶対こんな女ごめんだ。いくら見た目が良くたって性格が悪ければ普通の人なら敬遠するだろう、とそっと窺うようにエディオンの顔を見る。
すると、ちょうど彼もこちらを見ていたようでアメジストの瞳と視線がぶつかった。
そして目が合ったことが嬉しいのか、先程よりもニコニコと微笑まれて私はなんとなく気恥ずかしさを感じて俯く。
「レポートはこれで以上、ですよね?」
「あぁ、そうだね。そうだ、クラリス。今度の新入生歓迎会のパーティーは僕と一緒に参加してくれないかい?」
「はい、わかりました。って……え? 今なんて言いました?」
適当に相槌を打っていたのが仇になったらしい。
明らかにレポートとは全く無関係な話題であったにも関わらず、ついろくに聞かないで返事をしてしまった。
「あぁ、ありがとう。ずっと相手を探してたんだ」
「いや、え、ちょっ……! 待って、エディオンさん!?」
「エディオン」
「はい?」
「エディオン、と呼んでくれるまで僕は返事をしないよ」
「えぇ!? え、いや、ちょっと待ってください」
エディオンは本当に先程までペラペラ喋っていたというのに突然、つーんとそっぽを向き始める。
(なんなのこの人、すっごいめんどくさい!)
なんて思いながらも、グッとそんな気持ちは出さずに「エディオンさん、このあと発表もあるので、そういった態度は……やめていただけると……」「エディオンさーん、とにかく話を……」と話しかけるも一向に返事をしてくれず、あまりの頑なぶりに私は撃沈した。
「え、エディオン……。とりあえず、話を……」
「なんだい、クラリス。恥じらいながら僕の名を呼ぶキミも素敵だね」
「それは……どうも。というか、さっきの話……」
「ん? あぁ、パーティーへの同行の取り消しは聞かないよ?」
「えぇ!?」
「さっき、いいお返事をしてくれただろう? それでやっぱりなしはなしだよ。それに他に相手がいないなら僕でも構わないだろう?」
(察しがよすぎるのも考えものというか、この人わかってて色々やってるのではなかろうか)
疑いつつも、そんなこと直接聞けるほどのメンタルを私が持ち合わせてるはずもない。
それ以上抵抗することもできず、渋々私は「はい、では……お願いします」と降伏するのだった。
「ん? あぁ、いや、キミの瞳はまるで澄んだ空の色のようだと思ってな。こんな綺麗な色、初めて見たよ」
「あ、ありがとうございます……」
礼を述べながらもフードを深く被り直す。
まだ顔をじろじろと見られるのはどうしても慣れず、私は俯きながらレポートを書くのに集中した。
「これはバジリスク草で間違いなさそうだね」
「はい。蛇のような見た目が特徴と書いてましたから。解毒に使われるのは主にこの分厚い葉の中の汁らしいですね」
「そうだね。……ねぇ、クラリス。せっかく同じクラスなんだ、敬語じゃなくてもっと気軽に話してくれ」
「はい、善処します」
「うーん、手厳しいなぁ。あぁ、こっちの薬草はペラリン草だね。主に育毛に使われる、と」
「そうみたいですね。……だいぶレポートできてきましたね」
エディオンとの会話を淡々とこなしながらレポートを進める。
私が適当にあしらっているのに、めげずに軽口を叩けるのはメンタルが強いなぁ、と思わず感心してしまうくらいエディオンは積極的に私に話しかけてきた。
(こんな会話も盛り上がらないつまらない変な女と話してて、何が楽しいんだろ)
ぶっちゃけ自分なら絶対こんな女ごめんだ。いくら見た目が良くたって性格が悪ければ普通の人なら敬遠するだろう、とそっと窺うようにエディオンの顔を見る。
すると、ちょうど彼もこちらを見ていたようでアメジストの瞳と視線がぶつかった。
そして目が合ったことが嬉しいのか、先程よりもニコニコと微笑まれて私はなんとなく気恥ずかしさを感じて俯く。
「レポートはこれで以上、ですよね?」
「あぁ、そうだね。そうだ、クラリス。今度の新入生歓迎会のパーティーは僕と一緒に参加してくれないかい?」
「はい、わかりました。って……え? 今なんて言いました?」
適当に相槌を打っていたのが仇になったらしい。
明らかにレポートとは全く無関係な話題であったにも関わらず、ついろくに聞かないで返事をしてしまった。
「あぁ、ありがとう。ずっと相手を探してたんだ」
「いや、え、ちょっ……! 待って、エディオンさん!?」
「エディオン」
「はい?」
「エディオン、と呼んでくれるまで僕は返事をしないよ」
「えぇ!? え、いや、ちょっと待ってください」
エディオンは本当に先程までペラペラ喋っていたというのに突然、つーんとそっぽを向き始める。
(なんなのこの人、すっごいめんどくさい!)
なんて思いながらも、グッとそんな気持ちは出さずに「エディオンさん、このあと発表もあるので、そういった態度は……やめていただけると……」「エディオンさーん、とにかく話を……」と話しかけるも一向に返事をしてくれず、あまりの頑なぶりに私は撃沈した。
「え、エディオン……。とりあえず、話を……」
「なんだい、クラリス。恥じらいながら僕の名を呼ぶキミも素敵だね」
「それは……どうも。というか、さっきの話……」
「ん? あぁ、パーティーへの同行の取り消しは聞かないよ?」
「えぇ!?」
「さっき、いいお返事をしてくれただろう? それでやっぱりなしはなしだよ。それに他に相手がいないなら僕でも構わないだろう?」
(察しがよすぎるのも考えものというか、この人わかってて色々やってるのではなかろうか)
疑いつつも、そんなこと直接聞けるほどのメンタルを私が持ち合わせてるはずもない。
それ以上抵抗することもできず、渋々私は「はい、では……お願いします」と降伏するのだった。
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