『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』

鷹 綾

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第13話 アイラ、大暴走。──国政をさらに破壊する

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◆第13話 アイラ、大暴走。──国政をさらに破壊する

国王に叱責されてから一夜。
王太子ウィッシュは、ベッドに沈み込みながらうわ言のように繰り返していた。

「フェルメリア……
まさか……そこまで国を支えていたなんて……」

その隣では、アイラがいまだ現実を理解していない顔で立っていた。

「殿下、落ち込んじゃダメですよ!
わたしがついてますから!」

ウィッシュは顔を覆う。

「お前がつくと、何もかも悪化するのだ……」

「ひどいっ!」

しかし、アイラの破壊力は止まらない。


---

翌朝。
王城の廊下を歩くアイラは、ある文官を捕まえた。

「あのね、“条約の返事”っての?
わたしが書きます!」

文官「ひ!? い、いえ、それは……!」

文官は青ざめて手を振った。

「外交文書は専門家が──!」

「大丈夫大丈夫!
だって殿下が、“アイラの感性で改革だ”って言ったのよ!」

(なんて恐ろしい言葉を残してくれたのかウィッシュ殿下……)

文官は涙目だったが、アイラは気にせず机へ向かった。

アイラはペンを取ると、大きな丸文字で書き始めた。

『条約のこと? OKです! よろしくね♡
 ヴァルメルより! アイラ』

文官「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

机に突っ伏して号泣する文官。
外交官がそれを見て真っ青になる。

外交官「この文書、即時回収!!
返送したら戦争になるわ!!!!」

文官「も、もうアイラ様を止めてぇ……フェルメリア様が帰ってくるまで……」

侍女「(帰ってこないわよ……)」


---

しかしアイラの暴走はそこでは止まらない。

「ねぇ殿下。
国が大変って聞いたから、わたし考えたの!」

ウィッシュ「……? 何をだ」

アイラは誇らしげに胸を張った。

「フェルメリア様を悪者にする“告知文”を書いたの!」

ウィッシュ「………………は?」

アイラは紙を差し出した。

『フェルメリア・エヴァントラは王国を裏切り、
 殿下を捨てて逃げました!
 みんなで殿下を応援しましょう♡』

ウィッシュ「バカ!!!!!」

王太子執務室に絶叫が響く。

「これ以上国を壊す気か!!
彼女を悪者にしたら、国民が暴れる!!!」

アイラ「えっ、でも……殿下の味方を増やせばいいかなって……」

「逆だッ!!!
フェルメリアを悪者にしたら王国が崩壊するッ!!」

近くの侍女たちが震えながら囁いた。

「(殿下、やっと分かったのね……)」
「(けど遅い……あまりにも遅すぎる……)」

文官たちも頭を抱える。

「フェルメリア様の支持率は今、国王より高いんだ……」
「アイラ様の告知文なんて出したら暴動になるぞ……」

アイラはきょとんと首を傾げる。

「えぇっ? わたし、殿下を助けたのに……?」

文官(頼むから助けないで!!!)


---

混乱の中、国王が執務室に突撃した。

国王「ウィッシュ!!!」

ウィッシュ「父上!! どうか待ってください!!」

国王は机を叩きつける。

「アイラ嬢が書いた“フェルメリア非難文”が回収前に城下へ漏れた!!
民衆が激怒して、フェルメリア帰還デモが拡大している!!」

ウィッシュ「ぎゃあああああ!!!」

アイラ「えっ? なんで?
わたし、悪いのフェルメリア様だと思ったんだけど……?」

国王は深いため息をついた。

「もう……廃太子は避けられん……」

ウィッシュは崩れ落ちる。

「フェルメリア……
どうか俺を見捨てないでくれ……!」

侍女(もうとっくに見捨てられてるわよ……)


---

その頃──

隣国ヴァルメルの官邸では、
エヴァントラが午後のお菓子を食べつつ読書をしていた。

アイオンが報告を持ってくる。

「母国の情勢ですが……
“フェルメリア様を戻せ”という民衆デモが発生したそうです」

エヴァントラはクッキーを齧りながら答えた。

「戻りませんわよ。
戻ったら働かされますもの」

アイオンは小さく微笑む。

「……あなたの意思を尊重します」

エヴァントラは紅茶を啜り、穏やかに言った。

「王国がどうなろうと、わたくしには関係ありませんわ」

──その裏で王国は、
フェルメリア不在のまま破滅へ一直線だった。


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