婚約破棄された悪役令嬢、パンがなかったので貴族から菓子を奪って民衆に食べさせますわ! 馬鹿な貴族どもは、クラッカーでもかじってなさい 1/4

鷹 綾

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第10話:同志の誕生

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第10話:同志の誕生

王都の郊外、フォーマルハウト家の製粉場は、夜の闇に溶け込むように静まり返っていた。  
アルキオーネは、黒いマントを羽織り、クラリスと私兵数名を伴って製粉場に到着した。  
ここは、強奪した軟質小麦をクラッカーと乾パンに加工する秘密の拠点だった。  
工房内では、職人たちが夜通し作業を続け、  
甘い香りが漂っていた。

アルキオーネは、製粉場の奥にある小さな部屋に入った。  
そこに、第五王子レオニスが待っていた。  
彼は、簡素な服を着て、  
王宮の威厳を隠し、ただの青年のように立っていた。

「お待ちしておりました、アルキオーネ様」

レオニスは、深く頭を下げた。

アルキオーネは、ゆったりと椅子に座り、  
クラリスに紅茶を淹れさせた。  
彼女自身も、甘味を断ち続けているため、  
紅茶は無糖だった。

「王子。  
今日は、単なる挨拶ではないのでしょう?」

レオニスは、静かに頷いた。

「はい。  
私は、改革派の貴族や軍部の将校に声をかけました。  
王宮内部から、動き始めています」

アルキオーネは、紅茶を一口啜った。

「ふふ……兄上の目を盗んで、よくぞ動けましたわね。  
第一王子派は、私を『馬鹿な女』と嘲笑っていますが、  
その嘲笑が、どれだけ脆いものかを、  
すぐに思い知ることになりますわ」

レオニスは、真剣な瞳で言った。

「アルキオーネ様の行動を見て、  
私は確信しました。  
この国を変えるには、飢えを知る必要があります。  
貴族たちは、菓子が高額で自分たちのものだと思い込んでいる。  
しかし、あなたはそれを奪い、民に与え、  
飢えの意味を教えようとしている」

アルキオーネは、静かに微笑んだ。

「そうですわ。  
貴族たちは、菓子が高級品だからこそ価値があると思い込んでいる。  
高額だからこそ、自分たちの贅沢だと。  
けれど、私は証明しますわ。  
菓子は、民の命を繋ぐものにもなり得ることを」

レオニスは、ゆっくりと言った。

「私も、その証明に加わりたい。  
王宮内部で、改革派を増やしています。  
軍部の将校にも、声をかけました。  
甘味断絶令で貴族たちが絶望している今が、  
動くチャンスです」

アルキオーネは、紅茶のカップを置いた。

「王子。  
あなたは、王族ですわ。  
私のような『悪役令嬢』と手を組めば、  
王位継承権を失うかもしれません」

レオニスは、静かに首を振った。

「王位など、どうでもいい。  
私は、兄たちの振る舞いを恥じている。  
民を飢えさせ、自分たちは贅沢を貪る……  
そんな国を変えたいのです」

アルキオーネは、静かに彼を見つめた。

「……生意気なことを」

そう言いながらも、彼女の瞳には、  
信頼の光が宿っていた。

「では、王子。  
条件を一つ」

レオニスは、身を乗り出した。

「なんなりと」

「私のクラッカーを、“贅沢”とは呼ばせないでくださいな」

レオニスは、静かに頷いた。

「はい。――これは、命の味です」

アルキオーネは、クラッカーを一枚、レオニスに手渡した。  
彼は、ゆっくりと受け取り、一口かじった。

「……あたたかい。  
民衆の飢えを知る味です」

アルキオーネは、優しく微笑んだ。

「貴族たちは、菓子が高級品だと思い込んでいる。  
けれど、私たちは証明しますわ。  
菓子は、民の希望になることを」

レオニスは、深く頭を下げた。

「ありがとうございます。  
私も、王宮内部から動きます。  
改革派の貴族を増やし、軍部を味方につけます」

アルキオーネは、地図を広げた。

「では、次は王宮の甘味断絶令を逆手に取りますわ。  
貴族たちの絶望を、最大限に利用する。  
飢餓刑の準備を進めましょう」

レオニスは、静かに頷いた。

「飢餓刑……  
1日四分の一のクラッカーだけを与え、  
公開収容で民衆の前で飢えを味わわせる」

アルキオーネは、冷たく微笑んだ。

「そうですわ。  
命は取らない。  
しかし、心と胃を鍛え直す刑です。  
貴族たちの脂肪を削ぎ、舌に塩と苦味を叩き込む。  
それが、飢餓刑の真意ですわ」

レオニスは、静かに言った。

「わかりました。  
私も、その準備を手伝います。  
王宮内部から、情報を集めます」

アルキオーネは、紅茶を一口啜った。

「馬鹿な貴族どもは、クラッカーでもかじってなさい。  
1/4しかあげませんけど、ダイエットにちょうどいいですわ」

レオニスは、静かに笑った。

「その言葉、気に入りました」

二人は、製粉場の地下室で、  
静かに握手を交わした。  
同志の誕生だった。

外では、民衆の列が続いていた。  
クラッカーを受け取った人々が、  
「クラッカー様!」と呼びながら、  
希望を語り合っていた。

王宮では、セドリックが苛立った声を上げていた。

「第五王子が、あの女と接触しただと?  
馬鹿な……  
あの末弟が、何を企んでいる」

貴族たちは、顔を青ざめさせた。

「殿下……このままでは、  
改革派が動き出すかもしれません」

セドリックは、拳を握った。

「反逆者だ。  
あの女とレオニスを、すぐに捕らえろ!」

しかし、アルキオーネとレオニスの逆襲は、  
静かに、しかし確実に広がり始めていた。

製粉場の夜は、  
希望と決意で満ちていた。

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