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第40話「真実の幸せへ」
しおりを挟む晴れ渡る青空の下――
アイザック伯爵家の屋敷には、領内中の人々が集まり、華やかな飾りと音楽が広がっていた。
今日は、リオネッタとクリスの結婚式。
かつて「完璧すぎるから」と婚約破棄された令嬢が、
いまや誰よりも愛され、祝福されている。
「ほんとにお綺麗……」
「まさかあのリオネッタ様のドレス姿を見られるなんて!」
「白い結婚とか言ってたのに、めちゃくちゃ甘いじゃないか!」
民たちは笑い、拍手し、幸せそうに語り合った。
* * *
「緊張してるかい?」
祭壇の前、手を取り合って立つクリスが、そっと囁いた。
「少しだけ。でも……あなたが隣にいてくださるから、大丈夫です」
リオネッタは、いつもの優雅な笑顔で応えた。
「それに、これ以上ない幸せですもの。
今の私は――ただの“完璧な令嬢”ではなく、
自分の意思で、未来を選んだ一人の女性です」
* * *
神官による宣言のあと、
式場に拍手と歓声が湧き上がる。
「――では、新郎新婦。口づけを」
「お、おい……本当にやるのか?」
「今さら照れてどうしますの?」
「う……うん」
ふたりは、軽く唇を重ね――
「きゃああああああああああ!!!!」
「ミーナ、落ち着いて! 鼻血が出てる!!」
「尊すぎて出血しましたああああああ!!」
* * *
披露宴では、リリィが花束を受け取って大慌て。
「ま、まさか次は私が……!?」
「ええ。しっかり生きて、ちゃんと愛される人になってくださいね」
リオネッタは微笑んで、彼女の背をそっと押した。
* * *
夜。
賑やかな宴が終わり、月の光だけが降り注ぐ寝室で――
リオネッタは、ドレスを脱ぎながらふと思った。
(あの日、婚約破棄を言い渡されたとき……)
(すべてが終わったように思えたけれど――)
隣では、スーツを脱ぎかけたクリスが、くしゃっと笑いながら声をかけてきた。
「なあ、白い結婚、って言ってたのは君だったっけ?」
「……今さら、何を?」
「いや、今日は……もう、真っ赤な結婚だったなって」
「……っ、バカ」
くすくすと笑いながら、リオネッタはふと、心の中で呟く。
(――ああ、婚約破棄されて……本当に良かった)
---
エピローグ:リオネッタの場合
・元王太子:流刑地ルフォードにて自給自足。農業に目覚める。
・リオネッタ:伯爵夫人となり、教育・商業改革をさらに推進。愛されすぎて困る日々。
・クリス:溺愛モード全開で、政務そっちのけ。家臣がため息をつく。
・ミーナ:今日も元気に愛の観察日記をつける。『伯爵家婚愛録』は執筆中らしい。
---
完
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