「婚約破棄された令嬢の異世界カフェ革命~甘い復讐と運命の恋~」

鷹 綾

文字の大きさ
18 / 29

第18話: 王子の接近

しおりを挟む
 第18話: 王子の接近

王都からの経済制裁が始まって一ヶ月。

ルミナスの街は、むしろ以前より繁栄していた。

私のカフェは領地の経済の柱となり、他領地からの交易商が毎日訪れる。スイーツの輸出量は増え続け、王都の制裁などまるで影響なし。冒険者たちはクーポン目当てにクエストをこなし、街の税収は過去最高を記録した。

伯爵が大笑いしながら言った。

「王都の連中、顔から火が出るじゃろう! エレナ嬢の甘い革命、完璧じゃ!」

私は笑顔で対応しつつ、心の中でほくそ笑んでいた。

リリア、あなたたちの計画は失敗したわね。

その日、カフェはいつも通り大盛況だった。

午後のティータイム。貴族風の客が増える時間帯。

ミアがトレイを抱えて駆け寄ってきた。

「エレナお姉様! お客様です! すごく立派な馬車で来られた方で、個室を希望されてます!」

「わかったわ。案内して」

私は新作の「ロイヤルティラミス」をトレイに載せ、二階の個室へ向かった。

ドアを開けると、そこにいたのは――。

金色の髪、青い瞳。白を基調とした高級な礼服。

アレックス王子だった。

変装はしているが、隠しきれない王族の気品。隣には護衛らしき騎士が二人控えている。

私は一瞬、息を止めた。

元の世界で、私を婚約破棄し、追放した男。

今、私の前にいる。

「……いらっしゃいませ。王子殿下」

私は冷静に微笑み、トレイを置いた。

アレックスは少し驚いた顔をしたが、すぐにいつもの優しい笑みを浮かべた。

「エレナ……久しぶりだな。元気そうで、何よりだ」

その声に、胸の奥で黒い感情が渦巻いた。

元気? あなたが私を追放したせいで、異世界に飛ばされ、死にそうになったのに?

でも、今の私は強い。

「ありがとうございます。お茶をお持ちしました。どうぞ」

王子はティラミスを一口食べ、目を大きく見開いた。

「これは……信じられん。こんな味と効果、王都のどんな菓子職人も作れない」

「褒めていただき、光栄です」

王子はフォークを置き、真剣な目で私を見た。

「エレナ、率直に言う。君のこの店、王都で話題になっている。貴族たちが密かに買いに来るほどだ。リリアも……君のスイーツを食べたいと言っている」

リリアの名前が出た瞬間、私の指先がわずかに震えた。

「ああ、そう」

「だから、提案がある。店を王都に移さないか? 王家の保護を与え、最高の場所を提供する。君の才能は、王国全体のために使うべきだ」

保護? 才能を王国のために?

笑いが込み上げてきた。

あなたたちは、私の成功を潰そうとしたくせに。

今さら、取り込もうというの?

「申し訳ありません。王子殿下。この店は、ルミナスの街と伯爵様のためにあります。王都へは、行きません」

王子の表情が、少し硬くなった。

「エレナ……昔のことは、悪かったと思っている。あのときは、リリアの言葉を信じてしまって……君を傷つけた」

昔のこと?

婚約破棄、追放、家族からの見捨てられ――すべてを「昔のこと」で済ませるの?

私は静かに微笑んだ。

「王子殿下。あのときのことは、もう忘れました。ここで新しい人生を始め、幸せですから」

王子は少し動揺した様子で、立ち上がった。

「そうか……なら、せめて持ち帰りを大量に。リリアが喜ぶ」

「かしこまりました」

私は特別に作った豪華なスイーツセットを包んだ。回復効果だけでなく、少しだけ「真実を見抜く」効果を込めて。

王子が去った後、リオンが個室に入ってきた。

「……よく耐えたな」

「ありがとう。リオンさん」

私はリオンの胸に顔を埋めた。

「悔しかったけど……勝った気がするわ」

ミアがドアから覗いて、にこっと笑った。

「エレナお姉様、カッコよかったです!」

その夜、王都で起こったことを、情報屋から聞いた。

王子が持ち帰ったスイーツを食べたリリアが、突然過去の陰謀を告白し始めたらしい。

「私が……エレナ様を陥れたの……偽の証拠を作って……」

真実を見抜く効果が、効いたのだ。

王子は動揺し、リリアを問い詰め、すべてが明るみに出た。

ヴァレンティア家の陰謀、婚約破棄の真相、転移者狩りの命令――。

王宮は大混乱。

王子が、私に謝罪の手紙を送ってきた。

『エレナ、すべて私の過ちだった。許してくれとは言わないが、真相を公表し、君の名誉を回復する』

私は手紙を読み、静かに燃やした。

名誉回復?

もう、必要ないわ。

私はここで、十分に成功している。

あなたたちが後悔すれば、それでいい。

伯爵が大笑いした。

「王子殿下、顔面蒼白じゃろう! エレナ嬢の甘い罠、見事じゃ!」

カフェはさらに繁栄した。

王都の貴族たちが、こっそり訪れるようになった。

リリアは謹慎、王子は失意。

私のスイーツは、王国中で「禁断の甘さ」と呼ばれ始めた。

私はリオンとミアと、バルコニーで夜空を見上げた。

「これで、ざまぁの半分は達成ね」

リオンが私の手を取った。

「残りは?」

「直接、あなたたちの前に立つことよ。王都で、私のカフェを開く日が来るわ」

ミアが目を輝かせた。

「ミアも一緒に行きます!」

私は頷いた。

甘い復讐は、まだ続く。

王子、リリア。

あなたたちが私から奪ったもの、すべて取り戻してあげる。

華麗に、甘く。

(文字数: 約1780文字)

第18話はここまで。次回、王国パーティへの招待と、対峙の始まりへ――。

王子を直接登場させ、初の直接ざまぁシーンを描きました。エレナの賢さと成長を強調し、爽快感を最大に。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

『「君は飾りだ」と言われた公爵令嬢、契約通りに王太子を廃嫡へ導きました』

ふわふわ
恋愛
「君は優秀だが、王妃としては冷たい。正直に言えば――飾りとしては十分だった」 そう言って婚約者である王太子に公然と切り捨てられた、公爵令嬢アデルフィーナ。 さらに王太子は宣言する。 「王家は外部信用に頼らない」「王家が条文だ」と。 履行履歴も整えず、契約も軽視し、 新たな婚約者と共に“強い王家”を演出する王太子。 ――ですが。 契約は宣言では動きません。 信用は履歴の上にしか立ちません。 王命が止まり、出荷が止まり、資材が止まり、 やがて止まったのは王太子の未来でした。 自ら押した承認印が、 自らの継承権を奪うことになるとも知らずに。 公然侮辱から始まる、徹底的な強ザマァ。 救済なし。 やり直しなし。 契約通りに処理しただけですのに―― なぜか王太子が廃嫡されました。

『婚約破棄されたので北の港を発展させたら

ふわふわ
恋愛
王立学園の卒業舞踏会。 公爵令嬢アリアベルは、王太子カルディオンから突然の婚約破棄を告げられる。 「真実の愛を見つけた」 そう言って王太子が選んだのは、涙を流す義妹ヴィオレッタだった。 王都から追い出され、すべてを失った―― はずだった。 アリアベルが向かったのは、王国の北にある小さな港町。 しかし彼女の手腕によって港は急速に発展し、やがて王国最大の交易港へと変わっていく。 一方その頃、王太子と義妹は王都で好き勝手に振る舞っていたが―― やがてすべてが崩れ始める。 王太子は国外追放。 義妹は社交界から追放され修道院送り。 そして気づいた頃には、北の港こそが王国の中心になっていた。 「私はもう誰のものでもありません」 これは、婚約破棄された令嬢が自分の人生を取り戻し、 王国の未来を変えていく物語。 そして―― 彼女の隣には、いつしか新しい王太子の姿があった。 婚約破棄から始まる、逆転ざまぁロマンス。✨

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

婚約破棄ですか? では契約通りに――王太子も聖女も教会も、まとめて破綻させていただきます

ふわふわ
恋愛
内容紹介 「婚約破棄だ。聖女こそが、真に国を救う存在だ」 王立舞踏会の夜。 王太子カイルベルトは、公衆の面前で公爵令嬢エレシアとの婚約を一方的に破棄した。 隣には涙を浮かべる義妹ミリア。 神託を告げる聖女ルチア。 それを正当化する教会の司祭。 ――すべては“神の意志”だと言う。 けれど、エレシアは動じない。 「では契約通りに」 その一言から、静かな崩壊が始まった。 王家と教会を支えていた資金・技術・物流は、すべて公爵家の支援によるもの。 婚約破棄と同時に、それらは正当に停止される。 奇跡は止まり、港は滞り、帳簿の穴が暴かれ、聖女の“奇跡”の正体が白日の下に晒されていく。 やがて明らかになるのは―― 王太子の国庫私的流用。 聖女の偽装。 司祭の横領。 そして義妹の虚偽証言。 「俺は悪くない!」 叫びは虚しく、地位も名誉も王籍さえも剥奪される王太子。 聖女は投獄、司祭は労役、義妹は修道院幽閉。 救済はない。 赦しもない。 あるのは、選択の結果だけ。 これは、感情で怒鳴らない令嬢が、 契約と事実だけで王家と教会を崩壊させる物語。 静かで冷徹。 そして、徹底的に最強のざまぁ。

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

婚約破棄されたので頑張るのをやめました 〜昼寝と紅茶だけの公爵令嬢なのに、なぜか全部うまくいきます〜あ

鍛高譚
恋愛
王太子から婚約破棄された衝撃で階段から落ちた公爵令嬢シャル・ド・ネ・アルベール。 目覚めた彼女は、なんと前世の記憶——ブラック企業で働き詰めだったOL・佐伯ゆかりとしての人生を思い出してしまう。 無理して働いた末に過労死した前世の反省から、シャルは決意する。 「もう頑張らない。今度の人生は“好き”と“昼寝”だけで満たしますわ!」 貴族としての特権をフル活用し、ワイン造りやスイーツ作りなど“趣味”の延長でゆるゆる領地改革。 気づけば国王にも称賛され、周囲の評価はうなぎのぼり!? 一方、彼女を見下していた王太子と“真実の愛()”の令嬢は社交界で大炎上。 誰もざまぁされろなんて言ってないのに……勝手に転がり落ちていく元関係者たち。 本人はただ紅茶とスコーンを楽しんでいるだけなのに―― そんな“努力しない系”令嬢が、理想の白い結婚相手と出会い、 甘くてふわふわ、そしてちょっぴり痛快な自由ライフを満喫する ざまぁ(他力本願)×スローライフ×ちょっと恋愛な物語です♪

処理中です...