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16 もしかして、寝てる……?
「え、また行くの?」
「あぁ、こいつの身柄を衛兵に引き渡さねばならぬからな。きちんと司法で裁いてもらわねば」
意識を失ったままのブランをぐるぐる巻きにし、身動きができない状態にしてから馬車に荷物のように転がす。
チラッとマリーリがブランの顔を見ると、相当ジュリアスに強く殴られたのか、見るも無惨に腫れていた。
(ご自慢の顔も台無しね)
自分がされた仕打ちを考えると当然の報いだと思いながらも、同時にもしジュリアスが駆けつけてなかったらと思うと、考えただけで身震いするほどの恐怖に包まれるマリーリ。
すると、身体が震え、不安で瞳が揺れるマリーリを安心させるように、ジュリアスは彼女を強く抱きしめた。
「大丈夫だ、俺がしっかり証言し、裁きを下してもらってくる」
「ありがとう、ジュリアス」
お互いに見つめ合ったあと、ジュリアスが馬車に乗り込もうとしたときだった。
「マリーリ!!」
「マリーリ! 無事!?」
今度はグラコスとマーサが血相を変えて飛び込んでくる。
殴られて腫らしたマリーリの顔を見るや、マーサは貧血を起こし倒れ、慌ててメイド達が彼女の身体を支え介抱する。
グラコスも愛娘のぼろぼろの姿に、一瞬で顔色が変わった。
「ブランにされたのか!?」
「……はい」
「なんということだ! 私の可愛いマリーリをこのような目に合わせるなどと……っ!!」
グラコスは顔を真っ赤にし、怒りでワナワナと震える。
それもそのはず、今まで穏便にことを進めようと昼夜問わず様々な根回しをしていたというのに、全部パァにされたどころか大切な一人娘を力づくで傷物にされたのだからその怒りは当然であった。
「フィーロ男爵。今回の件については司法に裁いていただこうと思っておりますので、早速で申し訳ありませんがご同行いただけませんでしょうか」
「あぁ、もちろんだ! 今までのことを含めてきっちりと証言させてもらう!!」
「お父様もまた行ってしまうの?」
「あぁ、こういうのは早いほうがいいからな。トッド、妻と娘を任せた」
「承知しました」
「ジュリアスも気をつけて」
「あぁ、マリーリも」
チュッとジュリアスがマリーリの額に口づける。
あまりの不意打ちに、マリーリは一瞬呆けたあと、されたことを理解して、かぁぁぁと顔を赤らめるとジュリアスは優しく微笑んで馬車に乗り込んだ。
そしてまだ雨が続く中、ジュリアスとグラコスとブランを乗せた馬車は暗闇の中に消えていったのだった。
◇
「もう大丈夫なのか?」
「えぇ、もうだいぶ。どう? 顔も腫れてないでしょう?」
「そうか? この辺りはまだふっくらしている気がするが」
「それは元からですー! 悪かったわね、顔に肉がつきやすいのよ。もう、気にしてるって言うのに」
ぷぅ、と口元を膨らませると、ジュリアスが愉快そうに笑いながら「すまない、冗談だ」とマリーリの頭を撫でた。
あの嵐の日、ジュリアスとグラコスは衛兵にブランの身柄を引き渡し、その日あったことなどを国王に直訴した。
そして、その日までに調べていたグシュダン家の不正……不法密造酒の売買や違法規制品の輸出入などの証拠や証言などもまとめて通報し、グシュダン家は伯爵の爵位を剥奪された。
この件に関わった人々は全て投獄され、その中にはパキラ子爵家も含まれていたという。
そしてグシュダン家、並びにパキラ家は没落の一途を辿り、ブランとの婚約の件は綺麗さっぱりなくなった。
「でも、まだ結婚の許しが出ないだなんて」
グシュダン家との婚約がなくなったことで改めてバード家と婚約ができたのはいいのだが、なぜか婚姻に関しては双方の当主が首を振らず。
結局以前話していた通り、ブレアの地にはマリーリとジュリアスは婚約のまま同行することになった。
未だにマリーリはそれに納得していないのだが、どうやら大人の事情というものがあるらしい。
マリーリは不服であったが、どう抗議してもグラコスは頷かず、マリーリは渋々引き下がるしかないのだった。
「まぁ、焦るものでもないだろう? それに、結婚できるのは決まっているのだから」
「そうかもしれないけど……、ジュリアスは私とすぐに結婚したくないの?」
「それは……」
「待って、いい。変なことを言ってしまったわ。私ったら、最近ちょっと変なのよね」
「変って、大丈夫なのか?」
あの一件のせいか、マリーリはやはりどこかトラウマを抱えてしまったようで、確約がないという状態が不安で仕方がなかった。
ジュリアスも自分に甘いことを言っている陰で実は何かを悪いことを言っているのではないかと疑心暗鬼に苛まれたり、誰かにまたジュリアスを奪われてしまうのではないかという警戒心が生まれたりするようになってしまった。
マリーリはそんなこと考えたくもないのに次々によからぬことばかり考えてしまう元々の性格も災いして、その不安感がより増してしまったのだ。
(でもこんなこと、ジュリアスに言えない)
苦しい胸の内を曝け出したいが、ジュリアスのことを信用しきれていない自分がいて、マリーリは素直に本心を言うことができなかった。
元々この婚約だってお互い都合のいい相手だからという愛のないもの。
お互い想いあって実現したものではないのだと自分に言い聞かせてマリーリはグッと黒い蟠りを心の内に押し留めた。
「えぇ、大丈夫。ジュリアスも忙しいのに、いつも来てくれてありがとう」
「いや、それは別にいいんだが……」
ジュリアスは複雑な表情をしながらマリーリを見つめる。
最近のジュリアスはなんだかたまに難しい表情をすることが多くなったような気がする。
何か言いたげだけど、それを我慢しているような。
マリーリは本当は彼が何を考えているか尋ねたかったが、またそれを言って嫌な重い女だと思われたくなくて、その言葉を飲み込んだ。
「そういえば、ジュリアスはブレアに行く準備はできた?」
「うん? あぁ、そうだな。元々俺は荷物があまりないから、さして用意するものはないんだ」
「そうなのね。寄宿舎から直接ブレアに行くんでしたっけ?」
「そうだ。だから、俺が持っていくのは必要最低限の物資だな」
「そう。私ももうすぐ用意ができると思うんだけど、いかんせん何が必要だかあとからあとから思い出すから埒があかなくて」
「ははは、マリーリのご両親も心配性だからな」
「本当。一体荷車いくつぶんになるんだか……」
「家に入る分だけ持ってきてくれ」
「そうよね。それはちゃんと確認しておく」
沈黙が流れる。
以前だったらこんな沈黙などなんてことなかったのに、今はとても気まずい。
昔の頃はこの沈黙の間どうしていたんだっけ? とも思い出そうにも思い出せず、ただただこの静かな時間を打破する何かを頭の中でぐるぐると必死にマリーリは考えた。
(このままだとジュリアスが帰っちゃう)
ジュリアスは伯爵という称号をもらってから忙しい。
国王に会いに行ったと思えば、ブレアの地に前任の伯爵に会いに行き、鍛錬も欠かさず行い、またマリーリとの婚約のことでマリーリの家に来たりジュリアス自身の実家に行ったりといつ寝ているのか、というくらい多忙だった。
だからこそこうして会える時間は貴重で、今日だってあの嵐の日の後処理でずっと会えずに、あの日以来の逢瀬だというのに。
ガクッ
「……ジュリアス?」
不意に肩にずしんと重みが来たと思えば、肩には綺麗なジュリアスの顔がそこにあった。
えぇ!? と、びっくりして身体を離そうとすると、そのまま身体が沈んでいくジュリアスを慌てて支えると、彼は何も言わずにそのままなすがままになっていた。
「もしかして、寝てる……?」
すぅすぅ、と伏せられた目蓋。
目を閉じていてもわかるほど美しく整った顔。
男なのにズルい、と思ったことも過去にはあるが、それはそれで騎士の時代に苦労したらしいことも知っているのでマリーリはあえて口にはしなかった。
「もう、こんなに疲れているなら来なくてもいいのに……」
そう口にしながらも、やっぱり会えるのは嬉しいわけで。
こうして寝る間も惜しんで自分に会いに来てくれているという事実が、マリーリにとってはとても嬉しかった。
(こんな綺麗な顔をしていてもやっぱり男ね。……重たい)
ずっと支えているのもつらくなって、そっと彼の身体を膝の上に乗せると自然と膝枕の状態になった。
錦糸のようにキラキラと輝く金色の髪が顔にかかるのをそっと払い、そのまま撫でる。
ジュリアスの髪など久しぶりに撫でた気がして、しかもそれがとても心地よくて、マリーリは無心で彼の髪を何度も撫でた。
(ジュリアス、好き……大好き。ありがとう)
愛しい気持ちを抱きながらジュリアスを撫で、そっと彼の頬に口づける。
そして、この時間がずっと続けばいいのに、と密かに思うマリーリだった。
「あぁ、こいつの身柄を衛兵に引き渡さねばならぬからな。きちんと司法で裁いてもらわねば」
意識を失ったままのブランをぐるぐる巻きにし、身動きができない状態にしてから馬車に荷物のように転がす。
チラッとマリーリがブランの顔を見ると、相当ジュリアスに強く殴られたのか、見るも無惨に腫れていた。
(ご自慢の顔も台無しね)
自分がされた仕打ちを考えると当然の報いだと思いながらも、同時にもしジュリアスが駆けつけてなかったらと思うと、考えただけで身震いするほどの恐怖に包まれるマリーリ。
すると、身体が震え、不安で瞳が揺れるマリーリを安心させるように、ジュリアスは彼女を強く抱きしめた。
「大丈夫だ、俺がしっかり証言し、裁きを下してもらってくる」
「ありがとう、ジュリアス」
お互いに見つめ合ったあと、ジュリアスが馬車に乗り込もうとしたときだった。
「マリーリ!!」
「マリーリ! 無事!?」
今度はグラコスとマーサが血相を変えて飛び込んでくる。
殴られて腫らしたマリーリの顔を見るや、マーサは貧血を起こし倒れ、慌ててメイド達が彼女の身体を支え介抱する。
グラコスも愛娘のぼろぼろの姿に、一瞬で顔色が変わった。
「ブランにされたのか!?」
「……はい」
「なんということだ! 私の可愛いマリーリをこのような目に合わせるなどと……っ!!」
グラコスは顔を真っ赤にし、怒りでワナワナと震える。
それもそのはず、今まで穏便にことを進めようと昼夜問わず様々な根回しをしていたというのに、全部パァにされたどころか大切な一人娘を力づくで傷物にされたのだからその怒りは当然であった。
「フィーロ男爵。今回の件については司法に裁いていただこうと思っておりますので、早速で申し訳ありませんがご同行いただけませんでしょうか」
「あぁ、もちろんだ! 今までのことを含めてきっちりと証言させてもらう!!」
「お父様もまた行ってしまうの?」
「あぁ、こういうのは早いほうがいいからな。トッド、妻と娘を任せた」
「承知しました」
「ジュリアスも気をつけて」
「あぁ、マリーリも」
チュッとジュリアスがマリーリの額に口づける。
あまりの不意打ちに、マリーリは一瞬呆けたあと、されたことを理解して、かぁぁぁと顔を赤らめるとジュリアスは優しく微笑んで馬車に乗り込んだ。
そしてまだ雨が続く中、ジュリアスとグラコスとブランを乗せた馬車は暗闇の中に消えていったのだった。
◇
「もう大丈夫なのか?」
「えぇ、もうだいぶ。どう? 顔も腫れてないでしょう?」
「そうか? この辺りはまだふっくらしている気がするが」
「それは元からですー! 悪かったわね、顔に肉がつきやすいのよ。もう、気にしてるって言うのに」
ぷぅ、と口元を膨らませると、ジュリアスが愉快そうに笑いながら「すまない、冗談だ」とマリーリの頭を撫でた。
あの嵐の日、ジュリアスとグラコスは衛兵にブランの身柄を引き渡し、その日あったことなどを国王に直訴した。
そして、その日までに調べていたグシュダン家の不正……不法密造酒の売買や違法規制品の輸出入などの証拠や証言などもまとめて通報し、グシュダン家は伯爵の爵位を剥奪された。
この件に関わった人々は全て投獄され、その中にはパキラ子爵家も含まれていたという。
そしてグシュダン家、並びにパキラ家は没落の一途を辿り、ブランとの婚約の件は綺麗さっぱりなくなった。
「でも、まだ結婚の許しが出ないだなんて」
グシュダン家との婚約がなくなったことで改めてバード家と婚約ができたのはいいのだが、なぜか婚姻に関しては双方の当主が首を振らず。
結局以前話していた通り、ブレアの地にはマリーリとジュリアスは婚約のまま同行することになった。
未だにマリーリはそれに納得していないのだが、どうやら大人の事情というものがあるらしい。
マリーリは不服であったが、どう抗議してもグラコスは頷かず、マリーリは渋々引き下がるしかないのだった。
「まぁ、焦るものでもないだろう? それに、結婚できるのは決まっているのだから」
「そうかもしれないけど……、ジュリアスは私とすぐに結婚したくないの?」
「それは……」
「待って、いい。変なことを言ってしまったわ。私ったら、最近ちょっと変なのよね」
「変って、大丈夫なのか?」
あの一件のせいか、マリーリはやはりどこかトラウマを抱えてしまったようで、確約がないという状態が不安で仕方がなかった。
ジュリアスも自分に甘いことを言っている陰で実は何かを悪いことを言っているのではないかと疑心暗鬼に苛まれたり、誰かにまたジュリアスを奪われてしまうのではないかという警戒心が生まれたりするようになってしまった。
マリーリはそんなこと考えたくもないのに次々によからぬことばかり考えてしまう元々の性格も災いして、その不安感がより増してしまったのだ。
(でもこんなこと、ジュリアスに言えない)
苦しい胸の内を曝け出したいが、ジュリアスのことを信用しきれていない自分がいて、マリーリは素直に本心を言うことができなかった。
元々この婚約だってお互い都合のいい相手だからという愛のないもの。
お互い想いあって実現したものではないのだと自分に言い聞かせてマリーリはグッと黒い蟠りを心の内に押し留めた。
「えぇ、大丈夫。ジュリアスも忙しいのに、いつも来てくれてありがとう」
「いや、それは別にいいんだが……」
ジュリアスは複雑な表情をしながらマリーリを見つめる。
最近のジュリアスはなんだかたまに難しい表情をすることが多くなったような気がする。
何か言いたげだけど、それを我慢しているような。
マリーリは本当は彼が何を考えているか尋ねたかったが、またそれを言って嫌な重い女だと思われたくなくて、その言葉を飲み込んだ。
「そういえば、ジュリアスはブレアに行く準備はできた?」
「うん? あぁ、そうだな。元々俺は荷物があまりないから、さして用意するものはないんだ」
「そうなのね。寄宿舎から直接ブレアに行くんでしたっけ?」
「そうだ。だから、俺が持っていくのは必要最低限の物資だな」
「そう。私ももうすぐ用意ができると思うんだけど、いかんせん何が必要だかあとからあとから思い出すから埒があかなくて」
「ははは、マリーリのご両親も心配性だからな」
「本当。一体荷車いくつぶんになるんだか……」
「家に入る分だけ持ってきてくれ」
「そうよね。それはちゃんと確認しておく」
沈黙が流れる。
以前だったらこんな沈黙などなんてことなかったのに、今はとても気まずい。
昔の頃はこの沈黙の間どうしていたんだっけ? とも思い出そうにも思い出せず、ただただこの静かな時間を打破する何かを頭の中でぐるぐると必死にマリーリは考えた。
(このままだとジュリアスが帰っちゃう)
ジュリアスは伯爵という称号をもらってから忙しい。
国王に会いに行ったと思えば、ブレアの地に前任の伯爵に会いに行き、鍛錬も欠かさず行い、またマリーリとの婚約のことでマリーリの家に来たりジュリアス自身の実家に行ったりといつ寝ているのか、というくらい多忙だった。
だからこそこうして会える時間は貴重で、今日だってあの嵐の日の後処理でずっと会えずに、あの日以来の逢瀬だというのに。
ガクッ
「……ジュリアス?」
不意に肩にずしんと重みが来たと思えば、肩には綺麗なジュリアスの顔がそこにあった。
えぇ!? と、びっくりして身体を離そうとすると、そのまま身体が沈んでいくジュリアスを慌てて支えると、彼は何も言わずにそのままなすがままになっていた。
「もしかして、寝てる……?」
すぅすぅ、と伏せられた目蓋。
目を閉じていてもわかるほど美しく整った顔。
男なのにズルい、と思ったことも過去にはあるが、それはそれで騎士の時代に苦労したらしいことも知っているのでマリーリはあえて口にはしなかった。
「もう、こんなに疲れているなら来なくてもいいのに……」
そう口にしながらも、やっぱり会えるのは嬉しいわけで。
こうして寝る間も惜しんで自分に会いに来てくれているという事実が、マリーリにとってはとても嬉しかった。
(こんな綺麗な顔をしていてもやっぱり男ね。……重たい)
ずっと支えているのもつらくなって、そっと彼の身体を膝の上に乗せると自然と膝枕の状態になった。
錦糸のようにキラキラと輝く金色の髪が顔にかかるのをそっと払い、そのまま撫でる。
ジュリアスの髪など久しぶりに撫でた気がして、しかもそれがとても心地よくて、マリーリは無心で彼の髪を何度も撫でた。
(ジュリアス、好き……大好き。ありがとう)
愛しい気持ちを抱きながらジュリアスを撫で、そっと彼の頬に口づける。
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※他サイトにも掲載中。