婚約破棄された公爵令嬢は真の聖女でした ～偽りの妹を追放し、冷徹騎士団長に永遠を誓う～

第28話: 領地の平和

第28話: 領地の平和

婚約発表から数ヶ月後、黒薔薇の谷は王国一の繁栄地として名を馳せていた。

かつての荒れた辺境は、今や豊かな楽園と化していた。  
聖女アプリリアの力で土壌は肥え、作物は一年中実り、  
病は根絶され、魔物の脅威もほとんどなくなっていた。

村は拡張され、新しい家々が立ち並び、  
人口は三倍に増えていた。  
商人たちが行き交い、市場は毎日賑わう。

館も、立派に改築された。  
黒薔薇の庭園は、さらに美しく、  
訪れる人々が絶えない観光地になっていた。

この日、アプリリアとガイアは、村の祭りに参加していた。

広場では、収穫祭が開かれていた。  
テーブルに山盛りの果物、焼き立てのパン、  
子供たちが作った飾り付け。

リオが、忙しそうに走り回っている。

「アプリリア様！ ガイア様！  
こっちのテーブル、空いてますよ～！」

カイルが、大きな肉の塊を焼きながら、笑顔で手を振る。

「団長！ 聖女様！  
今日は飲むぞー！ 結婚式まで、練習だ！」

ガイアが、苦笑する。

「カイル、飲みすぎるな」

村人たちが、次々に挨拶に来る。

「アプリリア様！ 今年も豊作です！  
すべて、聖女様のおかげです！」  
「ガイア様！ 魔物が出なくなって、安心して暮らせます！」

子供たちが、アプリリアのドレスを引っ張る。

「聖女様！ 魔法、見せてー！」

アプリリアは、優しく手を掲げた。

淡い光が広がり、花びらが舞うような魔法。

子供たちが、歓声を上げる。

「わー！ きれい！」

ガイアが、アプリリアの腰を抱く。

「お前、相変わらず人気者だな」

アプリリアが、ガイアに寄りかかる。

「あなたもよ。  
村の男の子たちが、ガイアの剣を真似してるわ」

二人は、笑い合った。

祭りのクライマックスは、ダンス。

広場に、音楽が響く。

ガイアが、アプリリアの手を取る。

「踊ろう」

アプリリアが、頷く。

二人は、優雅にワルツを踊る。

村人たちが、輪になって拍手。

リオとカイルが、コミカルに踊って笑いを誘う。

ゼストが、家族を連れて訪れ、  
レオンハルト公爵も、珍しく笑顔で参加していた。

「アプリリア……この領地は、お前の力だ」  
公爵が、感慨深げに言う。

アプリリアは、父に微笑む。

「皆の力ですよ。  
父上も、支援ありがとうございます」

祭りが終わると、二人は館のバルコニーに出た。

星空の下、領地の灯りが無数に輝く。

ガイアが、アプリリアを抱き寄せる。

「この平和は、お前が作った」

アプリリアが、ガイアの胸に頭を預ける。

「あなたが、守ってくれたからよ」

二人は、静かにキスを交わす。

リオが、下から声をかける。

「アプリリア様！ ガイア様！  
お夜食、用意しましたよ～！」

カイルが、笑いながら。

「またイチャイチャか！  
早く降りてこいよ！」

二人は、笑って手を繋ぎ、階段を降りた。

食卓では、皆が集まっていた。

村長、子供たち、ゼスト一家、  
リオとカイル。

コメディ満載の夕食。

カイルが、酒を飲みすぎて歌い出す。

リオが、ツッコミを入れる。

子供たちが、ガイアに剣を教えてとせがむ。

アプリリアが、皆を癒す光で包む。

温かな、家族のような時間。

領地の平和は、  
確かなものになった。

王国一の繁栄地。

アプリリアとガイアの、  
愛の結晶。

星が、輝く。

皆の笑い声が、  
夜空に響く。

結婚式は、もうすぐ。

幸せな日々が、  
続いていく。

黒薔薇の谷は、  
永遠の平和を、約束された。