前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ

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第六十話 幼馴染

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「僕が殴った」
「はい?」
「僕があいつを殴ったんだ」
「はぁ!? え? 何で!?」

 まさかエディオンが殴ったとは思わず驚くと、アイザックとエディオンはお互いそっぽを向いて複雑な表情をしている。

「エディオン?」
「ヤツが……キミを守れなかったから」
「え?」
「そばにいたくせに、きちんとクラリスを守れなかっただろう? だから、つい怒った勢いで……」
「いや、それに関しては本当に俺が悪い。俺がきちんと魔法を使えてたらよかったんだが、やはり俺はダメだな。だからエディが怒るのも無理はない」
「ほら、アイクのそういうところ! そうやって、何でも悲観的になって……っ! そうやって自罰的なとこはよくないといつも言ってるだろう!?」

(うん? なんだか話の展開がおかしくなってきたぞ?)

 エディオンが私のことでアイザックを殴ったというのはわかった。
 それに対してアイザックは素直に自分が悪いと反省するのもなんとなくわかるが、それに対して逆ギレしてるエディオンはどういうことなのか。

 というか、何気にさっきから愛称で呼んでいる気がするのだが、気のせいだろうか。

 エディオンが怒り、アイザックがそれに対してひたすら謝ってる状態のところに「ちょ、ちょっと待って」と割り込む私。

 すると二人がこちらを向く。

「二人って知り合いだったの?」
「……誰がこんなヤツ」
「幼馴染だ」
「えぇ!?」
「空気読めよ、アイク!」

 エディオンが誤魔化そうとするが、アイザックは素直に答える。
 その様子にすかさずエディオンが突っ込みを入れるが後の祭りだった。

 考えてみたらエディオンは第三王子、アイザックは魔法統括大臣の息子だというのだから繋がりがあって不思議ではない。

 今更そんなことに気づいて、私の察する能力の低さに自分でもうんざりした。

「幼馴染だったの?」
「あぁ、エディとは親同士が仲がよくて、俺達が同い年ということもあって昔から見知っているし、幼稚舎から学校もずっと一緒だ」
「エディオン、何で教えてくれなかったの?」
「……別に、隠すつもりはなかったんだけど、最近のアイクは見ていてイライラするからつい」

 エディオンの言葉に申し訳なさそうに眉を下げるアイザック。
 見た目はエディオンよりも大きくいかついのに、さながら主人に怒られた犬のようである。

「だから悪かったと言ってるだろう?」
「ふん、お前はいつも謝ってばかりだ」
「ちょ、もう喧嘩はいいから。とりあえずアイザックはその頬を治したほうがいいわよ?」
「いや、これは俺の罰みたいなものだからこのままでいい」
「そう言われても、結局原因が私みたいだし、見てるほうがつらいんですけど!」
「お前はまたそうやって……っ! お前の顔を見るとクラリスが気にするというんだ。さっさと治せ」
「いや、それ、殴ったエディオンが言えることじゃないでしょ!」

 エディオンは普段見せる顔とアイザックに見せる顔がどうやら違うらしい。
 その気安さは親しさゆえだろうが、私としては今のようなほうが普段の数倍好感が持てた。

「じゃあ、とりあえず簡易魔法で治すから、こっちに頬を向けて」
「……わかった」

 渋々と言った様子で向けられる頬に「身体に流れる生命の煌めきよ。彼の者を治し、痛みから解放せよ」と手を翳しながら唱える。

 すると、多少まだ痣は残っているものの、腫れはだいぶ引き、よく見ないと気づかないほどになった。

「これはあくまで簡易魔法だから、あとで医務室に行ってね」
「わかった」
「クラリス、僕もお願いしていいだろうか?」
「エディオンはどこも怪我してないでしょう!?」
「キミがアイザックばかり構うから、僕の心の傷は悪化してしまった!」
「そんな冗談ばっか言ってないで、早く校庭行かないと授業遅刻しちゃうわよ」

 そんなことを言っていると予鈴が校内に響く。
 私達は顔を見合わせると、慌てて校庭に向かって駆け出すのだった。
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