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第六十四話 イメージ
詠唱をすると手の平に光の粒子が集まってくる。するとすぐさま「そう、上手だよ。さすがは僕のクラリスだ」とエディオンに褒められる。……エディオンのものになったつもりはないが、一々指摘するのも面倒なので、あえてそこはスルーすることにした。
「魔法はイメージだ。自らの体内に秘めた魔力をいかに具現化し、そのイメージのまま維持できるかが大事なんだ」
「なるほど」
「そして、イメージを言葉に出さなくても魔法が打てるようになったら完璧だよ。とはいえ、今はまだ言葉にしたほうがイメージがまとまっていいから、いかに自分のイメージをスムーズに引き出せるかに気をつけながら取り組もうか」
エディオンの教え方はとても上手だった。
わからないことがあればすぐにわかりやすく教えてくれる。
まるで、「私の思考は読まれているのでは?」と錯覚するほど適切で簡潔に答えてくれるため、彼の能力の高さを実感した。
「クラリスの得意な魔法は火だったよね? ではまずは火柱を上げてみるところから始めようか。意識を集中させて、自分よりも堆く舞い上がる火の柱を想像してごらん?」
「自分よりも堆い火……」
火を想像するとどうしてもあの火炙りのことが脳裏を過ぎる。
だが、それを受け入れてこそ魔法が発揮されると思うと、嫌な音を立てる心臓をグッと抑え込んだ。
(前世を乗り越えてこそでしょ、私! 前世を引きずって死んだら元も子もないじゃない)
オーガとの一件で、自分自身で生きる力を身につけなければと実感したからこそ、今までみたいに受け身のままではいけないと思うようになった。
目立ちたくない気持ちはまだ多少なりともあるが、そんなことでビクビクしてても死期が近づくだけで意味がないことなどわかっていた。
(日々学習、だものね……っ!)
前世の記憶を持ったまま転生した以上、前世と同じ誤ちを繰り返すわけにはいかない。
そのために失敗を生かし、学習することで今世を生き抜くのだ。
すぅ、と息を整える。
(落ち着け、落ち着け。……怖くても苦しくても、それを自らの力に変えるのよ)
気持ちを落ち着けると身体の奥底が熱くなるのを感じる。
グラグラと何かが湧き立ち、それはぐるぐると体内で今か今かと放出を待ち侘びているようだった。
そして私は、その蟠りを吐き出すかのように口をゆっくりと開いた。
「我が身体に宿いし焔よ、その身を解放し、高く舞い上がれ!!」
手を高く上げると、ボウッとその手を追うように一気に舞うと、私よりも高いどころか天にまで届きそうなほどの火柱が上がった。
想像したとはいえ、あまりの勢いのよさに呆気にとられる。
近くで見ていたアイザックとエディオンもびっくりして絶句するほどには迫力があり、グリゴリオ先生までも「な、何事だ!?」と駆けつけてくるほどだった。
「す、すみません。ちょっと勢い余ってしまいまして……」
「勢い余ったレベルではないと思うが……とにかく怪我をしないように気をつけろよ」
「はい、すみません」
深々と頭を下げるとグリゴリオ先生はなんとも言えない顔をしたあと戻っていく。
「えっと、クラリスはまず魔力量が人よりも多いみたいだから、力の調整について教えたほうがよさそうだね」
「ごめん、お願いします」
さすがのエディオンも面食らったようで苦笑気味だ。
目立たないようにすればするほど目立ったことをしてしまう自分に呆れながらも、引き続きエディオンに教えを乞うのだった。
「魔法はイメージだ。自らの体内に秘めた魔力をいかに具現化し、そのイメージのまま維持できるかが大事なんだ」
「なるほど」
「そして、イメージを言葉に出さなくても魔法が打てるようになったら完璧だよ。とはいえ、今はまだ言葉にしたほうがイメージがまとまっていいから、いかに自分のイメージをスムーズに引き出せるかに気をつけながら取り組もうか」
エディオンの教え方はとても上手だった。
わからないことがあればすぐにわかりやすく教えてくれる。
まるで、「私の思考は読まれているのでは?」と錯覚するほど適切で簡潔に答えてくれるため、彼の能力の高さを実感した。
「クラリスの得意な魔法は火だったよね? ではまずは火柱を上げてみるところから始めようか。意識を集中させて、自分よりも堆く舞い上がる火の柱を想像してごらん?」
「自分よりも堆い火……」
火を想像するとどうしてもあの火炙りのことが脳裏を過ぎる。
だが、それを受け入れてこそ魔法が発揮されると思うと、嫌な音を立てる心臓をグッと抑え込んだ。
(前世を乗り越えてこそでしょ、私! 前世を引きずって死んだら元も子もないじゃない)
オーガとの一件で、自分自身で生きる力を身につけなければと実感したからこそ、今までみたいに受け身のままではいけないと思うようになった。
目立ちたくない気持ちはまだ多少なりともあるが、そんなことでビクビクしてても死期が近づくだけで意味がないことなどわかっていた。
(日々学習、だものね……っ!)
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そのために失敗を生かし、学習することで今世を生き抜くのだ。
すぅ、と息を整える。
(落ち着け、落ち着け。……怖くても苦しくても、それを自らの力に変えるのよ)
気持ちを落ち着けると身体の奥底が熱くなるのを感じる。
グラグラと何かが湧き立ち、それはぐるぐると体内で今か今かと放出を待ち侘びているようだった。
そして私は、その蟠りを吐き出すかのように口をゆっくりと開いた。
「我が身体に宿いし焔よ、その身を解放し、高く舞い上がれ!!」
手を高く上げると、ボウッとその手を追うように一気に舞うと、私よりも高いどころか天にまで届きそうなほどの火柱が上がった。
想像したとはいえ、あまりの勢いのよさに呆気にとられる。
近くで見ていたアイザックとエディオンもびっくりして絶句するほどには迫力があり、グリゴリオ先生までも「な、何事だ!?」と駆けつけてくるほどだった。
「す、すみません。ちょっと勢い余ってしまいまして……」
「勢い余ったレベルではないと思うが……とにかく怪我をしないように気をつけろよ」
「はい、すみません」
深々と頭を下げるとグリゴリオ先生はなんとも言えない顔をしたあと戻っていく。
「えっと、クラリスはまず魔力量が人よりも多いみたいだから、力の調整について教えたほうがよさそうだね」
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