婚約破棄された私を拾ったのは、冷徹領主様でした。——不器用なのに過保護で、どうしてそんなに愛してくるんですか!?

鷹 綾

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第16話 溺愛のはじまりと、未来への招待

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第16話 溺愛のはじまりと、未来への招待

 フローレス家とヴァレンシア公爵家が
 正式に婚約を結んだ翌日――。

 王都の空気は騒然としていた。

 なにせ、王家の崩壊寸前の騒動のあと、
 “公爵と元婚約令嬢の劇的な結びつき”
 という物語じみた話が広まったのだ。

「アリアーナ様! 本当におめでとうございます!」

「お嬢様、昨日の公爵様の……あの姿……
 わたくし、泣いてしまいましたわ……!」

「お嬢様の未来はもう安泰です!」

 侍女たちが朝から大騒ぎしている。

「ちょ、ちょっと皆さま……」
「わ、私……甘やかされすぎでは……?」

 しかし侍女は誇らしげだ。

「アリアーナ様は公爵様の婚約者ですもの!
 誇りと自信を持っていただきたいです!」

 ……どうやら、私が思っている以上に
 周囲は喜んでくれているらしい。


---

◆◆◆

◆その時、門前に黒い馬車が停まる

「アリアーナ嬢。
 ……本日も、会いに来た」

(……え、今日も!?)

 昨日あれほどの大イベントがあったのに、
 もう来てしまうのはどうなのだろう。

「公爵様、こんなに頻繁に来られて……お忙しいのでは?」

「忙しいが……君を優先している」

 即答だった。

(ひえ……!)

 公爵はほんの少しだけ微笑み、
 私に手を差し出す。

「散歩に行けるか?
 正式婚約後の初日だ。
 君と過ごせる時間を……大切にしたい」

「……はい」

 胸がじわじわと熱くなる。


---

◆◆◆

◆庭園のベンチにて

「昨日の……返事。
 まだ、胸が高鳴っている」

「わ、わたしもです……」

「アリアーナ。
 もし不安があれば、遠慮なく言ってくれ。
 君の心を守るのが私の役目だ」

(心が溶ける……!)

 公爵はゆっくりと言葉を続けた。

「……それと、近いうちに“ある場所”へ来てほしい」

「ある場所……?」

「ヴァレンシア領だ。
 君に、私の領地を見てほしい」

 胸が跳ねる。

「公爵様の……領地……?」

「そうだ。
 私の大切なものを、君に見せたい」

(待って……それ……
 完全に“未来の妻”として扱われてません?)

 耳まで赤くなる。

「もちろん、急がない。
 君の準備ができたらで構わない」

「……行きたいです。
 公爵様のお気持ちを……もっと知りたいので……」

 公爵は一瞬だけ息を呑んだようだった。

「……ありがとう。
 その言葉だけで十分だ」


---

◆◆◆

◆王宮・離宮

 一方その頃。

「殿下、母后様よりお手紙が……」

「……要らない。
 私は……私は……アリアーナを……」

 離宮の部屋で、殿下は呟き続けていた。

 もはや王族として表舞台に立つことはない。

「母上……どうして……
 どうして……アリアーナは公爵になど……」

 誰も答えてはくれない。

 殿下の声だけが空しく響く。

(……殿下は、もう完全に終わり……)


---

◆◆◆

◆フローレス邸に戻って

 屋敷に戻ると、執事が深刻な表情で近づいてきた。

「お嬢様、少々……気になる報せが」

「気になる……?」

「婚約発表と同時に、
 “公爵家を妬む一部の勢力”が
 動き出しているようでして……」

「……!」

「もちろん公爵家は強固ですが、
 姫様――アリアーナ様にも万全の警備を」

(……婚約したことで、わたし側にも“敵”が……?)

 公爵の領地訪問はとても嬉しい。

 でも、それと同時に、
 ただ甘いだけの未来ではないのだと気づく。

「アリアーナ」

 公爵が静かに私へ歩み寄る。

「今後は、君の周囲の警備を増やす。
 ……必ず守る。
 どんな影が忍び寄ろうとも」

「……公爵様……」

 胸が温かく、不安もすぐに溶けていく。

 この人がそばにいるのなら――

(わたしは、きっと乗り越えられる)


---
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