追放された悪役令嬢は最強魔法で復讐し、隣国王子に永遠に愛される

鷹 綾

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第16話 聖女の予知の綻びと、王都の亀裂

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 第16話 聖女の予知の綻びと、王都の亀裂

王都アステリアの宮廷は、表面上は華やかさを保っていたが、内側からゆっくりと崩れ始めていた。

王宮の大広間では、聖女セラ主催の茶会が開かれていた。

貴族令嬢たちが集い、セラの異世界の知識や治癒魔法を称賛する声が飛び交う。

しかし、以前のような熱狂は薄れていた。

セラは白いドレスに身を包み、愛らしい笑みを浮かべて紅茶を注いでいる。

「皆さん、今日は新しいお菓子をお持ちしました。日本でいう『ケーキ』というものですわ」

令嬢たちが拍手するが、その視線にはどこか冷めたものが混じる。

ある令嬢が、控えめに尋ねた。

「聖女様……最近、辺境のノルドフォール領の噂を耳にしますが……本当に、エメロード様が暴政を敷いているのでしょうか?」

セラの微笑みが、一瞬凍りついた。

「……ええ、そうですわ。私の予知で見たんです。エメロードは闇魔法で領民を操り、反乱を企てていると」

しかし、その言葉に、誰もが完全に納得しているわけではない。

別の貴族が、ぽつりと呟いた。

「でも、商人から聞く話では、ノルドフォールはすごく豊かで、領民たちが幸せそうだと……」

セラの瞳が、わずかに揺れた。

最近、予知が外れることが増えていた。

最初は完璧だった。エメロードが追放され、惨めに死ぬ未来が見えていた。

カーチスとの甘い未来も、はっきり見えていた。

なのに、今──予知のビジョンが曖昧になり、別の未来がちらつく。

エメロードが強くなり、王都に戻ってくる未来。

それが、セラを苛立たせていた。

茶会が終わった後、セラは自室に戻り、鏡の前で拳を握りしめた。

「どうして……私の物語なのに、なぜ変わるの?」

転生チートのはずの予知能力が、効力を弱めている。

それは、エメロードの禁呪級の力が、物語の運命をねじ曲げているからだった。

一方、王太子カーチスは執務室で苛立っていた。

机の上には、ノルドフォールからの報告書。

監視使者が戻り、「領地は異常なほど繁栄しており、領民はエメロードを神のように崇めている」と報告した。

さらに、隣国ルクスフォードの兵が駐留しているという情報。

カーチスは報告書を投げつけ、秘書官を叱りつけた。

「セラの言った通りのはずだ! エメロードは暴政を敷いていると!」

秘書官は俯いたまま答えた。

「しかし、殿下……複数の商人や旅人からの証言が一致しておりまして……」

カーチスは歯噛みした。

セラの予知が外れることが、最近増えている。

最初は「エメロードが毒を盛ろうとした」と予知し、偽の証拠を作って婚約破棄を正当化した。

それが成功したはずだった。

なのに、今──自分の選択が、正しかったのか自信が揺らぎ始めている。

夜、カーチスはセラの部屋を訪れた。

「セラ、話がある」

セラは愛らしく微笑み、カーチスを迎え入れた。

「カーチス様、どうかなさいましたか?」

カーチスは直に尋ねた。

「お前の予知……本当に正しいのか? エメロードの領地が、あんなに豊かだという話が……」

セラの表情が、わずかに硬くなった。

「それは……エメロードが闇魔法で偽りの繁栄を作っているんですわ! 私の予知は間違っていません!」

しかし、カーチスの瞳には疑いが宿っていた。

「最近、お前の予知が外れることが多い。貴族たちの支持も、揺らいでいる」

セラは涙を浮かべ、カーチスの腕にすがった。

「信じてください、カーチス様! 私はあなたを愛しています! エメロードは悪役なんです!」

カーチスはセラを抱きしめたが、その抱擁には以前のような熱がなかった。

「……わかった。もう少し、様子を見よう」

部屋を出た後、カーチスは廊下で立ち止まり、ため息をついた。

(エメロード……お前は、本当に冷たいだけの令嬢だったのか?)

後悔の芽が、静かに生まれてきていた。

その頃、ノルドフォールでは──。

エメロードはヴィクトルから王都の最新情報を聞いていた。

「セラの予知が外れ始め、カーチスとの関係に亀裂が入っているそうだ」

エメロードは静かに微笑んだ。

「私の力が、物語を書き換えているのね」

レグナムが隣で頷く。

「転生者のチートが、君の禁呪級の力に負け始めている」

ヴィクトルも加わった。

「貴族たちの間でも、セラの言葉を疑う声が増えている。カーチスの悪事──賄賂の証拠も、俺が集め終わりそうだ」

エメロードの瞳が輝いた。

「ありがとう、お兄様。これで、復讐の準備が整うわ」

夜、エメロードとレグナムはいつものように庭で星を見ていた。

レグナムがエメロードを抱き寄せ、耳元で囁く。

「セラの力が弱まっているなら、そろそろ王都に戻る時が近いな」

エメロードはレグナムの胸に寄りかかり、頷いた。

「ええ。でも、もう少しだけ……この平穏を楽しみたい」

レグナムはエメロードの髪にキスを落とした。

「もちろん。君の望むだけ、側にいる」

二人は甘くキスを交わし、星空の下で体を寄せ合った。

王都で、聖女の転生チートが少しずつバレ始めていた。

予知の綻びが、セラの本性を露わにし始めている。

カーチスとセラの関係に、明確な亀裂。

エメロードの復讐は、確実に近づいていた。

絆は、ますます強固に。

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