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第24話 土下座の懇願と、永遠の別れ
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第24話 土下座の懇願と、永遠の別れ
大逆転裁判の判決から三日後──王宮の私室で、最後の対面が許された。
部屋は薄暗く、窓から冬の雪が静かに降り積もる。
エメロードは黒いドレスに身を包み、レグナムがすぐ隣に立つ。
ヴィクトルとリアナは少し離れた位置で控え、アレクサンドルは隣国の使者として同席。
扉が開き、カーチスとセラが衛兵に連れられて入ってきた。
カーチスは王族の衣装を剥ぎ取られ、粗末な服姿。顔はやつれ、目は血走っている。
セラは髪を乱し、ドレスはぼろぼろ。追放前の最後の面会だ。
衛兵が二人を部屋の中央に立たせ、退出する。
セラが、まず口を開いた。
「エメロード……お願い、許して。辺境なんて、行きたくない……死んじゃうわ……」
彼女は這うようにエメロードの足元に近づき、ドレスの裾にすがった。
「私が悪かった! 嫉妬して、あなたを陥れたの! もうしないから、王都に置いて……!」
エメロードは冷たく足を引いた。
「あなたが私にしたこと、覚えてる? 公衆の面前で婚約破棄され、家族すら離反させられ、辺境で死ねと追放された」
「その痛みを、あなたはこれから味わうのよ」
セラは顔を上げ、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で叫んだ。
「嫌! 私の物語は、こんな終わり方じゃない! 私は主人公よ!」
レグナムが一歩前に出て、静かに言った。
「もう、終わりだ。お前の物語は、ここで完結する」
セラは絶望に顔を歪め、床に崩れ落ちた。
次に、カーチスがゆっくりと歩み寄った。
彼はエメロードの前で、深く頭を下げた。
「エメロード……本当に、すまなかった」
声が震えている。
「俺は、お前を愛していたはずだった。でも、セラの言葉に惑わされ、お前を傷つけた。婚約破棄の宣言、後悔している。あのとき、お前を信じていれば……」
カーチスは、ついに膝をついた。
そして、土下座した。
額を床に擦りつけ、涙を零しながら。
「頼む、エメロード! 許してくれ! 王位などいらない。お前が欲しい! もう一度、俺の側に……俺はお前なしでは生きていけない!」
部屋が、静まり返る。
ヴィクトルが眉を寄せ、リアナが目を逸らす。
エメロードは、静かにカーチスを見下ろした。
その瞳は、冷たく、しかしどこか哀れむように。
「今さら遅いわ、カーチス」
「あなたは、私を『冷たい』『感情のない飾り物』と公衆の面前で侮辱した」
「私の心を、踏みにじった」
「後悔? 当然よ。でも、あなたの後悔で、私の傷が癒えるわけじゃない」
カーチスは土下座のまま、嗚咽を漏らした。
「エメロード……お願いだ……なんでもする……」
エメロードは、レグナムの手を取り、優しく握った。
「私は、もうあなたを必要としない。私の側には、本当に私を愛し、守ってくれる人がいる」
レグナムが、エメロードの腰を抱き、優しく微笑んだ。
「彼女は、俺の女王だ。お前には、もう関係ない」
カーチスは土下座のまま、動けなくなった。
セラは床で泣きじゃくり、衛兵が再び入ってきて二人を引きずり出す。
セラの最後の叫び。
「カーチス様! 私を置いていかないで!」
カーチスは、土下座の姿勢のまま、ただ嗚咽を続ける。
扉が閉まり、部屋に静寂が戻った。
エメロードは、少しだけ息を吐いた。
レグナムが、エメロードを抱きしめた。
「よく耐えたな。もう、終わった」
エメロードはレグナムの胸に顔を埋め、静かに頷いた。
「ええ。やっと、終わったわ」
ヴィクトルが近づき、妹の肩を叩いた。
「誇りに思うよ、エメロード」
リアナが、涙を拭きながら微笑んだ。
「お嬢様……本当にお強くなりました」
アレクサンドルが、満足げに笑った。
「これで、王国は新しい時代へだ」
その夜、王宮のバルコニーで、エメロードとレグナムは二人きりになった。
雪が静かに降り、街の灯りが美しく輝く。
レグナムが、エメロードを抱き寄せ、耳元で囁いた。
「今日の君は、最高に美しかった。冷たく、強く、でも優しく」
エメロードはくすりと笑い、レグナムの首に腕を回した。
「あなたが側にいてくれたからよ」
二人は、深くキスを交わした。
甘く、長く、愛に満ちたキス。
雪が、二人の髪を優しく覆う。
レグナムが、プロポーズ級の言葉を続けた。
「エメロード。俺と、結婚してくれ。君を、永遠に愛し、守る」
エメロードの瞳に、涙が浮かんだ。
幸せの涙。
「ええ、レグナム。あなたと、一緒に幸せになるわ」
二人は再びキスをし、雪の中で長く抱き合った。
カーチスが土下座で泣きつき、セラが絶叫しながら引きずられていく。
エメロードの冷たい一言で、すべてが終わり。
大逆転裁判の判決から三日後──王宮の私室で、最後の対面が許された。
部屋は薄暗く、窓から冬の雪が静かに降り積もる。
エメロードは黒いドレスに身を包み、レグナムがすぐ隣に立つ。
ヴィクトルとリアナは少し離れた位置で控え、アレクサンドルは隣国の使者として同席。
扉が開き、カーチスとセラが衛兵に連れられて入ってきた。
カーチスは王族の衣装を剥ぎ取られ、粗末な服姿。顔はやつれ、目は血走っている。
セラは髪を乱し、ドレスはぼろぼろ。追放前の最後の面会だ。
衛兵が二人を部屋の中央に立たせ、退出する。
セラが、まず口を開いた。
「エメロード……お願い、許して。辺境なんて、行きたくない……死んじゃうわ……」
彼女は這うようにエメロードの足元に近づき、ドレスの裾にすがった。
「私が悪かった! 嫉妬して、あなたを陥れたの! もうしないから、王都に置いて……!」
エメロードは冷たく足を引いた。
「あなたが私にしたこと、覚えてる? 公衆の面前で婚約破棄され、家族すら離反させられ、辺境で死ねと追放された」
「その痛みを、あなたはこれから味わうのよ」
セラは顔を上げ、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で叫んだ。
「嫌! 私の物語は、こんな終わり方じゃない! 私は主人公よ!」
レグナムが一歩前に出て、静かに言った。
「もう、終わりだ。お前の物語は、ここで完結する」
セラは絶望に顔を歪め、床に崩れ落ちた。
次に、カーチスがゆっくりと歩み寄った。
彼はエメロードの前で、深く頭を下げた。
「エメロード……本当に、すまなかった」
声が震えている。
「俺は、お前を愛していたはずだった。でも、セラの言葉に惑わされ、お前を傷つけた。婚約破棄の宣言、後悔している。あのとき、お前を信じていれば……」
カーチスは、ついに膝をついた。
そして、土下座した。
額を床に擦りつけ、涙を零しながら。
「頼む、エメロード! 許してくれ! 王位などいらない。お前が欲しい! もう一度、俺の側に……俺はお前なしでは生きていけない!」
部屋が、静まり返る。
ヴィクトルが眉を寄せ、リアナが目を逸らす。
エメロードは、静かにカーチスを見下ろした。
その瞳は、冷たく、しかしどこか哀れむように。
「今さら遅いわ、カーチス」
「あなたは、私を『冷たい』『感情のない飾り物』と公衆の面前で侮辱した」
「私の心を、踏みにじった」
「後悔? 当然よ。でも、あなたの後悔で、私の傷が癒えるわけじゃない」
カーチスは土下座のまま、嗚咽を漏らした。
「エメロード……お願いだ……なんでもする……」
エメロードは、レグナムの手を取り、優しく握った。
「私は、もうあなたを必要としない。私の側には、本当に私を愛し、守ってくれる人がいる」
レグナムが、エメロードの腰を抱き、優しく微笑んだ。
「彼女は、俺の女王だ。お前には、もう関係ない」
カーチスは土下座のまま、動けなくなった。
セラは床で泣きじゃくり、衛兵が再び入ってきて二人を引きずり出す。
セラの最後の叫び。
「カーチス様! 私を置いていかないで!」
カーチスは、土下座の姿勢のまま、ただ嗚咽を続ける。
扉が閉まり、部屋に静寂が戻った。
エメロードは、少しだけ息を吐いた。
レグナムが、エメロードを抱きしめた。
「よく耐えたな。もう、終わった」
エメロードはレグナムの胸に顔を埋め、静かに頷いた。
「ええ。やっと、終わったわ」
ヴィクトルが近づき、妹の肩を叩いた。
「誇りに思うよ、エメロード」
リアナが、涙を拭きながら微笑んだ。
「お嬢様……本当にお強くなりました」
アレクサンドルが、満足げに笑った。
「これで、王国は新しい時代へだ」
その夜、王宮のバルコニーで、エメロードとレグナムは二人きりになった。
雪が静かに降り、街の灯りが美しく輝く。
レグナムが、エメロードを抱き寄せ、耳元で囁いた。
「今日の君は、最高に美しかった。冷たく、強く、でも優しく」
エメロードはくすりと笑い、レグナムの首に腕を回した。
「あなたが側にいてくれたからよ」
二人は、深くキスを交わした。
甘く、長く、愛に満ちたキス。
雪が、二人の髪を優しく覆う。
レグナムが、プロポーズ級の言葉を続けた。
「エメロード。俺と、結婚してくれ。君を、永遠に愛し、守る」
エメロードの瞳に、涙が浮かんだ。
幸せの涙。
「ええ、レグナム。あなたと、一緒に幸せになるわ」
二人は再びキスをし、雪の中で長く抱き合った。
カーチスが土下座で泣きつき、セラが絶叫しながら引きずられていく。
エメロードの冷たい一言で、すべてが終わり。
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