追放された悪役令嬢は最強魔法で復讐し、隣国王子に永遠に愛される

鷹 綾

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第2話 聖女の微笑みと、忍び寄る影

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第2話 前世の記憶と、封じられた力

舞踏会の夜から、数日が経っていた。

エメロードは自室のベッドに座り、窓の外をぼんやりと眺めていた。

金色の髪が乱れ、碧い瞳は虚ろに揺れている。あの夜の衝撃が、まだ胸に残っていた。

カーチスの冷たい言葉。

セラの涙。

そして、周囲の貴族たちの非難の視線。

――私は、何もしていないのに。

婚約破棄の噂は王都中に広がり、公爵家にも打撃を与えていた。父は王に謁見を求め、兄ヴィクトルは剣を握りしめて怒りを抑えている様子だった。

エメロードは立ち上がり、鏡の前に立った。

鏡に映る自分は、いつもの完璧な公爵令嬢。

だが、心の中では、何かが変わり始めていた。

あの夜、頭の中で弾けた感覚。

――前世……?

突然、記憶が洪水のように流れ込んできた。

現代日本で、普通のOLとして働いていた記憶。

名前は「絵美」。28歳の独身。残業続きの毎日で、ストレス解消に異世界転生小説を読み漁っていた。

「悪役令嬢もの」が特に好きだった。婚約破棄されて逆転する話に、いつも胸を熱くしていた。

――私が……転生者?

いや、違う。

この世界に生まれたときから、エメロードとして生きてきた。

でも、前世の記憶が今、覚醒した。

そして、もう一つ。

この体に封じられていた、恐るべき力。

エメロードはそっと手を翳した。

指先から、黒い霧が立ち上る。

闇魔法――王国で禁呪とされる、最強クラスの魔法。

さらに、手のひらに光が集まる。

治癒魔法――聖女セラのものより、はるかに強力な。

最後に、空間が歪み、小さな召喚陣が現れる。

――守護獣すら呼び出せる。

エメロードの唇が、静かに弧を描いた。

(ふん……これが、私の本当の力)

前世の知識と、このチート級の魔法。

これで、十分だ。

復讐するために。

部屋のドアがノックされた。

「エメロードお嬢様、お食事をお持ちしました」

入ってきたのは、侍女のリアナ。

幼い頃からエメロードに仕える、忠実な少女。茶色の髪をポニーテールにまとめ、いつも心配そうな顔。

「リアナ……ありがとう」

エメロードは微笑んだが、リアナは涙目で膝をついた。

「お嬢様……あの婚約破棄、どうしてあんなことに……お嬢様は何も悪くないのに!」

リアナだけは、エメロードを信じてくれていた。

エメロードはリアナの肩に手を置いた。

「ありがとう、リアナ。あなただけが、味方でいてくれて」

「もちろんです! お嬢様の侍女は、私だけです!」

その言葉に、エメロードの心が少し温かくなった。

だが、次の日。

王宮から召喚状が届いた。

公爵家全員が、王の前に呼ばれる。

謁見の間。

王、カーチス、セラ、そして重臣たちが並ぶ。

エメロードは父と兄とともに、跪いた。

王の声が響く。

「エメロード・フォン・ローズベルク。聖女セラへの嫌がらせ、婚約者カーチスへの悪影響が認められた。よって、婚約破棄を承認し、公爵家に謹慎を命ずる」

セラが、涙を浮かべて。

「私は……ただ神託に従っただけなのに、エメロード様にそんなことをされるなんて……」

カーチスが、冷たく。

「君の傲慢さが、僕を苦しめたんだ」

エメロードは静かに顔を上げた。

――嫌がらせ? 悪影響?

すべて、セラの捏造だった。

だが、証拠はない。

前世の知識で、エメロードは気づいていた。

セラは転生者だ。現代日本の知識を持ち、治癒魔法をチートとして使っている。

そして、王族や貴族を操る策略を巡らせている。

兄ヴィクトルが、怒りを抑えて進言した。

「父上、妹は無実です! 証拠もなしに――」

だが、王は手を挙げて制した。

「さらに、エメロードには辺境の領地を与え、そこで謹慎せよ。公爵家の名は一時剥奪する」

追放――実質的な。

父の顔が青ざめ、兄が剣に手をかけそうになる。

エメロードは静かに立ち上がった。

「謹慎、承知いたしました」

周囲がざわつく。

そんなに素直に?

だが、エメロードの碧い瞳は、冷たく輝いていた。

(いいわ。辺境で、ゆっくり力を蓄えてあげる)

(カーチス、セラ……楽しみにしていなさい)

謁見を終え、公爵家に戻る馬車の中で。

兄ヴィクトルが、悔しそうに。

「妹よ、すまない。俺がもっと早く気づいていれば……」

エメロードは微笑んだ。

「お兄様、心配しないで。私は大丈夫」

心の中で、決意する。

これからが、本当の始まり。

前世の知識と、封じられた力で。

最強の悪役令嬢として、逆転する。

辺境への旅立ちまで、残り数日。

エメロードは、静かに準備を始めた。

リアナを連れて、辺境へ。

そこで、運命の出会いが待っていることを、まだ知らずに。

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