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第一章 結婚
第四十三話 告白
帰宅後、久々のパーティだったせいかそれぞれみんな満身創痍だったようで、挨拶を済ませると早々に自室に戻って行った。
子供達にはそれぞれドレスや小物などきちんと片付けておくように言ったが、アンナはともかくセレナとフィオナはちょっと怪しいと思いつつも、今日くらいは大目に見てあげることにした。
「ふぅ。疲れたぁ~」
一通り片付けを終えたあと、シアは自室に戻ると思いきり身体を伸ばす。
自分が思っていたよりも疲れがあったようで、パーティー慣れしているはずのシアでも今日ばかりはいつもよりも疲労感を覚えていた。
「あー、眠い。このまま寝ちゃいたい……」
ぐでーっと、はしたなくベッドに寝そべる。
髪も解いておらず、チュニックにすら着替えていないため、子供達に釘を刺した手前このまま寝るわけにはいかないのだが、ふかふかの布団の包まれる心地よさに目蓋がだんだんと重くなっていった。
「でも、今日は行けてよかった」
目を閉じながら、シアは先程のセレナとフィオナのことを思い出して、「ふふふ」と口元を緩める。
「本当、レオナルドさんに似て不器用なんだから」
結局セレナは誰にダンスを誘われたか教えてくれなかったが、とても有意義な時間を過ごしたらしい。戻ってきたあと、頬を赤らめながら時々ぼんやりしていたのは気になるが。
フィオナもまたマルタと一緒にディラン伯爵家の邸内を散策したのが楽しかったようだ。普段見ないあれこれを報告してくる姿はとても可愛らしかった。
とはいえ、セレナもフィオナも相変わらず素直ではない。ちょっとずつ心を開いてきてくれてはいるが、きちんとした感謝の言葉をいうほどまだ親しくなれてはいなかった。
だが、セレナとフィオナから「あんたのおかげで多少は楽しめたかも?」「今日は楽しかった」という言質をとったので、シアとしては大満足だった。
「ちょっとずつ前進できてるかしら」
まだ全ての壁が壊せたわけではないが、子供達からも認められ、レオナルドからもここにいてもいいというお墨付きももらってシアは嬉しかった。
ギューイ家に居場所があるということを噛み締めながら、疲労感に誘われるままゆっくりと意識を手放そうとしたときだった。
コンコン……
不意にドアをノックする音が聞こえ、ハッと一気に現実に引き戻される。
みんな寝に行ったはずなのに一体誰が来たのか、と飛び起きてシアは慌ててドレスを脱ぎ捨ててチュニックに着替えると、乱れた髪を整えて足早にドアに向かった。
「はーい、どなた? って、あら、アンナじゃない。どうしたの? 眠れなかった?」
ドアを開けた先には、神妙な顔つきのアンナがいた。
姿を見るに、早々に寝る準備を済ませたいでたちだ。
「疲れてるのにごめんなさい。シア様とお話がしたくて」
申し訳なさそうに佇むアンナ。
こちらも相変わらず気負いすぎだなぁと、シアはわざと明るく振る舞ってみせた。
「何言ってるの、アンナならいつでも大歓迎よ。それに、まだ寝る前だったから気にしないで」
「すみません」
「もう謝らないの。ほら、立ち話もなんだし、どうぞ中に入って。……ここで騒いでたらセレナとフィオナに怒られそうだしょう? あ、今言ったことはセレナとフィオナには内緒ね」
「ふふ。はい、もちろんです」
アンナが笑顔になったところで部屋の中に案内する。ベッドやソファは外套やら小物やらをほったらかしていたので、サイドテーブルにある椅子のほうに案内した。
「ごめんなさい、ちょっと今散らかってるから、ここに座ってちょっと待っていてもらってもいいかしら? ……あぁ、寝る前だしホットミルクでも用意するわね」
「それなら私が」
「いいのいいの。私がやるからアンナは座ってて」
「ありがとうございます」
シアが慌てて散らかした小物などを片付け、ベッドに脱ぎ捨てた外套を片付けたあと、すぐにキッチンのほうでホットミルクを用意して自分もサイドテーブルの席につく。
「ごめんなさいね。遅くなっちゃって」
「いえ、私のほうこそこんな遅い時間に」
「いいのよ。それで、話って?」
シアが話を促すと、アンナは深々と頭を下げ「今日は本当にどうもありがとうございました。自由に過ごさせてもらったおかげで、楽しい時間が過ごせました」と改めて礼を述べた。
「そんなにかしこまらなくていいわよ。言ったでしょう? アンナはもっとワガママを言っていいって」
「ありがとうございます」
「ハロルドくんとも楽しめたようで何よりよ。素敵な方だったわね。アンナのことを慕ってくださっているのがよくわかったわ」
レオナルドとのダンス後、戻ってきたアンナと共に挨拶をしたハロルドはとても礼儀正しく紳士然としていた。
隣にいたレオナルドは、内心穏やかではなさそうであったが。
「ハロルド様は本当に私を想ってくださっていて、ありがたいです。だから、というか、実は、その……お父様に話してはないことがあって」
「うん?」
「以前、ハロルド様から養子に来ないかっていう話も出てまして」
「え!?」
突然のアンナの告白に驚くシア。
夜中だというのに思いのほか大きな声が出てしまって、慌てて自分の口を押さえた。
「ごめんなさい、大きな声を出してしまって」
「いえ。私も言おうか言うまいか悩んだのですが、シア様には話しておこうと思いまして」
レオナルドに話していないということなら秘密裏に進めていたことなのだろう。
確かに、レオナルドに知られたらきっと大騒動になっていたに違いない。
「ハロルド様は私の境遇に憂いて、ディラン伯爵家の親類の養子に行くか、はたまた駆け落ちでもしようかというくらい私のことを慮ってくださって。でも、シア様が我が家に来てくれたおかげでその話もなくなりました」
「そうだったの」
「お父様のことが気がかりでハロルド様の誘いを拒絶はしていましたが、正直ハロルド様の誘いを魅力的に思っていたのも事実です。でも、今はこうしてみんなと家族でいられることにホッとしています」
「アンナ……」
アンナは優しく、人一倍配慮する性格ゆえに余計にあれこれと抱え込んでしまったのだろう。
レオナルドのこともセレナのこともフィオナのことも気遣い、誰にも弱音を吐けずにずっと一人で奮闘していたに違いない。
だからこそ、ハロルドは家出するくらい思い詰めたアンナを無理矢理にでもギューイ家から引き離そうとしたのだというのはわかった。
「だから、シア様が我が家に来てくれて、私の母になってくれて、私の家族になってくれて、嬉しかったんです。本当にありがとうございます。こうして私がここにいられるのもシア様のおかげです」
改めてアンナからお礼を言われて、胸がいっぱいになる。
自分の存在によって感謝されるのはシアにとって何よりも嬉しかった。
「こちらこそ、ありがとうアンナ。私に縁をくれて。それから、アンナの気持ちを話してくれて。これからも一人で抱え込まないで、重い悩みでもくだらないことでも何でも話してくれると嬉しいわ」
「はい」
シアの言葉にアンナが嬉しそうにはにかむ。
その表情はとても晴れやかだった。
「それにしても、アンナとレオナルドさんはさすが親子ね。さっきレオナルドさんにも同じようなことを言われたわ」
「え? お父様が?」
「えぇ。全く同じ言葉ではないけど、ほとんど同じことを言っていたわ」
「お父様も、そういう言葉おっしゃるんですね」
アンナも意外だったようで思わず驚いた表情をしている。
普段一緒にいるからこそ、仏頂面で感情を表に出すことが少ないレオナルドがそのような言葉を言うとは思えないようだった。
「ふふ、意外よね」
「はい。意外と言えば、その、普段はしっかりしていらっしゃるので、シア様もだらけることがあるのがちょっと意外でした」
アンナの指摘に、今度はシアが面食らう。
自分なりに平常に過ごしていたつもりだったが、案外気を張ってたのかもしれないとそこで気づいた。
「私、結構ずぼらなのよ。だから自分のことになるとつい疎かになっちゃうのよね。……幻滅した?」
「いいえ! そんなことは! むしろそのほうが親しみやすいというか、シア様も完璧じゃないんだと親近感がわくというか……」
「ははは、全然私は完璧じゃないわよ。実家ではいっつもお母様に怒られてたし」
「えぇ!? そうなんですか!?」
「そうよ。もうしょっちゅう怒られてたわ」
「意外です……」
それから、シアは過去にあった黒歴史の話をしつつ、アンナからはハロルドとの恋話や学校での交友関係などの話を聞いた。
つい盛り上がってしまい深夜に突入してしまったので、いっそこのまま一緒に寝ようとアンナを説得し、シアは片付けと身だしなみを整えるとそのまま二人でベッドに潜り込んだ。
「誰かと一緒に寝るだなんていつぶりでしょう」
「私も。ふふふ、なんだか楽しいわね」
「はい」
シアがアンナの手を握ると、おずおずとくっついてくるアンナ。
「お母様と一緒ってこんな感じなんですね」
しみじみと吐き出すアンナ。
今まで甘えられなかったからこそ、アンナは甘えられるシアの存在に安堵しているようだった。
「これからもずっと私のお母様でいてくださいね」
「えぇ、もちろん」
シアがアンナの背を撫でると、幼な子のようにギュッと抱きついてくるアンナ。
その体温を愛しく感じながら、シアはアンナと共に眠りにつくのであった。
第一章 完
子供達にはそれぞれドレスや小物などきちんと片付けておくように言ったが、アンナはともかくセレナとフィオナはちょっと怪しいと思いつつも、今日くらいは大目に見てあげることにした。
「ふぅ。疲れたぁ~」
一通り片付けを終えたあと、シアは自室に戻ると思いきり身体を伸ばす。
自分が思っていたよりも疲れがあったようで、パーティー慣れしているはずのシアでも今日ばかりはいつもよりも疲労感を覚えていた。
「あー、眠い。このまま寝ちゃいたい……」
ぐでーっと、はしたなくベッドに寝そべる。
髪も解いておらず、チュニックにすら着替えていないため、子供達に釘を刺した手前このまま寝るわけにはいかないのだが、ふかふかの布団の包まれる心地よさに目蓋がだんだんと重くなっていった。
「でも、今日は行けてよかった」
目を閉じながら、シアは先程のセレナとフィオナのことを思い出して、「ふふふ」と口元を緩める。
「本当、レオナルドさんに似て不器用なんだから」
結局セレナは誰にダンスを誘われたか教えてくれなかったが、とても有意義な時間を過ごしたらしい。戻ってきたあと、頬を赤らめながら時々ぼんやりしていたのは気になるが。
フィオナもまたマルタと一緒にディラン伯爵家の邸内を散策したのが楽しかったようだ。普段見ないあれこれを報告してくる姿はとても可愛らしかった。
とはいえ、セレナもフィオナも相変わらず素直ではない。ちょっとずつ心を開いてきてくれてはいるが、きちんとした感謝の言葉をいうほどまだ親しくなれてはいなかった。
だが、セレナとフィオナから「あんたのおかげで多少は楽しめたかも?」「今日は楽しかった」という言質をとったので、シアとしては大満足だった。
「ちょっとずつ前進できてるかしら」
まだ全ての壁が壊せたわけではないが、子供達からも認められ、レオナルドからもここにいてもいいというお墨付きももらってシアは嬉しかった。
ギューイ家に居場所があるということを噛み締めながら、疲労感に誘われるままゆっくりと意識を手放そうとしたときだった。
コンコン……
不意にドアをノックする音が聞こえ、ハッと一気に現実に引き戻される。
みんな寝に行ったはずなのに一体誰が来たのか、と飛び起きてシアは慌ててドレスを脱ぎ捨ててチュニックに着替えると、乱れた髪を整えて足早にドアに向かった。
「はーい、どなた? って、あら、アンナじゃない。どうしたの? 眠れなかった?」
ドアを開けた先には、神妙な顔つきのアンナがいた。
姿を見るに、早々に寝る準備を済ませたいでたちだ。
「疲れてるのにごめんなさい。シア様とお話がしたくて」
申し訳なさそうに佇むアンナ。
こちらも相変わらず気負いすぎだなぁと、シアはわざと明るく振る舞ってみせた。
「何言ってるの、アンナならいつでも大歓迎よ。それに、まだ寝る前だったから気にしないで」
「すみません」
「もう謝らないの。ほら、立ち話もなんだし、どうぞ中に入って。……ここで騒いでたらセレナとフィオナに怒られそうだしょう? あ、今言ったことはセレナとフィオナには内緒ね」
「ふふ。はい、もちろんです」
アンナが笑顔になったところで部屋の中に案内する。ベッドやソファは外套やら小物やらをほったらかしていたので、サイドテーブルにある椅子のほうに案内した。
「ごめんなさい、ちょっと今散らかってるから、ここに座ってちょっと待っていてもらってもいいかしら? ……あぁ、寝る前だしホットミルクでも用意するわね」
「それなら私が」
「いいのいいの。私がやるからアンナは座ってて」
「ありがとうございます」
シアが慌てて散らかした小物などを片付け、ベッドに脱ぎ捨てた外套を片付けたあと、すぐにキッチンのほうでホットミルクを用意して自分もサイドテーブルの席につく。
「ごめんなさいね。遅くなっちゃって」
「いえ、私のほうこそこんな遅い時間に」
「いいのよ。それで、話って?」
シアが話を促すと、アンナは深々と頭を下げ「今日は本当にどうもありがとうございました。自由に過ごさせてもらったおかげで、楽しい時間が過ごせました」と改めて礼を述べた。
「そんなにかしこまらなくていいわよ。言ったでしょう? アンナはもっとワガママを言っていいって」
「ありがとうございます」
「ハロルドくんとも楽しめたようで何よりよ。素敵な方だったわね。アンナのことを慕ってくださっているのがよくわかったわ」
レオナルドとのダンス後、戻ってきたアンナと共に挨拶をしたハロルドはとても礼儀正しく紳士然としていた。
隣にいたレオナルドは、内心穏やかではなさそうであったが。
「ハロルド様は本当に私を想ってくださっていて、ありがたいです。だから、というか、実は、その……お父様に話してはないことがあって」
「うん?」
「以前、ハロルド様から養子に来ないかっていう話も出てまして」
「え!?」
突然のアンナの告白に驚くシア。
夜中だというのに思いのほか大きな声が出てしまって、慌てて自分の口を押さえた。
「ごめんなさい、大きな声を出してしまって」
「いえ。私も言おうか言うまいか悩んだのですが、シア様には話しておこうと思いまして」
レオナルドに話していないということなら秘密裏に進めていたことなのだろう。
確かに、レオナルドに知られたらきっと大騒動になっていたに違いない。
「ハロルド様は私の境遇に憂いて、ディラン伯爵家の親類の養子に行くか、はたまた駆け落ちでもしようかというくらい私のことを慮ってくださって。でも、シア様が我が家に来てくれたおかげでその話もなくなりました」
「そうだったの」
「お父様のことが気がかりでハロルド様の誘いを拒絶はしていましたが、正直ハロルド様の誘いを魅力的に思っていたのも事実です。でも、今はこうしてみんなと家族でいられることにホッとしています」
「アンナ……」
アンナは優しく、人一倍配慮する性格ゆえに余計にあれこれと抱え込んでしまったのだろう。
レオナルドのこともセレナのこともフィオナのことも気遣い、誰にも弱音を吐けずにずっと一人で奮闘していたに違いない。
だからこそ、ハロルドは家出するくらい思い詰めたアンナを無理矢理にでもギューイ家から引き離そうとしたのだというのはわかった。
「だから、シア様が我が家に来てくれて、私の母になってくれて、私の家族になってくれて、嬉しかったんです。本当にありがとうございます。こうして私がここにいられるのもシア様のおかげです」
改めてアンナからお礼を言われて、胸がいっぱいになる。
自分の存在によって感謝されるのはシアにとって何よりも嬉しかった。
「こちらこそ、ありがとうアンナ。私に縁をくれて。それから、アンナの気持ちを話してくれて。これからも一人で抱え込まないで、重い悩みでもくだらないことでも何でも話してくれると嬉しいわ」
「はい」
シアの言葉にアンナが嬉しそうにはにかむ。
その表情はとても晴れやかだった。
「それにしても、アンナとレオナルドさんはさすが親子ね。さっきレオナルドさんにも同じようなことを言われたわ」
「え? お父様が?」
「えぇ。全く同じ言葉ではないけど、ほとんど同じことを言っていたわ」
「お父様も、そういう言葉おっしゃるんですね」
アンナも意外だったようで思わず驚いた表情をしている。
普段一緒にいるからこそ、仏頂面で感情を表に出すことが少ないレオナルドがそのような言葉を言うとは思えないようだった。
「ふふ、意外よね」
「はい。意外と言えば、その、普段はしっかりしていらっしゃるので、シア様もだらけることがあるのがちょっと意外でした」
アンナの指摘に、今度はシアが面食らう。
自分なりに平常に過ごしていたつもりだったが、案外気を張ってたのかもしれないとそこで気づいた。
「私、結構ずぼらなのよ。だから自分のことになるとつい疎かになっちゃうのよね。……幻滅した?」
「いいえ! そんなことは! むしろそのほうが親しみやすいというか、シア様も完璧じゃないんだと親近感がわくというか……」
「ははは、全然私は完璧じゃないわよ。実家ではいっつもお母様に怒られてたし」
「えぇ!? そうなんですか!?」
「そうよ。もうしょっちゅう怒られてたわ」
「意外です……」
それから、シアは過去にあった黒歴史の話をしつつ、アンナからはハロルドとの恋話や学校での交友関係などの話を聞いた。
つい盛り上がってしまい深夜に突入してしまったので、いっそこのまま一緒に寝ようとアンナを説得し、シアは片付けと身だしなみを整えるとそのまま二人でベッドに潜り込んだ。
「誰かと一緒に寝るだなんていつぶりでしょう」
「私も。ふふふ、なんだか楽しいわね」
「はい」
シアがアンナの手を握ると、おずおずとくっついてくるアンナ。
「お母様と一緒ってこんな感じなんですね」
しみじみと吐き出すアンナ。
今まで甘えられなかったからこそ、アンナは甘えられるシアの存在に安堵しているようだった。
「これからもずっと私のお母様でいてくださいね」
「えぇ、もちろん」
シアがアンナの背を撫でると、幼な子のようにギュッと抱きついてくるアンナ。
その体温を愛しく感じながら、シアはアンナと共に眠りにつくのであった。
第一章 完
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