前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ

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第八十五話 防御壁

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 たった少し魔力を放っただけでこの威力だ。
 これが魔法となって攻撃されるとなると、命すら危ういのは間違いなかった。

「クラリス・マルティーニ。私のために死になさい!」
「はい、わかりました。……なんて誰が言うのよ! 嫌に決まってるでしょう!?」
「貴女さえいなければ、私はお母様に認められるのよ。だから、今すぐここで死になさい!!」
「絶対に嫌ったら嫌よ!!」

(今世こそは天寿をまっとうすると決めたんだから!)

 稲妻が一直線に私に向かってやってくる。
 それを同じく雷の魔法で相殺させて防いだ。

 だが、威力的にも魔力量的にも確実にミナのほうが格上で、このままだとこちらが不利なのは誰が見ても明らかだった。

(不本意だけど、つくづく私には死が付き纏うようね……っ)

 悪いことをしたつもりなど毛頭ないのに、この仕打ち。

 運命を決める神様に「お前の不運は前前世で悪いことしたゆえの因果だ」と言われたら思わず納得してしまうほどの悪運の強さである。

 とはいえ、ここで素直に死を受け入れるつもりはない。
 今世こそは平穏に生きると決めたのだから、絶対に何が何でも生きてやる、と私は決意を新たにする。

(そもそも、こんな理不尽な逆恨みで死ぬなんて絶対にごめんだわ!)

 不意に、視界の端で何かがうごめいているのに気づきそちらを見ると、割れた窓を修復するために妖精達が集まっているようだった。

(あの子達……一体、何をしてるんだろう?)

 ミナを気にしつつそちらもチラチラと確認していると、妖精達が次々に魔法で壁を作っていくのが見えた。
 すると、その妖精の様子に気づいたアイザックが慌て出す。

「クラリス、まずい! 妖精達はここを封鎖する気だ!」
「え? それ、どういうこと!?」
「学園内に被害をこれ以上出さないために、妖精達は一時的にここを防御壁で囲って封鎖するつもりのようだ!!」
「な……っ!? ってことは、閉じ込められたら私達はここから出られないってこと!?」
「そういうことになる」
「じゃあ、今すぐここから脱出しないと!」

 さすがに閉じ込められたら万事休すだ、と慌ててミナに背を向けて走り出す。

 だが、「逃がさないわ!!」という声と共に行く手を厚い焔の壁に阻まれ、出ることができなかった。

 そしてみるみるうちに塞がれていく空間。

 廊下だったはずの場所は妖精達の作った防御壁のせいで箱のような状態になり、私達はそこに閉じ込められてしまった。
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