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第22話 最初に倒れたのは、強い者だった
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第22話 最初に倒れたのは、強い者だった
異変は、静かに、そして唐突に起きた。
朝のギルド。
いつもなら喧騒に包まれるはずのホールに、妙な緊張が漂っている。
「……聞いたか?」 「第三分隊のベテランが、倒れたらしい」
私は、掲示板の前で足を止めたまま、会話に耳を澄ませる。
「回復薬を使った直後だって」 「効きが良すぎたとか……」
――来た。
(最初に倒れるのは、弱い人じゃない)
皮肉なことに、こういう時に異変を引き受けるのは、
“自分は大丈夫だ”と信じて疑わない者たちだ。
強く、経験があり、判断が早い。
だからこそ、異物を体に取り込むのも早い。
私は、受付の赤毛の女性のもとへ向かった。
「……状況は?」
彼女は、一瞬だけ視線を泳がせ、それから小さく息を吐いた。
「三人。
全員、格安で出回ってた“高級回復薬”を使ってる」
「症状は?」
「急激な回復のあと、反動みたいに魔力が乱れて……
今は、動けない」
――典型的。
(過剰な回復。
そして、魔力循環の破綻)
私は、何も言わずに頷いた。
その時、入口が開き、騎士団が入ってくる。
先頭に立つのは、ルーカス。
彼の視線が、私を一瞬だけ捉え、すぐに逸れた。
(……始まった)
ギルド内は、騒然となった。
だが、まだ混乱には至っていない。
理由は単純だ。
「効きは、確かにいいんだ」 「だから、使ったやつが多い」
――“成功体験”が、判断を鈍らせている。
私は、壁際に立ち、ただ観察する。
誰が倒れ、
誰が使い、
誰が疑い始めたか。
昼過ぎ、騎士団が正式に動いた。
「回復薬の使用を、即時停止する!」
ルーカスの声が、ホールに響く。
「原因が判明するまで、
該当品の所持・使用は禁止だ!」
ざわめきが、怒号へと変わる。
「ふざけるな!」 「助かった命もあるんだぞ!」
当然の反発。
私は、唇を噛みしめた。
(……でも)
(ここで止まらなければ、被害は広がる)
倒れた冒険者たちは、まだ生きている。
だからこそ、判断は割れる。
夕方、宿へ戻る途中、私は通りの角で立ち止まった。
露店は、もうない。
売り子も、跡形もなく消えている。
(……逃げた)
だが、それで終わりではない。
部屋に戻り、私は椅子に腰を下ろす。
手のひらを見つめ、静かに息を吐いた。
(最初に倒れたのが、
“強い人たち”でよかった)
冷たい考えだ。
けれど、事実でもある。
もし弱い者から倒れていれば、
ここまで早く動けなかった。
夜更け、窓の外に足音。
ごく軽い、合図のような。
扉を開けると、そこにルーカスがいた。
「……予想通りだ」
彼は、低い声で言う。
「被害は、最小限で止まっている」
「……助かる命は?」
「全員、助かる」
その一言に、胸の奥がほどけた。
「だが」
ルーカスは、続ける。
「相手は、もう“遊び”をやめる」
私は、静かに頷く。
「ええ。
次は――隠しません」
倒れたのは、最初の駒。
甘い餌は、役目を終えた。
これで、相手も理解したはずだ。
こちらは、気づいている。
そして、次に来るのは――
もっと露骨で、
もっと危険な一手。
私は、覚悟を決める。
もう、沈黙だけでは足りない。
次に必要なのは、
確かな“答え”だった。
異変は、静かに、そして唐突に起きた。
朝のギルド。
いつもなら喧騒に包まれるはずのホールに、妙な緊張が漂っている。
「……聞いたか?」 「第三分隊のベテランが、倒れたらしい」
私は、掲示板の前で足を止めたまま、会話に耳を澄ませる。
「回復薬を使った直後だって」 「効きが良すぎたとか……」
――来た。
(最初に倒れるのは、弱い人じゃない)
皮肉なことに、こういう時に異変を引き受けるのは、
“自分は大丈夫だ”と信じて疑わない者たちだ。
強く、経験があり、判断が早い。
だからこそ、異物を体に取り込むのも早い。
私は、受付の赤毛の女性のもとへ向かった。
「……状況は?」
彼女は、一瞬だけ視線を泳がせ、それから小さく息を吐いた。
「三人。
全員、格安で出回ってた“高級回復薬”を使ってる」
「症状は?」
「急激な回復のあと、反動みたいに魔力が乱れて……
今は、動けない」
――典型的。
(過剰な回復。
そして、魔力循環の破綻)
私は、何も言わずに頷いた。
その時、入口が開き、騎士団が入ってくる。
先頭に立つのは、ルーカス。
彼の視線が、私を一瞬だけ捉え、すぐに逸れた。
(……始まった)
ギルド内は、騒然となった。
だが、まだ混乱には至っていない。
理由は単純だ。
「効きは、確かにいいんだ」 「だから、使ったやつが多い」
――“成功体験”が、判断を鈍らせている。
私は、壁際に立ち、ただ観察する。
誰が倒れ、
誰が使い、
誰が疑い始めたか。
昼過ぎ、騎士団が正式に動いた。
「回復薬の使用を、即時停止する!」
ルーカスの声が、ホールに響く。
「原因が判明するまで、
該当品の所持・使用は禁止だ!」
ざわめきが、怒号へと変わる。
「ふざけるな!」 「助かった命もあるんだぞ!」
当然の反発。
私は、唇を噛みしめた。
(……でも)
(ここで止まらなければ、被害は広がる)
倒れた冒険者たちは、まだ生きている。
だからこそ、判断は割れる。
夕方、宿へ戻る途中、私は通りの角で立ち止まった。
露店は、もうない。
売り子も、跡形もなく消えている。
(……逃げた)
だが、それで終わりではない。
部屋に戻り、私は椅子に腰を下ろす。
手のひらを見つめ、静かに息を吐いた。
(最初に倒れたのが、
“強い人たち”でよかった)
冷たい考えだ。
けれど、事実でもある。
もし弱い者から倒れていれば、
ここまで早く動けなかった。
夜更け、窓の外に足音。
ごく軽い、合図のような。
扉を開けると、そこにルーカスがいた。
「……予想通りだ」
彼は、低い声で言う。
「被害は、最小限で止まっている」
「……助かる命は?」
「全員、助かる」
その一言に、胸の奥がほどけた。
「だが」
ルーカスは、続ける。
「相手は、もう“遊び”をやめる」
私は、静かに頷く。
「ええ。
次は――隠しません」
倒れたのは、最初の駒。
甘い餌は、役目を終えた。
これで、相手も理解したはずだ。
こちらは、気づいている。
そして、次に来るのは――
もっと露骨で、
もっと危険な一手。
私は、覚悟を決める。
もう、沈黙だけでは足りない。
次に必要なのは、
確かな“答え”だった。
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