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第六十二話 ペア

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「つまり、防衛術は自分に最適な魔法、使い勝手のいい魔法を素早く出せることが最も重要だ。下手に難しい強い魔法を出そうとしても、その間にやられてしまうからな。そういえばマルティーニは最近防衛術を使ったそうだが、実際どうだった?」
「え? あ、はい!」

 グリゴリオ先生に突然指名されて慌てて手を上げて前に出る。

 みんなの注目を集めていることにキュッと心臓を縮めながら、周りをなるべく見ないようにし、先生に意識を集中することにした。

「えっと、すごく、難しかったです。逃げることと戦うことと焦りと恐怖でパニックで思考は限られるし、咄嗟に出せる魔法も限られてくるので、いっぱいいっぱいでした」
「なるほど。ちなみに、マルティーニは何の魔法を出したんだ?」
「私は、火の魔法でした」
「あぁ、キミは入学式でも火の魔法が溢れたらしいからな。きっと適正があるのだろう。マルティーニ、貴重な体験話をどうもありがとう」
「い、いえ」

(適正というか、もはや呪いみたいなものだけど)

 自分自身では火の魔法はなるべく避けたかったのだが、ここまで縁があるとなると認めざるを得ない。

 周りも「あぁ、確かに」と納得しているところを見るのも複雑ではあるが、ある意味今回ばかりは火の魔法のおかげで生き残れているのだから、素直にそこは適正があるのだと認めなければならないだろう。

「ということで、適正がある魔法。つまり、自分にとって身近な魔法が最も出しやすく、身を守るのに最適だ。実際、瞬時に自分の身を守らなければならないことに直面すると、人はパニックになり無力だからな。だから何度も経験を積み、身体に教え込むことで、緊急事態でも魔法が出せるようにする必要がある。そのため、いかに冷静になって状況判断して防衛術が使えるかが防衛術にとって重要であり、防衛術の最終目標である。ということで本日は、防衛術の初歩である自分に合った魔法を探るべく、ペアになって各々の魔法適正を確かめること。その後はそれぞれ模擬戦として一対一の勝負をしてもらうから、そのつもりで励めよ」
「わかりました」
「では、解散!」

 グリゴリオ先生の言葉でみんな散り散りになる。

 そして私はアイザックをガシッと引っ掴み、私の腕をエディオンが握るという状況になってそれぞれ見合った。

「何をやっている?」
「えーっと、アイザックと一緒に練習したいなぁ~と思って」
「クラリス。アイクなんかよりも僕の方がちゃんと教えられると思うよ? それに僕はキミを守るために片時も離れないと言っただろう?」
「いやぁ、ちょっとは離れたほうがお互いのためだと思うなぁ……?」

(うーん、どうしたものか……)

 このままここでまた言い争いというか話し合っていても決着がつくことは恐らくないだろう。
 そこで私はある提案をするのだった。
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