婚約破棄された令嬢の華麗なる逆転劇 ~王太子の後悔と私の新しい恋~」

鷹 綾

文字の大きさ
15 / 30

第15話: 逆襲の始まりと握られた弱み

しおりを挟む
第15話: 逆襲の始まりと握られた弱み

税務調査から三日後、『Rose Petal』は再び扉を開けた。ガーラミオ様の弁護士が迅速に動き、指摘された違反はすべて軽微なものとして処理された。営業停止は回避され、正式に「問題なし」の通達が届いた。ヴェルディア公爵家の名が背後にあると知れ渡ったのか、偽噂を流していた者たちも一時的に息を潜めたようだ。

店内は少しずつ元の賑わいを取り戻しつつあった。常連さんたちが「エルカさん、よく頑張ったわ!」と励ましの言葉をかけ、新規のお客さんも口コミで増えている。ガーラミオ様の投資も正式に決定し、来月には隣の空き店舗を借りて拡大する予定だ。

でも、私は安心していなかった。この妨害は、ただの始まりだ。敵は王宮にいる。アルトゥーラ――そして、ルークス殿下。

「次は、こちらから攻める番よ」

私はカウンターの奥で、静かに決意した。前世の知識と、この世界での経験を活かせば、相手の弱みを握れる。アルトゥーラの「癒しの力」が本物かどうか――あの宴で見た光景を思い出すと、どこか不自然だった。薬草の知識か、魔法の道具か。いずれにせよ、偽物なら決定的な証拠になる。

まず、行動を開始した。

一つ目は、情報収集。常連さんの中に、王宮で働く使用人の親戚がいるリアさんに相談した。

「リアさん、王宮の聖女様の噂、聞いたことある?」

リアさんは目を輝かせて答えた。

「あるわよ! アルトゥーラ様の癒しの力、すごいって言われてるけど、実は薬草をたくさん使ってるって話もちらほら。平民出身だから、神殿で薬学を勉強したらしいわね」

薬草――予想通り。私はさらに深掘りした。

二つ目は、ガーラミオ様の協力。パートナーになった彼に、ヴェルディア家の情報網を借りる。

夕方、彼が店を訪れた時、私は切り出した。

「ガーラミオ様、お願いがあります。アルトゥーラの癒しの力について、詳しく調べていただけませんか? 妨害の裏に彼女がいるのは確実で……弱みを握りたいんです」

ガーラミオは紅茶を飲みながら、静かに頷いた。

「すでに調べさせている。報告が上がってきたところだ」

彼はポケットから折りたたんだ紙を取り出した。

「アルトゥーラは確かに薬草の知識がある。癒しの力は、特殊な薬草を調合した軟膏を手に塗り、光る魔法石を仕込んだ指輪で演出しているらしい。本物の癒しの魔法は微弱で、ほとんどが偽装だ」

私は息を呑んだ。やっぱり。

「証拠は?」

「薬草の仕入れ記録と、指輪の製作者の証言。ヴェルディア家のコネで押さえた。まだ決定的じゃないが、追及すれば崩れる」

「ありがとうございます……これで、反撃できます」

ガーラミオは私の目を見て、珍しく優しい声で言った。

「君は賢い。復讐じゃなく、守るための戦いだな」

その言葉に、胸が熱くなった。彼はただのビジネスパートナーじゃない。私のことを、ちゃんと理解してくれている。

三つ目は、証拠集めの行動。私は貴族の身分を隠したまま、王宮近くの薬草店を回った。前世の化学知識で、アルトゥーラが使っていそうな薬草を特定。店主にさりげなく聞き込む。

「最近、聖女様の関係者がたくさん買ってる薬草があるって聞いたけど?」

店主は声を潜めて答えた。

「あるよ。光る効果のある粉末と、癒しを装う軟膏の材料。高い金で買ってるけど、誰にも言わないでくれよ」

メモを取り、仕入れ量を記録。これで、アルトゥーラの調合パターンがわかる。

夜、二階の部屋で証拠を整理する。薬草リスト、仕入れ記録の写し、ガーラミオ様の報告書。まだ完全じゃないけど、十分に脅威になる。

「これを、いつ使うか……」

ルークスとアルトゥーラの結婚式が近づいているという噂を耳にしていた。あそこが、最大の舞台だ。式で暴露すれば、王国全体が知る。ザマアの頂点。

でも、今はまだ早い。もっと決定的な証拠を。

ガーラミオ様がまた訪れた夜、私は彼に相談した。

「結婚式で暴露したいんです。でも、証拠がもっと必要で……」

彼は静かに考え、答えた。

「私が指輪の製作者を直接尋問する。偽物の証明を取ってくる」

「危なくないですか?」

ガーラミオは小さく笑った。

「ヴェルディア家を敵に回す者は少ない。君を守るためだ」

その言葉に、頰が熱くなった。守る――初めて、誰かにそう言われた。

「ガーラミオ様……本当に、ありがとうございます」

彼は少し照れたように視線を逸らし、紅茶を飲んだ。

「パートナーだからな。それに……君の笑顔が、この店に似合う」

甘い空気が流れた。一瞬の沈黙。でも、心地いい。

――王宮。

アルトゥーラは不安を隠せなかった。税務調査が失敗に終わったと聞き、苛立っている。

「ヴェルディアのガーラミオが……あの女を守ってるのね」

ルークスに相談したが、彼は最近機嫌が悪い。

「もう放っておけ。あの店など、どうでもいい」

でも、アルトゥーラは知らない。自分の弱みが、すでに握られ始めていることを。

――『Rose Petal』の夜。

私は証拠の紙を眺め、静かに微笑んだ。

「アルトゥーラ、あなたの偽りは、もう長くないわ」

逆襲の準備は、着々と進んでいる。ガーラミオ様の支えが、私を強くする。

店は守られた。これから、攻める番。

私の新しい人生は、誰にも潰させない。

明日も、笑顔でお客さんを迎える。その裏で、賢く戦う。

弱みを握った手は、静かに力を溜めている。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

婚約破棄された公爵令嬢と、処方箋を無視する天才薬師 ――正しい医療は、二人で始めます

ふわふわ
恋愛
「その医療は、本当に正しいと言えますか?」 医療体制への疑問を口にしたことで、 公爵令嬢ミーシャ・ゲートは、 医会の頂点に立つ婚約者ウッド・マウント公爵から 一方的に婚約を破棄される。 ――素人の戯言。 ――体制批判は不敬。 そう断じられ、 “医療を否定した危険な令嬢”として社交界からも排斥されたミーシャは、 それでも引かなかった。 ならば私は、正しい医療を制度として作る。 一方その頃、国営薬局に現れた謎の新人薬師・ギ・メイ。 彼女は転生者であり、前世の知識を持つ薬師だった。 画一的な万能薬が当然とされる現場で、 彼女は処方箋に書かれたわずかな情報から、 最適な調剤を次々と生み出していく。 「決められた万能薬を使わず、  問題が起きたら、どうするつもりだ?」 そう問われても、彼女は即答する。 「私、失敗しませんから」 (……一度言ってみたかったのよね。このドラマの台詞) 結果は明らかだった。 患者は回復し、評判は広がる。 だが―― 制度は、個人の“正 制度を変えようとする令嬢。 現場で結果を出し続ける薬師。 医師、薬局、医会、王宮。 それぞれの立場と正義が衝突する中、 医療改革はやがて「裁き」の局面へと進んでいく。 これは、 転生者の知識で無双するだけでは終わらない医療改革ファンタジー。 正しさとは何か。 責任は誰が負うべきか。 最後に裁かれるのは―― 人か、制度か。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

処刑された悪役令嬢、二周目は「ぼっち」を卒業して最強チームを作ります!

みかぼう。
恋愛
地方を救おうとして『反逆者』に仕立て上げられ、断頭台で散ったエリアナ・ヴァルドレイン。 彼女の失敗は、有能すぎるがゆえに「独りで背負いすぎたこと」だった。 ループから始まった二周目。 彼女はこれまで周囲との間に引いていた「線」を、踏み越えることを決意した。 「お父様、私に『線を引け』と教えた貴方に、処刑台から見た真実をお話しします」 「殿下、私が貴方の『目』となります。王国に張り巡らされた謀略の糸を、共に断ち切りましょう」 淑女の仮面を脱ぎ捨て、父と王太子を「共闘者」へと変貌させる政争の道。 未来知識という『目』を使い、一歩ずつ確実に、破滅への先手を取っていく。 これは、独りで戦い、独りで死んだ令嬢が、信頼と連帯によって王国の未来を塗り替える――緻密かつ大胆なリベンジ政争劇。 「私を神輿にするのなら、覚悟してくださいませ。……その行き先は、貴方の破滅ですわ」 (※カクヨムにも掲載中です。)

婚約破棄された令嬢は“図書館勤務”を満喫中

かしおり
恋愛
「君は退屈だ」と婚約を破棄された令嬢クラリス。社交界にも、実家にも居場所を失った彼女がたどり着いたのは、静かな田舎町アシュベリーの図書館でした。 本の声が聞こえるような不思議な感覚と、真面目で控えめな彼女の魅力は、少しずつ周囲の人々の心を癒していきます。 そんな中、図書館に通う謎めいた青年・リュカとの出会いが、クラリスの世界を大きく変えていく―― 身分も立場も異なるふたりの静かで知的な恋は、やがて王都をも巻き込む運命へ。 癒しと知性が紡ぐ、身分差ロマンス。図書館の窓辺から始まる、幸せな未来の物語。

婚約破棄された途端、隣国の冷酷王子に溺愛されました

ほーみ
恋愛
「――本日をもって、レイラ・アストレッドとの婚約を破棄する!」 玉座の間に響き渡る鋭い声。 それは私の元婚約者である王太子・ユリウスの宣告だった。 広い空間にざわめきが広がる。 私はゆっくり顔を上げ、冷たい笑みを浮かべた。 「あら、そう。ようやく?」 「……なに?」

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

処理中です...