婚約者が親友と浮気したので婚約破棄したら、なぜか幼馴染の騎士からプロポーズされました

鳥柄ささみ

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62 男の嫉妬は見苦しいぞ?

「すまないな、まだ本調子ではないというのに呼び出してしまって」
「いいいいいえ、とんでもないです! もう私はぴんぴんしております!! むしろわざわざ私のためにお時間をお取りくださってありがとうございます!!!」

 マリーリの体調も落ち着いたときの昼下がり。
 突然朝食時に「だいぶ遅くなってしまったが、先日の一件の説明をさせるから」とジュリアスに言われてマリーリが連れて来られたのはギルベルト国王の御前であった。
 まさか国王に会うとは思わず、何も身構えていなかったせいでマリーリは緊張で声も身体も震えていて、「陛下のところに行くなら行くって言ってよ、ジュリアス~!!」とジュリアスを恨むように彼を睨むマリーリ。
 だが、恨めしげな瞳でじっと見つめたはずなのに、当のジュリアスは睨まれてる自覚がないのかニコニコと微笑んでいて、「あれ、なんだかこの怒りが伝わってないぞ」とマリーリはモヤモヤした。

「マリーリ、そんな畏まらなくてもいいぞ。そもそも諸悪の根源はこいつだ」
「ちょ、ジュリアス。陛下になんてこと言うのよ!」
「本当に人聞き悪いこと言うなぁ、ジュリアスは。まぁ、グロウのことに関しては我の責任もあると思うが。本当にマリーリ嬢にはなんと謝ったらよいか」
「いいいいいえ、陛下が謝らなくても!!」

 深々と頭を下げるギルベルト国王に、マリーリは今にも失神してしまいそうなほど動揺していた。
 まさかギルベルト国王自らが自分なんかに頭を下げるなんて思わなかったマリーリはどうしたらいいかわからず、今度は助けを求めるようにジュリアスに顔を向ける。
 すると、「いっそこの頭を踏んでもいいくらいだ」なんて、とんでもないことをぼそっと言うジュリアス。
 さすがに放言が過ぎるだろう、とすかさずマリーリは彼の頭を叩いた。

「こら、なんてことを言うの!」
「俺は今回の件でマリーリを巻き込んでしまったことへの罪悪感と俺とマリーリを巻き込んだあいつへの恨みでいっぱいだからな」

 ジュリアスが恨みがましくギルベルト国王を睨む。
 その横であわあわしているマリーリだが、ギルベルト国王は愉快そうに笑っていた。

「まだ言うか。随分と恨まれたものだ。……まぁ、今回ばかりは我の目測の甘さゆえにマリーリ嬢を危険に晒してしまったからな。その辺りは本当に申し訳なく思っているのだ」

 再び謝ろうとするギルベルト国王の気配を察して、「もう十分謝っていただきましたから大丈夫です!」とマリーリは先手を打つ。

「マリーリ嬢は優しいな。いっそそんな朴念仁ではなく我と結婚するか?」
「へ!?」
「ギル、冗談が過ぎるぞ。今すぐここで叩っ斬ろうか?」
「おぉ、怖い怖い。男の嫉妬は見苦しいぞ?」

 ギルベルト国王の冗談に本気で青筋を立てるジュリアス。
 すかさずジュリアスの苛立ちに気づいてマリーリがぱこんとジュリアスの後頭部を叩くと、「不敬で申し訳ありません」と謝った。

「てか、こんな茶番はいいから早速本題に入ってくれ」
「おぉ、そうだな。実は、今回マリーリ嬢を呼び出したのは今回の件の説明をしなければと思ってな」
「陛下直々にですか!? あ、ありがとうございます……っ!」

 まさかギルベルト国王が今回の件の真相を話してくれるとは思わず、マリーリはまたまた恐縮する。
 すると、「よいよい。あまりそう畏まらないでくれ」とギルベルト国王は朗らかに笑った。

「今回の件は、本来はそれぞれ別件だった案件が色々複雑に絡み合って起こった事件でな。何から話せばよいか……」

 そう言うと、ギルベルト国王は逡巡しているのか顎に手をやりながら、「うぅむ」と唸る。
 それを見てマリーリの傍らにいるジュリアスは「呼び出したならその前に粗方言うこと考えておけよ」とさっきから呪詛のように小さな声でグチグチと悪態をついていて、マリーリがすかさず脇腹を肘で小突いて小言をやめさせた。

「まずはマリーリ嬢の婚約破棄の件から話そうか」
「は、え!? 私の婚約破棄、ですか……?」

 まさか自分の婚約破棄の話を急に振られて慌てるマリーリ。
 なぜその話をされるのかと動揺してると、あまりにもあからさまに動揺したせいか「実はその辺の話も絡んでくるのだ」とギルベルト国王に苦笑される。

(えぇ、私の婚約破棄が関わってるってどういうこと!?)

 今すぐに問い詰めたい気持ちはあるが、さすがに相手は国王陛下なのでマリーリはその気持ちをグッと堪え、ギルベルト国王が話すのを待った。

「今回の件は、キューリス、オルガス公爵、グロウの三名が関わっている事件でな。まずはキューリスのことから話そうか。まぁ、彼女の件に関しては我々ではなく、いち早くジュリアスが気づいたのだが」
「え、ジュリアスが?」

 マリーリがジュリアスの顔を見ればなぜか複雑そうな表情をしていた。

「もう今更だからいいだろう?」

 諭すように話すギルベルト国王に促されて、ジュリアスはゆっくりと口を開いた。

「最初に違和感を覚えたのはキューリス、ではなくてブランにだったのだが」
「ブランに……?」
「あぁ。ブランはどちらかというと臆病な性格なはずなのにマリーリに無体を働いたというのがどうにもおかしいと思ったんだ」
「え、でもブランとジュリアスって知り合いじゃ……何でブランが臆病だって知ってるの?」
「そこは気にするな」

 気にするな、と言われても気になるのだが、今聞いても答えてくれないだろうし話も先に進まないだろうと、聞きたい気持ちをマリーリはグッと抑えた。

「とにかく、婚約破棄の件でグシュダン伯爵からもこってりと絞られていたはずの臆病なブランがそんな大それたことをするというのが不思議だったんだ。それで内々に調べていたんだが、どうにもブランはキューリスと接触後に性格が変わるということに気づいたんだ」
「性格が、変わる……?」
「あぁ。それでさらに調べたところ、キューリスの持っていた『魔女の秘薬』という薬が原因らしいということがわかった」
「魔女の、秘薬……」
「あくまで通称名だが、ようはこれは悪い作用をする薬物でな。国でも取り締まっていたのだが、闇市場でまだ取引されていたらしいのをキューリスが入手していたようなのだ」

 闇市場はギルベルト国王が即位してすぐに一掃したと聞いていたが、まだそんなものが残っていたのかと驚くマリーリ。
 そして、そんなものが取引され、そこにキューリスが出入りしていたというのも驚きだった。

「その『魔女の秘薬』は人それぞれ効果が違うそうなのだが、ほとんどの人が使用者の言うことに従うらしい」
「言うことに従う……?」
「つまり、キューリスによって『魔女の秘薬』を使われた者は彼女の言いなりになってしまうということだ」
「そんな……っ」

(つまり、キューリスはその薬を使って様々な人を操っていたということ……?)
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