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第14話: 税務調査と頼れる影
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第14話: 税務調査と頼れる影
朝の『Rose Petal』は、いつもより静かだった。偽噂の影響はまだ残り、客足は普段の半分ほど。常連さんたちは来てくれるけど、新しいお客さんはほとんどいない。それでも、私は笑顔を絶やさず、店頭にお知らせを貼り、成分証明書をカウンターに置いていた。
「エルカさん、気にしないで。私たちは信じてるから」「噂なんて、すぐに収まるわよ」
エマさんやリアさんの励ましが、心の支えだ。でも、売上が落ちているのは事実。在庫は増える一方で、資金が少しずつ減っていく。
午前中を終え、昼食の準備をしていると、扉のベルが重々しく鳴った。
入ってきたのは、三人の公務員風の男性。黒い制服に王宮の紋章が入ったバッジ。税務署の人間だ。
「ここが『Rose Petal』か。店主は?」
リーダーらしき中年男性が、冷たく言った。私は緊張しながらカウンターから出た。
「私が店主のエルカです。何かご用でしょうか?」
男性は書類を広げ、事務的に告げた。
「王太子殿下のご命令により、税務調査を行う。営業許可、売上帳、仕入れ記録、商品の衛生管理――すべて提出せよ。即時だ」
王太子殿下――ルークス殿下の命令。心臓がどきりと鳴った。噂だけじゃなかった。本格的な妨害だ。
「わかりました。協力します」
私は平静を装って、帳簿と記録を差し出した。すべてきちんと管理している自信はある。前世の知識で、経理も基本は押さえている。脱税なんてしていないし、商品の衛生も徹底している。
男性たちは店内を隅々まで調べ始めた。棚の商品を一つずつ開け、匂いを嗅ぎ、材料の袋をひっくり返す。カフェスペースのテーブルも拭き、厨房をチェック。
「このクリーム、成分表示が不十分ではないか?」「仕入れ先の証明が古い」「衛生許可の更新が遅れているぞ」
次々と細かい指摘。確かに、少し甘かった部分はある。でも、致命的な違反じゃない。
調査は三時間続いた。お客さんが来ても、男性たちが睨むように立つので、みんなすぐに帰ってしまう。売上はほぼゼロ。
ようやく調査が終わり、リーダーが書類をまとめた。
「違反疑いは複数ある。営業停止の可能性も含め、後日正式通達する。それまで、商品の販売は控えろ」
「営業停止……?」
私は声を震わせた。これが通ったら、店は終わりだ。
男性たちは冷たく頭を下げ、出て行った。扉が閉まった瞬間、膝がガクッと崩れた。
「どうして……」
涙がこぼれそうになる。せっかくここまで築いたのに。一人で頑張ってきたのに。
でも、泣いている暇はない。すぐに帳簿を見直し、指摘された部分を修正する。仕入れ証明を更新し、成分表示を詳細に書き直す。
――その時、ベルが再び鳴った。
「いらっしゃい……あ」
入ってきたのはガーラミオだった。いつもの黒いコートだが、今日は表情が険しい。店内の散らかった様子を見て、すぐに状況を察したようだ。
「税務調査か」
「ガーラミオ様……どうしてここに?」
「噂を聞いた。ヴェルディア家の情報網でな」
彼はカウンターに近づき、散らかった書類を一瞥した。
「王太子の命令だな。妨害は本格化したか」
私は頷いた。声が震える。
「営業停止になるかも……私の店、潰されちゃう」
ガーラミオは静かに私の目を見た。冷たい瞳に、わずかな怒りが宿っている。
「潰させない。私の投資提案、まだ有効だ。受けろ」
「でも……」
「一人で戦うのは限界だ。パートナーになれば、ヴェルディア家の庇護下に入る。王太子といえど、簡単に手を出せなくなる」
彼の言葉は力強かった。公爵家の権力――それがどれだけ大きいか、元貴族の私にはわかる。
「ありがとうございます。でも、なぜそこまで……」
ガーラミオは少し視線を逸らし、静かに言った。
「君の才能が、もったいない。商品は本物だ。それを潰すのは、王国にとっても損失だ」
ビジネス的な理由。でも、その声に温かさを感じた。
私は深呼吸して、決意した。
「わかりました。パートナーになってください。お願いします」
ガーラミオは小さく頷き、初めて柔らかい笑みを浮かべた。
「よし。すぐに手配する。税務署への対応は、私の弁護士に任せろ。違反は軽微だ。すぐに解除される」
彼は書類を素早く確認し、指摘点をメモした。
「仕入れルートも、私のコネで強化する。新店舗の候補も探しておく」
あっという間に、計画が動き出す。私は涙を堪え、頭を下げた。
「本当に……ありがとうございます」
ガーラミオは私の肩に軽く手を置いた。一瞬の触れ合いだけど、温かかった。
「礼はいらない。君は強い。これくらいで折れる女じゃない」
その言葉に、胸が熱くなった。
夕方、彼は弁護士を呼ぶと言って去った。店内はまだ散らかっているけど、心は少し軽い。
――王宮。
ルークスは側近から報告を受け、苛立っていた。
「調査は終わりましたが、ヴェルディア公爵家が介入した模様です。ガーラミオ様が直接動いているとか」
「ガーラミオが……? なぜあんな下町の店に」
ルークスは拳を握った。エルカミーノの店を潰すつもりだったのに、予想外の強敵が現れた。
アルトゥーラが部屋に入り、甘く寄り添う。
「殿下、どうかなさいましたか?」
「いや……何でもない」
でも、心の棘が、ますます深く刺さる。
――『Rose Petal』の夜。
私はガーラミオ様の言葉を思い出し、商品を並べ直した。パートナーシップ――新しい始まり。
一人じゃなかった。頼れる人が、いてくれた。
妨害はまだ続くかもしれない。でも、もう怖くない。
明日から、また反撃だ。
私の店は、守る。絶対に。
朝の『Rose Petal』は、いつもより静かだった。偽噂の影響はまだ残り、客足は普段の半分ほど。常連さんたちは来てくれるけど、新しいお客さんはほとんどいない。それでも、私は笑顔を絶やさず、店頭にお知らせを貼り、成分証明書をカウンターに置いていた。
「エルカさん、気にしないで。私たちは信じてるから」「噂なんて、すぐに収まるわよ」
エマさんやリアさんの励ましが、心の支えだ。でも、売上が落ちているのは事実。在庫は増える一方で、資金が少しずつ減っていく。
午前中を終え、昼食の準備をしていると、扉のベルが重々しく鳴った。
入ってきたのは、三人の公務員風の男性。黒い制服に王宮の紋章が入ったバッジ。税務署の人間だ。
「ここが『Rose Petal』か。店主は?」
リーダーらしき中年男性が、冷たく言った。私は緊張しながらカウンターから出た。
「私が店主のエルカです。何かご用でしょうか?」
男性は書類を広げ、事務的に告げた。
「王太子殿下のご命令により、税務調査を行う。営業許可、売上帳、仕入れ記録、商品の衛生管理――すべて提出せよ。即時だ」
王太子殿下――ルークス殿下の命令。心臓がどきりと鳴った。噂だけじゃなかった。本格的な妨害だ。
「わかりました。協力します」
私は平静を装って、帳簿と記録を差し出した。すべてきちんと管理している自信はある。前世の知識で、経理も基本は押さえている。脱税なんてしていないし、商品の衛生も徹底している。
男性たちは店内を隅々まで調べ始めた。棚の商品を一つずつ開け、匂いを嗅ぎ、材料の袋をひっくり返す。カフェスペースのテーブルも拭き、厨房をチェック。
「このクリーム、成分表示が不十分ではないか?」「仕入れ先の証明が古い」「衛生許可の更新が遅れているぞ」
次々と細かい指摘。確かに、少し甘かった部分はある。でも、致命的な違反じゃない。
調査は三時間続いた。お客さんが来ても、男性たちが睨むように立つので、みんなすぐに帰ってしまう。売上はほぼゼロ。
ようやく調査が終わり、リーダーが書類をまとめた。
「違反疑いは複数ある。営業停止の可能性も含め、後日正式通達する。それまで、商品の販売は控えろ」
「営業停止……?」
私は声を震わせた。これが通ったら、店は終わりだ。
男性たちは冷たく頭を下げ、出て行った。扉が閉まった瞬間、膝がガクッと崩れた。
「どうして……」
涙がこぼれそうになる。せっかくここまで築いたのに。一人で頑張ってきたのに。
でも、泣いている暇はない。すぐに帳簿を見直し、指摘された部分を修正する。仕入れ証明を更新し、成分表示を詳細に書き直す。
――その時、ベルが再び鳴った。
「いらっしゃい……あ」
入ってきたのはガーラミオだった。いつもの黒いコートだが、今日は表情が険しい。店内の散らかった様子を見て、すぐに状況を察したようだ。
「税務調査か」
「ガーラミオ様……どうしてここに?」
「噂を聞いた。ヴェルディア家の情報網でな」
彼はカウンターに近づき、散らかった書類を一瞥した。
「王太子の命令だな。妨害は本格化したか」
私は頷いた。声が震える。
「営業停止になるかも……私の店、潰されちゃう」
ガーラミオは静かに私の目を見た。冷たい瞳に、わずかな怒りが宿っている。
「潰させない。私の投資提案、まだ有効だ。受けろ」
「でも……」
「一人で戦うのは限界だ。パートナーになれば、ヴェルディア家の庇護下に入る。王太子といえど、簡単に手を出せなくなる」
彼の言葉は力強かった。公爵家の権力――それがどれだけ大きいか、元貴族の私にはわかる。
「ありがとうございます。でも、なぜそこまで……」
ガーラミオは少し視線を逸らし、静かに言った。
「君の才能が、もったいない。商品は本物だ。それを潰すのは、王国にとっても損失だ」
ビジネス的な理由。でも、その声に温かさを感じた。
私は深呼吸して、決意した。
「わかりました。パートナーになってください。お願いします」
ガーラミオは小さく頷き、初めて柔らかい笑みを浮かべた。
「よし。すぐに手配する。税務署への対応は、私の弁護士に任せろ。違反は軽微だ。すぐに解除される」
彼は書類を素早く確認し、指摘点をメモした。
「仕入れルートも、私のコネで強化する。新店舗の候補も探しておく」
あっという間に、計画が動き出す。私は涙を堪え、頭を下げた。
「本当に……ありがとうございます」
ガーラミオは私の肩に軽く手を置いた。一瞬の触れ合いだけど、温かかった。
「礼はいらない。君は強い。これくらいで折れる女じゃない」
その言葉に、胸が熱くなった。
夕方、彼は弁護士を呼ぶと言って去った。店内はまだ散らかっているけど、心は少し軽い。
――王宮。
ルークスは側近から報告を受け、苛立っていた。
「調査は終わりましたが、ヴェルディア公爵家が介入した模様です。ガーラミオ様が直接動いているとか」
「ガーラミオが……? なぜあんな下町の店に」
ルークスは拳を握った。エルカミーノの店を潰すつもりだったのに、予想外の強敵が現れた。
アルトゥーラが部屋に入り、甘く寄り添う。
「殿下、どうかなさいましたか?」
「いや……何でもない」
でも、心の棘が、ますます深く刺さる。
――『Rose Petal』の夜。
私はガーラミオ様の言葉を思い出し、商品を並べ直した。パートナーシップ――新しい始まり。
一人じゃなかった。頼れる人が、いてくれた。
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