『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』

鷹 綾

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◆第18話 王太子、起死回生を狙う──だが全部裏目に

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◆第18話 王太子、起死回生を狙う──だが全部裏目に

廃太子審議まで残された猶予は 一週間。

ウィッシュは評議会から逃げ出すように王宮の廊下を歩き、
自室へ戻るとベッドに倒れ込んだ。

(このままじゃ……本当に俺は王太子を失う……)

焦りと絶望が胸を締めつける。

しかし、そこへ──

バァン!!

「ウィッシュ様ぁっ!
 じゃーん! 応援隊長・アイラちゃん、参上♡」

(やめてくれ……!)

ウィッシュは本気で泣きそうになった。

アイラは手作りらしき紙を誇らしげに掲げる。

「見てください!
“国王よりもウィッシュ様のほうが偉い!”
っていうアピール文を作ったんです♡
これを王都中に貼れば、人気アップ間違いなし!」

「やめろおおおおおおお!!!!!」

ウィッシュの絶叫が王宮に響く。


---

◆王太子の起死回生作戦、始動

ウィッシュは必死に頭を働かせ、
自分なりの“国民人気回復策”を考えた。

「……まずは、民の困窮をなんとかしよう。
 改革案を出せば、俺にもできるというところを……!」

自信を取り戻すように拳を握る。

そこへ文官が慌てながら飛び込んできた。

「と、殿下!!
 その案が“エヴァントラ様の責務放棄が原因”と
 広まってしまいました!!」

「俺そんなこと言ってない!!」

文官が震える声で続ける。

「……アイラ様が街中で触れ回ったそうです」

「アイラァァァァァァァァ!!」


---

◆国王、怒りの雷が落ちる

国王の執務室に呼び出されたウィッシュは、
すでに胃が痛かった。

「ウィッシュ……なぜ余計な混乱を招く?」

「ち、違う! 俺は民のために──」

国王は大きくため息を吐いた。

「民の間では、
“エヴァントラ様を捨てた罰が下った”
という噂が広がっている。」

「……っ」

「お前は、あの有能な令嬢に何をしたのか、
 自覚はあるのか?」

父の厳しい言葉に、ウィッシュは唇を噛んだ。

(……全部、俺が悪かった)

けれどアイラは後ろで元気に手を上げる。

「はーい! ウィッシュ様は悪くありません!
エヴァントラって冷たい感じでしたし~♡
ウィッシュ様は優しくて最高の王子様ですっ♡」

国王「…………黙れ。」

(父上、ついに言った!)


---

◆王太子の改革アピール、完全に裏目に

ウィッシュは評議会に“新政策”を提出した。

「税を軽減し、国民の負担を減らします!」

しかし──

文官たちの顔色が悪い。

「殿下……財源はどうするおつもりで?」

「えっ」

「魔物討伐費は? 軍備は? 外交予算は?」

「…………」

完全に返事できない。

議会は冷たい視線を送った。

「殿下、あなたには“計画性”がないのです」

ウィッシュの心が折れた。

そこへ最悪の知らせが届く。

「王太子殿下!!
隣国ヴァルメルからの正式抗議第二弾が……!」

「……なんだって?」

「アイラ様が、隣国王太子殿下に
“早く返事ください♡ 友達になりましょう♡”
という手紙を送り付けたことが原因で……」

「アイラァァァァァァァ!!!」

ウィッシュはがくりと膝をついた。

(なんでだ……なんで俺の足を引っ張るんだ……
 誰も……誰も俺の味方をしてくれない……)

いや──違う。

自分が選んだのだ。

フェルメリアを捨て、
アイラという“災厄”を自ら選んだのだ。


---

◆同じ頃、隣国ヴァルメル

エヴァントラは書斎で静かに仕事をしていた。

アイオンが入ってきて苦笑する。

「……王国からまた失礼な文書が届きました」

「あぁ、アイラ様のあれですわね」

「はい。隣国中が困惑しています」

エヴァントラは肩をすくめた。

「でも──あの国がどうなろうと、
わたくしには関係ありませんわ」

アイオンはその横顔を見つめる。

「こちらに来てくださって、本当に良かった。
あなたは……大切にされるべき人だ」

エヴァントラは少し目を見開いた。

そして──微笑む。

「ありがとうございます、アイオン様」

二人の空気は、ゆっくりと甘く、温かくなっていく。

その一方で王国は、
“廃太子”のカウントダウンが刻一刻と迫っていた。


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