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27話 成果
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27話 成果
最初の共通講義から三か月。
変化は、もはや錯覚ではなかった。
女子教養課程の令嬢たちが、明確な結果を出し始めたのである。
きっかけは、王都商会連合が主催した模擬契約演習だった。
本来は男子学院の上位生徒向けに設けられた実践課題。
商会の若手と契約条件を交渉し、条文を整え、双方が納得できる形にまとめるというもの。
今年から、共通講義の影響で女子にも参加資格が与えられた。
反対はあった。
だが「共通講義を受けている以上、基礎知識は同等」という理屈を誰も否定できなかった。
私は講堂の後方から見守っていた。
男子生徒の代表が先に交渉に立つ。
理路整然とした提案。
堂々たる態度。
さすがだ、と周囲が頷く。
続いて女子代表。
彼女は静かに契約書をめくり、条文の一文を指摘した。
「こちらの利率設定ですが、変動幅が不明瞭です。条件を明文化していただけますか」
商会側の若手が一瞬言葉に詰まる。
男子生徒たちがざわめく。
女子代表は続けた。
「家としては、曖昧な条文は将来の紛争要因になります」
会場が静まり返る。
講師が小さく頷いた。
議論はその後も続き、最終的に女子代表の案が採用された。
点数評価。
結果は女子側の勝利。
拍手は控えめだった。
だが確実に空気が変わった。
男子が敗北を認める視線。
女子が誇りを噛み締める姿。
私は静かに息を吐く。
成果が出た。
それが何よりの説得材料になる。
翌日、保守派の一部から皮肉が届いた。
「たまたまだろう」
「一例に過ぎぬ」
だが私は知っている。
たまたまは、続けば実力と呼ばれる。
女子教養課程では、算術の成績も上がっていた。
初期は平均点が男子より二割低かった。
今はほぼ並んでいる。
歴史では女子の平均が上回る分野も出始めた。
数字は嘘をつかない。
私は統計表を父の机に置く。
「結果です」
父は静かに目を通す。
「思ったより早いな」
「競争が効いています」
「男子の側は」
「刺激を受けています」
父は小さく笑う。
「全体の底が上がっているか」
「はい」
それが目的。
選抜ではない。
底上げ。
女子が伸びれば男子も伸びる。
男子が努力すれば女子も負けない。
相乗効果。
夜、女子教養課程の教室。
令嬢たちが自発的に議論している。
「契約条文は必ず数字で確認を」
「歴史の失敗例は参考になりますわ」
その姿を見て、私は確信する。
これは一時的な現象ではない。
習慣になりつつある。
理解することが、当たり前になり始めている。
数日後、王都の仕官先から問い合わせが来た。
「女子教養課程出身者を補佐官として試験的に雇用できないか」
私は手紙を読み、静かに微笑む。
制度は動き始めている。
女子が家の内側だけでなく、外側でも役割を持ち始める。
まだ例外。
だが前例。
私は父に報告する。
「広げすぎるな」
「承知しています」
急げば潰される。
今は実績を積む段階。
成果は静かに、しかし確実に広がる。
王都の噂も変わってきた。
「令嬢課程は意外と本格的らしい」
「算術も教えるとか」
「婚約交渉に強い令嬢が出るらしい」
表向きの評価はそこまで。
だが内実は違う。
彼女たちは理解し始めている。
自分が何を知らなかったかを。
窓の外、夕暮れの空が広がる。
私は自室の机に座り、報告書をまとめる。
成果は数字で。
感情ではなく記録で。
未来はまだ分からない。
だが今日、女子教養課程は「成功の兆し」という段階を越えた。
成果が出た。
それは制度の最大の防壁。
私はペンを置く。
次は何が来るか。
反発か。
嫉妬か。
それとも新たな協力か。
分からない。
分からないから、積み重ねる。
成果は、何より雄弁だ。
そして今、その声は確かに広がり始めている。
最初の共通講義から三か月。
変化は、もはや錯覚ではなかった。
女子教養課程の令嬢たちが、明確な結果を出し始めたのである。
きっかけは、王都商会連合が主催した模擬契約演習だった。
本来は男子学院の上位生徒向けに設けられた実践課題。
商会の若手と契約条件を交渉し、条文を整え、双方が納得できる形にまとめるというもの。
今年から、共通講義の影響で女子にも参加資格が与えられた。
反対はあった。
だが「共通講義を受けている以上、基礎知識は同等」という理屈を誰も否定できなかった。
私は講堂の後方から見守っていた。
男子生徒の代表が先に交渉に立つ。
理路整然とした提案。
堂々たる態度。
さすがだ、と周囲が頷く。
続いて女子代表。
彼女は静かに契約書をめくり、条文の一文を指摘した。
「こちらの利率設定ですが、変動幅が不明瞭です。条件を明文化していただけますか」
商会側の若手が一瞬言葉に詰まる。
男子生徒たちがざわめく。
女子代表は続けた。
「家としては、曖昧な条文は将来の紛争要因になります」
会場が静まり返る。
講師が小さく頷いた。
議論はその後も続き、最終的に女子代表の案が採用された。
点数評価。
結果は女子側の勝利。
拍手は控えめだった。
だが確実に空気が変わった。
男子が敗北を認める視線。
女子が誇りを噛み締める姿。
私は静かに息を吐く。
成果が出た。
それが何よりの説得材料になる。
翌日、保守派の一部から皮肉が届いた。
「たまたまだろう」
「一例に過ぎぬ」
だが私は知っている。
たまたまは、続けば実力と呼ばれる。
女子教養課程では、算術の成績も上がっていた。
初期は平均点が男子より二割低かった。
今はほぼ並んでいる。
歴史では女子の平均が上回る分野も出始めた。
数字は嘘をつかない。
私は統計表を父の机に置く。
「結果です」
父は静かに目を通す。
「思ったより早いな」
「競争が効いています」
「男子の側は」
「刺激を受けています」
父は小さく笑う。
「全体の底が上がっているか」
「はい」
それが目的。
選抜ではない。
底上げ。
女子が伸びれば男子も伸びる。
男子が努力すれば女子も負けない。
相乗効果。
夜、女子教養課程の教室。
令嬢たちが自発的に議論している。
「契約条文は必ず数字で確認を」
「歴史の失敗例は参考になりますわ」
その姿を見て、私は確信する。
これは一時的な現象ではない。
習慣になりつつある。
理解することが、当たり前になり始めている。
数日後、王都の仕官先から問い合わせが来た。
「女子教養課程出身者を補佐官として試験的に雇用できないか」
私は手紙を読み、静かに微笑む。
制度は動き始めている。
女子が家の内側だけでなく、外側でも役割を持ち始める。
まだ例外。
だが前例。
私は父に報告する。
「広げすぎるな」
「承知しています」
急げば潰される。
今は実績を積む段階。
成果は静かに、しかし確実に広がる。
王都の噂も変わってきた。
「令嬢課程は意外と本格的らしい」
「算術も教えるとか」
「婚約交渉に強い令嬢が出るらしい」
表向きの評価はそこまで。
だが内実は違う。
彼女たちは理解し始めている。
自分が何を知らなかったかを。
窓の外、夕暮れの空が広がる。
私は自室の机に座り、報告書をまとめる。
成果は数字で。
感情ではなく記録で。
未来はまだ分からない。
だが今日、女子教養課程は「成功の兆し」という段階を越えた。
成果が出た。
それは制度の最大の防壁。
私はペンを置く。
次は何が来るか。
反発か。
嫉妬か。
それとも新たな協力か。
分からない。
分からないから、積み重ねる。
成果は、何より雄弁だ。
そして今、その声は確かに広がり始めている。
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