婚約破棄された令嬢の華麗なる逆転劇 ~王太子の後悔と私の新しい恋~」

鷹 綾

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第24話: 最後の妨害と完全な失敗

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第24話: 最後の妨害と完全な失敗

結婚式前日。王都は祝賀の飾りで彩られ、王宮の大ホールは明日の式のために最終調整中だった。私は『Rose Petal』の新店舗で、ガーラミオ様と最後の打ち合わせをしていた。証拠はすべて小さな箱にまとめ、ドレスも届いている。サファイアの指輪が指で輝き、私の心を落ち着かせる。

「明日、すべて終わります」

私は彼に微笑んだ。ガーラミオ様は私の腰を抱き、優しく頷く。

「君の勝利だ。俺はただ、見守る」

甘いキスを交わし、別れる。明日、王宮でまた会おう。

――その夜、王宮の聖女私室。

アルトゥーラは鏡の前で、指輪を握りしめていた。薬草粉末は底をつき、光が弱い。不安が頂点に達し、侍女を呼びつけた。

「ならず者たちの件は? もう一度、チャンスを」

侍女は青ざめて答えた。

「聖女様、あの連中はすでに捕まり、衛兵に監禁されています。ヴェルディア家の情報網が早すぎて……」

アルトゥーラの顔が歪んだ。

「じゃあ、自分でやるわ」

彼女は隠し引き出しから、小さな毒瓶を取り出した。微量の眠り薬。エルカミーノの店に忍び込み、商品に混ぜて大混乱を起こす計画。結婚式前日に店が閉鎖されれば、エルカミーノは出席できない。出席しても、評判は地に落ちる。

「今夜、変装して下町へ。誰も気づかないわ」

侍女を下がらせ、アルトゥーラは平民の服に着替え、マントを深く被った。一人で王宮の裏口から抜け出し、馬車を雇って下町へ向かう。心臓が高鳴るが、決意は固い。

――同時刻、下町の『Rose Petal』。

私は二階の部屋で、明日のドレスを最終確認していた。ガーラミオ様の選んだ淡いブルーのドレス。サファイアのネックレスと指輪にぴったりだ。

ふと、窓の外に怪しい影を見た。マントを被った人物が、店の裏口をこじ開けようとしている。

「誰……?」

すぐにガーラミオ様の言葉を思い出す。彼は「最後の妨害があるかもしれない」と、店の周りに私設の衛兵を配置してくれていた。

私は静かに窓から見守った。影は裏口を突破し、店内へ忍び込む。暗闇の中、手に持った瓶を商品の棚に近づける。

その瞬間、店の灯りが一斉に点き、衛兵たちが現れた。

「動くな!」

ガーラミオ様の部下たちだ。アルトゥーラは驚いて瓶を落とし、毒液が床にこぼれる。

「あなたは……聖女アルトゥーラ様?」

衛兵の一人がマントを剥ぎ、顔を露わにした。アルトゥーラは青ざめ、逃げようとするが、すぐに捕縛される。

「離しなさい! 私は聖女よ!」

「聖女が、夜中に他人の店に毒を撒くとはな。証拠はすべて押さえた」

衛兵はこぼれた毒液を瓶に集め、アルトゥーラを拘束した。ガーラミオ様の指示で、王宮衛兵にも即時連絡が入る。

――王宮、ルークスの私室。

深夜、側近が慌てて駆け込んできた。

「殿下、大変です! 聖女アルトゥーラ様が、下町の店に毒を撒こうとして捕まりました。現在、ヴェルディア家の衛兵が拘束しています」

ルークスは立ち上がり、顔を青ざめさせた。

「アルトゥーラが……?」

すぐに現場へ向かう馬車を手配。心の棘が、ついに爆発した。

下町の『Rose Petal』前に着くと、アルトゥーラが衛兵に囲まれていた。平民の服で、顔は泥と涙で汚れている。

「殿下……助けて! これは誤解ですわ!」

ルークスは彼女を見下ろし、冷たく言った。

「誤解? 毒瓶を持っていたのは事実だ。エルカミーノの店を、なぜ狙った?」

アルトゥーラは言葉に詰まり、泣き崩れた。

「だって……あの女が邪魔で……殿下の心を、取り戻したくて……」

ルークスの胸が張り裂けそうになった。すべてが、アルトゥーラの策略だった。婚約破棄も、妨害も、偽りの癒しの力も。

「もう、終わりだ」

ルークスは衛兵に命じた。

「アルトゥーラを王宮へ連行せよ。明日、式は中止。真相を調査する」

アルトゥーラの絶叫が夜に響く。

「嫌ですわ! 殿下、信じて!」

でも、ルークスは振り向かなかった。後悔と怒りと、虚しさが胸を満たす。

私は二階の窓から、すべてを見ていた。ガーラミオ様が隣に立ち、私を抱きしめる。

「終わったな」

「ええ……最後の妨害、完全に失敗しました」

アルトゥーラの自滅。毒を撒こうとした現行犯。もう、逃げられない。

ルークス殿下の顔が見えた。あの絶望の表情。小さなザマア。

でも、私の心はもう痛まない。ただ、ガーラミオ様の温もりが嬉しい。

「明日、式は中止になるでしょう。でも、私たちは出席します。真相を、正式に明かすために」

ガーラミオ様は頷き、私にキスをした。

「君の勝利だ」

夜は静かに明けた。最後の妨害は、敵の完全な失敗に終わった。

結婚式の前日、すべてが決した。

私の逆転は、確定した。

ガーラミオ様の腕の中で、穏やかな眠りにつく。

明日、王宮で。華麗なるフィナーレを。

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