3 / 40
第4話 エヴァントラ、王宮の仕事放棄宣言(合法)
しおりを挟む
◆第4話 エヴァントラ、王宮の仕事放棄宣言(合法)
婚約破棄から一夜明けた王宮は、
──異変に満ちていた。
いつもは整然と並んでいるはずの文官たちの机。
その上に、今は書類の山が崩れ落ち、悲鳴が飛び交っている。
「フェルメリア様の……承認印が、どこにも……!」
「うそだろ、昨日まで全部片付いてたんだぞ!?」
「今日が締め切りの外交書簡……誰が対応するんだ!?」
「殿下は……“アイラと散歩中”……?」
文官A「は?」
文官B「詰んだな」
場の空気が完全に終わっていた。
――そう、エヴァントラは王宮の大半の行政実務を“影で”担っていたのだ。
スケジュール管理、外交文書の校閲、予算案の調整、各省庁の取りまとめ。
それらは全て、王太子ウィッシュの“成果”として処理されてきたが──
実際は、エヴァントラが全部やっていた。
そして彼女は今日、正式にそれを辞める。
---
エヴァントラは淡々と荷物を整理し、王宮文書局へ向かった。
局長は蒼白な顔で迎えた。
「フェ、フェルメリア様……! あの、婚約破棄は……本当で……?」
「ええ。ですので、本日をもって王宮業務はすべて辞任させていただきますわ」
「………………………………はい?」
局長の顔から血の気が引いていく。
「ま、待ってくださいフェルメリア様!?
あなたの辞任は、その……その……国が……!」
「大丈夫ですわ。殿下は新しい寵妃候補をお迎えになったのですもの。
きっと彼女が、王太子妃の務めを果たしてくださいますわ」
局長「いや無理だろどう考えても!!」
言葉を飲み込みつつ、局長は机を叩いた。
「殿下は……殿下は、あなたがいなければ何も……!」
「承知しておりますわ」
承知しておりますわ。
でも、戻る気は一切ありませんわ。
微笑むエヴァントラに、局長はもう膝から崩れ落ちる寸前だ。
「ですが……国のためにも、殿下のためにも……」
局長は懇願するように言った。
「どうか、一度だけでも、ご再考を……!」
エヴァントラは首を横に振った。
「残念ながら。
わたくしは、もう自由を手にいたしましたもの」
局長(ああああああ国が終わる!!)
---
その頃、王太子執務室。
ウィッシュは豪華な椅子にふんぞり返って、紅茶を飲んでいた。
対面にいるアイラは嬉しそうに微笑んでいる。
「ねぇ殿下、あの“むずかしい書類”って……今日やらなくていいんですか?」
「ふん、いいのだ。エヴァントラが消えたところで王宮が困るわけがない。
あれはただの“真面目なだけの女”だからな」
(((お前が一番真面目じゃない)))
この会話を壁越しに聞いてしまった侍女が、こっそり涙を流していた。
ウィッシュはさらに続けた。
「それに、オレにはアイラがいる。この国はオレとアイラで改革するのだ!」
アイラはほんのり頬を染めた。
「殿下ぁ……!」
執務室の外──
文官たち(胃痛)
兵士たち(終わった)
侍女たち(逃げたい)
誰一人、未来に希望を抱いていなかった。
---
その頃、エヴァントラは王宮をゆっくりと歩いていた。
廊下の侍女や兵士たちは深々と頭を下げ、涙ぐむ者も多かった。
「フェルメリア様……本当に、お辞めになるのですか……?」
「はい。これからは自分の時間を大切にしたくて」
(あと読書も昼寝もしたいので)
エヴァントラは柔らかく微笑む。
「皆さま、どうかお元気で。
そして……わたくしのことは、どうぞお気になさらないでくださいませ」
侍女「無理です!!!」
エヴァントラ(本音を言えば“忘れてください”なのだけれど……)
王宮を離れる足取りは軽い。
外の空気を吸い込み、エヴァントラは小さく頬を緩めた。
「さようなら、王宮……。
そして、こんにちは……自由……!」
---
その背後で──
王宮のカレンダーは真っ白になり、重要書類は山積みになり、外交スケジュールは行方不明になり、各省庁は混乱に陥っていた。
すべては、わずか数時間で。
だがまだ誰も知らない。
これが、崩壊の本当に初期段階にすぎないということを──。
---
婚約破棄から一夜明けた王宮は、
──異変に満ちていた。
いつもは整然と並んでいるはずの文官たちの机。
その上に、今は書類の山が崩れ落ち、悲鳴が飛び交っている。
「フェルメリア様の……承認印が、どこにも……!」
「うそだろ、昨日まで全部片付いてたんだぞ!?」
「今日が締め切りの外交書簡……誰が対応するんだ!?」
「殿下は……“アイラと散歩中”……?」
文官A「は?」
文官B「詰んだな」
場の空気が完全に終わっていた。
――そう、エヴァントラは王宮の大半の行政実務を“影で”担っていたのだ。
スケジュール管理、外交文書の校閲、予算案の調整、各省庁の取りまとめ。
それらは全て、王太子ウィッシュの“成果”として処理されてきたが──
実際は、エヴァントラが全部やっていた。
そして彼女は今日、正式にそれを辞める。
---
エヴァントラは淡々と荷物を整理し、王宮文書局へ向かった。
局長は蒼白な顔で迎えた。
「フェ、フェルメリア様……! あの、婚約破棄は……本当で……?」
「ええ。ですので、本日をもって王宮業務はすべて辞任させていただきますわ」
「………………………………はい?」
局長の顔から血の気が引いていく。
「ま、待ってくださいフェルメリア様!?
あなたの辞任は、その……その……国が……!」
「大丈夫ですわ。殿下は新しい寵妃候補をお迎えになったのですもの。
きっと彼女が、王太子妃の務めを果たしてくださいますわ」
局長「いや無理だろどう考えても!!」
言葉を飲み込みつつ、局長は机を叩いた。
「殿下は……殿下は、あなたがいなければ何も……!」
「承知しておりますわ」
承知しておりますわ。
でも、戻る気は一切ありませんわ。
微笑むエヴァントラに、局長はもう膝から崩れ落ちる寸前だ。
「ですが……国のためにも、殿下のためにも……」
局長は懇願するように言った。
「どうか、一度だけでも、ご再考を……!」
エヴァントラは首を横に振った。
「残念ながら。
わたくしは、もう自由を手にいたしましたもの」
局長(ああああああ国が終わる!!)
---
その頃、王太子執務室。
ウィッシュは豪華な椅子にふんぞり返って、紅茶を飲んでいた。
対面にいるアイラは嬉しそうに微笑んでいる。
「ねぇ殿下、あの“むずかしい書類”って……今日やらなくていいんですか?」
「ふん、いいのだ。エヴァントラが消えたところで王宮が困るわけがない。
あれはただの“真面目なだけの女”だからな」
(((お前が一番真面目じゃない)))
この会話を壁越しに聞いてしまった侍女が、こっそり涙を流していた。
ウィッシュはさらに続けた。
「それに、オレにはアイラがいる。この国はオレとアイラで改革するのだ!」
アイラはほんのり頬を染めた。
「殿下ぁ……!」
執務室の外──
文官たち(胃痛)
兵士たち(終わった)
侍女たち(逃げたい)
誰一人、未来に希望を抱いていなかった。
---
その頃、エヴァントラは王宮をゆっくりと歩いていた。
廊下の侍女や兵士たちは深々と頭を下げ、涙ぐむ者も多かった。
「フェルメリア様……本当に、お辞めになるのですか……?」
「はい。これからは自分の時間を大切にしたくて」
(あと読書も昼寝もしたいので)
エヴァントラは柔らかく微笑む。
「皆さま、どうかお元気で。
そして……わたくしのことは、どうぞお気になさらないでくださいませ」
侍女「無理です!!!」
エヴァントラ(本音を言えば“忘れてください”なのだけれど……)
王宮を離れる足取りは軽い。
外の空気を吸い込み、エヴァントラは小さく頬を緩めた。
「さようなら、王宮……。
そして、こんにちは……自由……!」
---
その背後で──
王宮のカレンダーは真っ白になり、重要書類は山積みになり、外交スケジュールは行方不明になり、各省庁は混乱に陥っていた。
すべては、わずか数時間で。
だがまだ誰も知らない。
これが、崩壊の本当に初期段階にすぎないということを──。
---
435
あなたにおすすめの小説
冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました
鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」
そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。
しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!?
だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。
「彼女を渡すつもりはない」
冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!?
毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし!
さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜――
リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される!
政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー!
「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」
「婚約破棄された聖女ですが、実は最強の『呪い解き』能力者でした〜追放された先で王太子が土下座してきました〜
鷹 綾
恋愛
公爵令嬢アリシア・ルナミアは、幼い頃から「癒しの聖女」として育てられ、オルティア王国の王太子ヴァレンティンの婚約者でした。
しかし、王太子は平民出身の才女フィオナを「真の聖女」と勘違いし、アリシアを「偽りの聖女」「無能」と罵倒して公衆の面前で婚約破棄。
王命により、彼女は辺境の荒廃したルミナス領へ追放されてしまいます。
絶望の淵で、アリシアは静かに真実を思い出す。
彼女の本当の能力は「呪い解き」——呪いを吸い取り、無効化する最強の力だったのです。
誰も信じてくれなかったその力を、追放された土地で発揮し始めます。
荒廃した領地を次々と浄化し、領民から「本物の聖女」として慕われるようになるアリシア。
一方、王都ではフィオナの「癒し」が効かず、魔物被害が急増。
王太子ヴァレンティンは、ついに自分の誤りを悟り、土下座して助けを求めにやってきます。
しかし、アリシアは冷たく拒否。
「私はもう、あなたの聖女ではありません」
そんな中、隣国レイヴン帝国の冷徹皇太子シルヴァン・レイヴンが現れ、幼馴染としてアリシアを激しく溺愛。
「俺がお前を守る。永遠に離さない」
勘違い王子の土下座、偽聖女の末路、国民の暴動……
追放された聖女が逆転し、究極の溺愛を得る、痛快スカッと恋愛ファンタジー!
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。
コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。
だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。
それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。
ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。
これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。
婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。
桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。
「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」
「はい、喜んで!」
……えっ? 喜んじゃうの?
※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。
※1ページの文字数は少な目です。
☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」
セルビオとミュリアの出会いの物語。
※10/1から連載し、10/7に完結します。
※1日おきの更新です。
※1ページの文字数は少な目です。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
公爵さま、私が本物です!
水川サキ
恋愛
将来結婚しよう、と約束したナスカ伯爵家の令嬢フローラとアストリウス公爵家の若き当主セオドア。
しかし、父である伯爵は後妻の娘であるマギーを公爵家に嫁がせたいあまり、フローラと入れ替えさせる。
フローラはマギーとなり、呪術師によって自分の本当の名を口にできなくなる。
マギーとなったフローラは使用人の姿で屋根裏部屋に閉じ込められ、フローラになったマギーは美しいドレス姿で公爵家に嫁ぐ。
フローラは胸中で必死に訴える。
「お願い、気づいて! 公爵さま、私が本物のフローラです!」
※設定ゆるゆるご都合主義
兄にいらないと言われたので勝手に幸せになります
毒島醜女
恋愛
モラハラ兄に追い出された先で待っていたのは、甘く幸せな生活でした。
侯爵令嬢ライラ・コーデルは、実家が平民出の聖女ミミを養子に迎えてから実の兄デイヴィッドから冷遇されていた。
家でも学園でも、デビュタントでも、兄はいつもミミを最優先する。
友人である王太子たちと一緒にミミを持ち上げてはライラを貶めている始末だ。
「ミミみたいな可愛い妹が欲しかった」
挙句の果てには兄が婚約を破棄した辺境伯家の元へ代わりに嫁がされることになった。
ベミリオン辺境伯の一家はそんなライラを温かく迎えてくれた。
「あなたの笑顔は、どんな宝石や星よりも綺麗に輝いています!」
兄の元婚約者の弟、ヒューゴは不器用ながらも優しい愛情をライラに与え、甘いお菓子で癒してくれた。
ライラは次第に笑顔を取り戻し、ベミリオン家で幸せになっていく。
王都で聖女が起こした騒動も知らずに……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる