12 / 32
12話 貧しくなる街
しおりを挟む
12話 貧しくなる街
その朝、ルヴェリアはいつもより早く屋敷を出た。
王宮へ向かう前に、もう一度だけ自分の目で市場を見ておきたかったのだ。記録の数字は確かに真実を語る。けれど、数字だけでは見えないものもある。
人の顔だ。
困窮は、帳簿の上ではただの増減に見える。だが実際には、買うのを諦めた手つきや、値札を見た時の沈黙や、いつもより少ない荷物の重さになって表れる。
王都の朝は冷えていた。
春が来たとはいえ、風にはまだ冬の名残がある。そんな空気の中、市場の通りには重い色が漂っていた。
活気がないわけではない。
むしろ人は多い。
だがそれは、賑わいというより焦りだった。
「今日は卵がもう上がったの?」
「朝のうちに買っておかないと昼にはなくなるわよ」
「昨日よりまた高いじゃないか……」
声はあちこちから聞こえる。
ひそひそとしたものもあれば、怒気を含んだものもある。
ルヴェリアは護衛を離しすぎない程度に距離を取り、エミリアと並んで市場の中へ入った。
まず足を止めたのは、いつも人の多いパン屋の前だった。
数日前にも見かけた店だ。今日も列ができている。だが前よりも空気が悪い。並んでいる客の表情に余裕がない。
焼き上がった丸パンが籠に運ばれるたび、視線が一斉にそこへ集まる。
まるで奪い合いの一歩手前だ。
「一人二つまでです!」
店主が大声で言っていた。
「昨日もそう言っただろう! 全員に行き渡るようにしないと困るんだ!」
列の中ほどで、中年の女がかすれた声を上げる。
「二つじゃ足りないのよ。うちは子どもが三人いるんだから」
「分かってる! でも小麦の値が上がってるんだ、これ以上焼いてもこっちが赤字だ!」
ルヴェリアはそのやり取りを黙って見つめた。
ただ価格が上がっているだけではない。
量まで制限が始まっている。
それが日々の食卓に直結する品で起きているのが、何より重かった。
「お嬢様」
エミリアが小声で言う。
「あちらを」
視線を向けると、列から少し離れた場所で、若い母親らしい女が小さな子どもを抱いて立っていた。
子どもは眠そうに母親の肩へ顔を埋めている。
女はパン屋の値札を見て、それから財布の中身を確かめ、何度も指で数えていた。
結局、列には並ばないまま立ち尽くしている。
ルヴェリアはゆっくり近づいた。
「買わないの?」
驚いた女が振り返り、ルヴェリアの身なりを見て慌てて頭を下げる。
「す、すみません……」
「謝らなくていいわ。足りないの?」
女はしばらく口をつぐんだが、やがて観念したように小さく答えた。
「昨日の値段なら買えたんです。でも、今日は……あと少し足りなくて」
抱かれた子どもがうとうとしながら、母親の服を掴んでいる。
その小さな指を見た瞬間、ルヴェリアの胸の奥が重く沈んだ。
ただの値上がりではない。
昨日まで買えたものが、今日には買えない。
それは生活の線が一段、確かに削られたということだ。
ルヴェリアはエミリアへ視線を送り、小さく頷く。
エミリアは何も聞かずに財布を取り出し、足りない分を女の手にそっと握らせた。
「これは」
女が目を見開く。
「返さなくていいわ」
ルヴェリアは静かに言う。
「ただし、今日だけの話ではないでしょうね」
女は唇を噛み、俯いた。
「……油も、石鹸も、少しずつ高くなってて。主人の稼ぎは変わらないのに、何を削ればいいのか分からなくて」
その言葉に嘘はなかった。
疲れ切った声だった。
感謝より先に、どうやって明日をやりくりするかで頭がいっぱいなのだろう。
ルヴェリアはそれ以上何も言わず、その場を離れた。
少し歩くと、今度は布商の前で老婦人が店主と押し問答していた。
「前はこの値段で二反は買えたよ」
「分かってます、奥様。でも仕入れが……」
「下着用の布まで上がるなんて、どういうことだい」
「私だって好きで上げてるんじゃないんですよ!」
店主の声にも苛立ちと疲労が混ざっていた。
その苛立ちは客に向けられているようで、実際にはもっと別の場所へ向けられている。
説明のつかない値上がり。
得体の知れない“景気の良さ”。
真面目に商売する者ほど、それに振り回されている。
ルヴェリアは店の奥に並ぶ粗布を見た。
本来なら贅沢と無縁の、生活のための布だ。
それすら高くなっている。
つまり、偽金の毒はもう完全に庶民の領域まで降りてきている。
「お嬢様」
エミリアの声がさらに低くなる。
「向こうをご覧ください」
市場の端、小さな油屋の前で、男が店主へ詰め寄っていた。
「昨日と同じ量を頼んだだけだぞ!」
「だから、その値で出せないって言ってるんだ!」
「うちは飯屋なんだよ! 油がなきゃ商売にならない!」
「こっちだって回ってこないんだ、どうしろって言う!」
怒鳴り声。
油屋の棚は半分ほど空いている。
食用油もまた、生活と商売の両方を支える品だ。そこが詰まれば、食堂の値段も上がり、街の飯そのものが苦しくなる。
ルヴェリアは足を止めたまま、ゆっくり息を吐いた。
ここまで来ると、もはや王都全体がじわじわ締め上げられているようだった。
一部の者だけが軽い金を湯水のように使う。
その余波で、本当に必要なものを買う側が押し出される。
王都の中心で、誰かが見せびらかしのために金を撒くたびに、その陰では今日の食事を削られる者が出る。
あまりにも胸が悪い仕組みだった。
「……オルフィナ様は」
エミリアが言いかけて、口を閉ざした。
ルヴェリアは苦く笑う。
「ええ。たぶん、ここまで繋がっているとは思っていないでしょうね」
「知ればやめるでしょうか」
その問いに、ルヴェリアは少し考えた。
それから首を横に振る。
「いいえ」
「……」
「知っても、自分には関係ないと思うだけよ。あの子はそういう子だもの」
言葉にすると、思った以上に冷たく響いた。
けれど、事実だった。
幼い頃からそうだった。
自分が欲しいものが先にあり、それを手に入れた後で誰かが困るとしても、痛みが想像の中で止まる。
“かわいそう”とは言える。
でも、その次の手は止まらない。
今ならなおさらだ。
ゼルカインに愛されていると信じ、財に酔い、自分が勝者だと思っている今のオルフィナが、パンを買えない母親の話を聞いて手を止めるとは思えなかった。
市場をさらに進むと、小さな石鹸店の前に人だかりができていた。
どうやら店主が、値上げを告げたところらしい。
「汚れ物も洗えないじゃないか」
「前の倍って何だよ!」
「そんなに払えるわけないだろ!」
石鹸は贅沢品ではない。
洗濯し、体を洗い、生活を清潔に保つためのものだ。
その価格まで跳ね上がれば、最初に削られるのは衛生だ。貧しい者から、少しずつ健康を失っていく。
ルヴェリアは店先の荒れた声を聞きながら、静かに拳を握った。
偽金がただ経済を乱しているだけではないことが、これでよく分かる。
これは暮らしを傷つける。
人の dignity を削る。
数字にすれば物価上昇かもしれない。
けれど現実には、体を洗う回数、食べる量、灯りをともす時間、そういう小さな生活の輪郭が失われていくのだ。
「お嬢様、そろそろお時間が」
王宮への約束を思い出し、エミリアが控えめに告げる。
ルヴェリアは一度、市場全体を振り返った。
荷車の音。
値札を見て沈黙する人。
足早に通り過ぎる者。
怒鳴る店主。
子を抱く母親。
そのどれもが、今朝の王都の真実だった。
華やかな夜会も、きらびやかな宝石も、この光景の前ではただの悪趣味にしか見えない。
ルヴェリアは低く言った。
「これで十分だわ」
「はい」
「もう、単なる“気になること”では済まない」
彼女はそのまま馬車へ向かった。
乗り込んでからも、しばらく窓の外から目を離せなかった。
王都は表向き、まだ普通の顔をしている。
けれど内部では、見えにくい毒が確実に回っている。
その毒の起点に、婚約者を奪った義妹と、その婚約者の家がいるかもしれない。
そこまで来ると、もはや個人的な感情だけでは片づけられない。
これは止めなければならないものだ。
王宮へ向かう石畳の道で、ルヴェリアはようやく視線を前へ戻した。
「エミリア」
「はい」
「今日、殿下には市場で見たことも全部話すわ」
「はい」
「数字だけではなく、人の顔も」
エミリアは静かに頷いた。
ルヴェリアは膝の上で手を組む。
婚約を奪われた時、胸に残ったのは悔しさだった。
けれど今、そこにあるのはもっと冷たく、もっと強いものだった。
怒りだ。
ただし自分に向けられた裏切りへの怒りではない。
見せびらかしのために撒かれた金が、今日のパンを奪うことへの怒り。
誰かの虚栄が、別の誰かの生活を削っていることへの怒り。
その感情は、不思議なほどルヴェリアをまっすぐにした。
泣いている暇はない。
痛みに沈んでいる暇もない。
あまりにも不愉快で、あまりにも許しがたいからこそ、彼女はもう前へ進くしかなかった。
その朝、ルヴェリアはいつもより早く屋敷を出た。
王宮へ向かう前に、もう一度だけ自分の目で市場を見ておきたかったのだ。記録の数字は確かに真実を語る。けれど、数字だけでは見えないものもある。
人の顔だ。
困窮は、帳簿の上ではただの増減に見える。だが実際には、買うのを諦めた手つきや、値札を見た時の沈黙や、いつもより少ない荷物の重さになって表れる。
王都の朝は冷えていた。
春が来たとはいえ、風にはまだ冬の名残がある。そんな空気の中、市場の通りには重い色が漂っていた。
活気がないわけではない。
むしろ人は多い。
だがそれは、賑わいというより焦りだった。
「今日は卵がもう上がったの?」
「朝のうちに買っておかないと昼にはなくなるわよ」
「昨日よりまた高いじゃないか……」
声はあちこちから聞こえる。
ひそひそとしたものもあれば、怒気を含んだものもある。
ルヴェリアは護衛を離しすぎない程度に距離を取り、エミリアと並んで市場の中へ入った。
まず足を止めたのは、いつも人の多いパン屋の前だった。
数日前にも見かけた店だ。今日も列ができている。だが前よりも空気が悪い。並んでいる客の表情に余裕がない。
焼き上がった丸パンが籠に運ばれるたび、視線が一斉にそこへ集まる。
まるで奪い合いの一歩手前だ。
「一人二つまでです!」
店主が大声で言っていた。
「昨日もそう言っただろう! 全員に行き渡るようにしないと困るんだ!」
列の中ほどで、中年の女がかすれた声を上げる。
「二つじゃ足りないのよ。うちは子どもが三人いるんだから」
「分かってる! でも小麦の値が上がってるんだ、これ以上焼いてもこっちが赤字だ!」
ルヴェリアはそのやり取りを黙って見つめた。
ただ価格が上がっているだけではない。
量まで制限が始まっている。
それが日々の食卓に直結する品で起きているのが、何より重かった。
「お嬢様」
エミリアが小声で言う。
「あちらを」
視線を向けると、列から少し離れた場所で、若い母親らしい女が小さな子どもを抱いて立っていた。
子どもは眠そうに母親の肩へ顔を埋めている。
女はパン屋の値札を見て、それから財布の中身を確かめ、何度も指で数えていた。
結局、列には並ばないまま立ち尽くしている。
ルヴェリアはゆっくり近づいた。
「買わないの?」
驚いた女が振り返り、ルヴェリアの身なりを見て慌てて頭を下げる。
「す、すみません……」
「謝らなくていいわ。足りないの?」
女はしばらく口をつぐんだが、やがて観念したように小さく答えた。
「昨日の値段なら買えたんです。でも、今日は……あと少し足りなくて」
抱かれた子どもがうとうとしながら、母親の服を掴んでいる。
その小さな指を見た瞬間、ルヴェリアの胸の奥が重く沈んだ。
ただの値上がりではない。
昨日まで買えたものが、今日には買えない。
それは生活の線が一段、確かに削られたということだ。
ルヴェリアはエミリアへ視線を送り、小さく頷く。
エミリアは何も聞かずに財布を取り出し、足りない分を女の手にそっと握らせた。
「これは」
女が目を見開く。
「返さなくていいわ」
ルヴェリアは静かに言う。
「ただし、今日だけの話ではないでしょうね」
女は唇を噛み、俯いた。
「……油も、石鹸も、少しずつ高くなってて。主人の稼ぎは変わらないのに、何を削ればいいのか分からなくて」
その言葉に嘘はなかった。
疲れ切った声だった。
感謝より先に、どうやって明日をやりくりするかで頭がいっぱいなのだろう。
ルヴェリアはそれ以上何も言わず、その場を離れた。
少し歩くと、今度は布商の前で老婦人が店主と押し問答していた。
「前はこの値段で二反は買えたよ」
「分かってます、奥様。でも仕入れが……」
「下着用の布まで上がるなんて、どういうことだい」
「私だって好きで上げてるんじゃないんですよ!」
店主の声にも苛立ちと疲労が混ざっていた。
その苛立ちは客に向けられているようで、実際にはもっと別の場所へ向けられている。
説明のつかない値上がり。
得体の知れない“景気の良さ”。
真面目に商売する者ほど、それに振り回されている。
ルヴェリアは店の奥に並ぶ粗布を見た。
本来なら贅沢と無縁の、生活のための布だ。
それすら高くなっている。
つまり、偽金の毒はもう完全に庶民の領域まで降りてきている。
「お嬢様」
エミリアの声がさらに低くなる。
「向こうをご覧ください」
市場の端、小さな油屋の前で、男が店主へ詰め寄っていた。
「昨日と同じ量を頼んだだけだぞ!」
「だから、その値で出せないって言ってるんだ!」
「うちは飯屋なんだよ! 油がなきゃ商売にならない!」
「こっちだって回ってこないんだ、どうしろって言う!」
怒鳴り声。
油屋の棚は半分ほど空いている。
食用油もまた、生活と商売の両方を支える品だ。そこが詰まれば、食堂の値段も上がり、街の飯そのものが苦しくなる。
ルヴェリアは足を止めたまま、ゆっくり息を吐いた。
ここまで来ると、もはや王都全体がじわじわ締め上げられているようだった。
一部の者だけが軽い金を湯水のように使う。
その余波で、本当に必要なものを買う側が押し出される。
王都の中心で、誰かが見せびらかしのために金を撒くたびに、その陰では今日の食事を削られる者が出る。
あまりにも胸が悪い仕組みだった。
「……オルフィナ様は」
エミリアが言いかけて、口を閉ざした。
ルヴェリアは苦く笑う。
「ええ。たぶん、ここまで繋がっているとは思っていないでしょうね」
「知ればやめるでしょうか」
その問いに、ルヴェリアは少し考えた。
それから首を横に振る。
「いいえ」
「……」
「知っても、自分には関係ないと思うだけよ。あの子はそういう子だもの」
言葉にすると、思った以上に冷たく響いた。
けれど、事実だった。
幼い頃からそうだった。
自分が欲しいものが先にあり、それを手に入れた後で誰かが困るとしても、痛みが想像の中で止まる。
“かわいそう”とは言える。
でも、その次の手は止まらない。
今ならなおさらだ。
ゼルカインに愛されていると信じ、財に酔い、自分が勝者だと思っている今のオルフィナが、パンを買えない母親の話を聞いて手を止めるとは思えなかった。
市場をさらに進むと、小さな石鹸店の前に人だかりができていた。
どうやら店主が、値上げを告げたところらしい。
「汚れ物も洗えないじゃないか」
「前の倍って何だよ!」
「そんなに払えるわけないだろ!」
石鹸は贅沢品ではない。
洗濯し、体を洗い、生活を清潔に保つためのものだ。
その価格まで跳ね上がれば、最初に削られるのは衛生だ。貧しい者から、少しずつ健康を失っていく。
ルヴェリアは店先の荒れた声を聞きながら、静かに拳を握った。
偽金がただ経済を乱しているだけではないことが、これでよく分かる。
これは暮らしを傷つける。
人の dignity を削る。
数字にすれば物価上昇かもしれない。
けれど現実には、体を洗う回数、食べる量、灯りをともす時間、そういう小さな生活の輪郭が失われていくのだ。
「お嬢様、そろそろお時間が」
王宮への約束を思い出し、エミリアが控えめに告げる。
ルヴェリアは一度、市場全体を振り返った。
荷車の音。
値札を見て沈黙する人。
足早に通り過ぎる者。
怒鳴る店主。
子を抱く母親。
そのどれもが、今朝の王都の真実だった。
華やかな夜会も、きらびやかな宝石も、この光景の前ではただの悪趣味にしか見えない。
ルヴェリアは低く言った。
「これで十分だわ」
「はい」
「もう、単なる“気になること”では済まない」
彼女はそのまま馬車へ向かった。
乗り込んでからも、しばらく窓の外から目を離せなかった。
王都は表向き、まだ普通の顔をしている。
けれど内部では、見えにくい毒が確実に回っている。
その毒の起点に、婚約者を奪った義妹と、その婚約者の家がいるかもしれない。
そこまで来ると、もはや個人的な感情だけでは片づけられない。
これは止めなければならないものだ。
王宮へ向かう石畳の道で、ルヴェリアはようやく視線を前へ戻した。
「エミリア」
「はい」
「今日、殿下には市場で見たことも全部話すわ」
「はい」
「数字だけではなく、人の顔も」
エミリアは静かに頷いた。
ルヴェリアは膝の上で手を組む。
婚約を奪われた時、胸に残ったのは悔しさだった。
けれど今、そこにあるのはもっと冷たく、もっと強いものだった。
怒りだ。
ただし自分に向けられた裏切りへの怒りではない。
見せびらかしのために撒かれた金が、今日のパンを奪うことへの怒り。
誰かの虚栄が、別の誰かの生活を削っていることへの怒り。
その感情は、不思議なほどルヴェリアをまっすぐにした。
泣いている暇はない。
痛みに沈んでいる暇もない。
あまりにも不愉快で、あまりにも許しがたいからこそ、彼女はもう前へ進くしかなかった。
5
あなたにおすすめの小説
報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜
矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』
彼はいつだって誠実な婚約者だった。
嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。
『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』
『……分かりました、ロイド様』
私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。
結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。
なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。
※この作品の設定は架空のものです。
※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません
すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」
他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。
今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。
「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」
貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。
王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。
あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!
〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」
その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。
「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
私のことを愛していなかった貴方へ
矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。
でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。
でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。
だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。
夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。
*設定はゆるいです。
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる