公爵令嬢、学校をつくる。 ―学院のない世界に学院を作りますわ!―

鷹 綾

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第16話 社会的承認

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第16話 社会的承認

 学院が始まって一年。

 数字は揃い、成果も出た。

 だが制度は、成果だけでは完成しない。

 社会がそれを認めるかどうか。

 それが次の段階だった。

 ある朝、王宮から正式な召喚状が届いた。

 文面は簡潔。

 学院制度について、報告を求む。

 私は封を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。

 ついに来た。

「恐れるか」

 父が問う。

「いいえ」

 私は即答する。

「ですが、軽視はいたしません」

 王宮の会議室。

 高位貴族と王宮官僚が並ぶ。

 視線は一様にこちらへ向けられている。

 私は父の一歩後ろに立つ。

 だが、説明は私が行う。

「学院は、公爵家敷地内における教育試行でございます」

 声は落ち着いている。

「参加家は十六。講師は七名」

 資料を提示する。

 成績推移。

 費用比較。

 仕官実績。

「効率の向上と、下位層の底上げが確認されております」

 ざわめき。

 ある老伯爵が口を開く。

「優秀な者のみを集めているのではないか」

「いいえ」

 私ははっきりと否定する。

「選抜ではなく、機会の均等を重視しております」

「均等、か」

 別の官僚が眉をひそめる。

「均等は理想論ではないか」

「理想を支えるのは数字です」

 私は資料の一部を指す。

「成績下位層の平均上昇率をご覧ください」

 沈黙。

 反論はない。

「学院出身者の評価は、仕官先からも届いております」

 私は控えめに言う。

「ですが、優遇は求めておりません」

 この一言が重要だ。

 特権を求めない。

 制度としての認知のみ。

 しばしの協議の後、結論が示された。

「公爵家による教育試行は、現段階において問題なしと認める」

 正式な国家機関ではない。

 だが、否定されなかった。

 それが大きい。

 会議後、王太子が私に近づく。

「見事だった」

「数字が語ってくれました」

「君は常に数字だな」

「感情は揺れますので」

 殿下は小さく笑う。

「だが、感情もまた政治だ」

「承知しております」

 私は一礼する。

 敵ではない。

 だが、味方とも限らない。

 屋敷へ戻る馬車の中、父が静かに言った。

「これで社会は否定できぬ」

「はい」

「だが、期待も増える」

「承知しています」

 学院は、もはや公爵家の試みだけではない。

 社会が存在を認めた。

 それは重い。

 夜、広間に立つ。

 灯りが揺れる。

 机と椅子。

 講師の声。

 生徒の議論。

 この空間は、もう仮の場ではない。

 社会の一部になった。

 私は静かに思う。

 学院制度は誕生し、定着し、承認された。

 だが、ここは到達点ではない。

 次の構想が、胸の奥で静かに芽吹いている。

 令嬢たちの教育。

 だが、まだ言わない。

 段階を踏む。

 底上げの基盤はできた。

 今は揺らさない。

 未来はまだ分からない。

 だが今日、学院は社会に認められた。

 それだけで十分だ。

 私は窓の外の夜空を見上げる。

 星は静かに輝いている。

 その光のように、制度も静かに根を張り続ける。

 私もまた、その途中にいる。
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