『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』

鷹 綾

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◆第17話 廃太子、評議会へ──王太子の最後の足掻き

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◆第17話 廃太子、評議会へ──王太子の最後の足掻き

王宮最上階──評議会室。

国の最高権力者たちが集う場は、
朝から重苦しい空気に包まれていた。

今日はついに、
“王太子ウィッシュの処遇” が議題となる日。

王国の存亡に関わる重大決議だった。


---

◆ 開会直後、国王が静かに告げる

「では……始めよう。
 本日の議題は、“廃太子について”だ。」

室内に重いざわめきが広がる。

ウィッシュは青ざめながら席に座っていた。

(どうして……どうして俺が……
 フェルメリアがいなくなっただけで、国が……)

しかし側近たちの視線は冷たい。

「単刀直入に申し上げます。
 ウィッシュ殿下の判断は、すべて国益を損なっております。」

「外交失敗、財政悪化、魔物対策の崩壊──
 すべてが殿下の采配から始まっております。」

「王太子妃候補であるアイラ様の暴走も、
 殿下が庇護したがゆえに拡大した問題です。」

容赦ない言葉の連続。

ウィッシュは震える唇を噛んだ。

「ち……違う……!
 フェルメリアがいれば……こんなことには……!」

評議会は一斉に静まり返った。

「フェルメリア嬢に責任転嫁するつもりですか?」

「彼女は国のために献身してきました。
 殿下が捨てたのです。」

「“可愛げがない”などという理由で。」

ウィッシュは顔を覆う。

(そうだ……あれは……俺が……)

国王が静かに立ち上がった。

「フェルメリア嬢は帰還要請を拒否した。
 つまり……お前の指導を受けるより、
 異国にいた方が“安全”という判断だ。」

(父上……)

ウィッシュは心が軋むのを感じた。


---

◆ アイラ、評議会に乱入して大事件

そのとき。

ドン!!!!

「ちょっと待って!!
 ウィッシュ様を廃太子なんてあり得ません!!」

場違いにもドレス姿のアイラが乱入。

文官たちは頭を抱えた。

アイラ「そもそもわたしが王太子妃になるんですから!
 殿下を廃太子にしたら、わたしの立場がなくなるじゃないですか!」

貴族A「……それが問題なのだが」

貴族B「自覚なし……か」

アイラ「大体、フェルメリアっていう人が悪いんですよ!
 仕事しすぎて、ウィッシュ様を甘やかして──
 そりゃ殿下だって嫌になりますよ!」

評議会がざわつく。

国王の額に青筋が浮かんだ。

「……アイラよ。
 お前は政治というものを理解しているのか?」

アイラ「理解? いりません!
 わたしは可愛いんだから、王太子妃になれます!」

(((無理だ)))

評議会メンバー全員の心がひとつになった。

議員長が厳かに告げる。

「──この件、
 廃太子に賛成の者、挙手を。」

すべての手が、一斉に上がった。

ウィッシュ「……っ!」

アイラ「みんな何してるの!? 裏切りよ!!」

国王が深い決意の表情で言った。

「……ウィッシュ。
 お前には、王太子としての資質がない。」

ウィッシュの心臓が止まったかのように沈む。

(終わった……俺の未来が……)

だがこれは、まだ“決定”ではない。

正式な布告には、まだ手続きが必要だった。

議員長「ただし──猶予期間を一週間設ける。
 殿下が国のために何を成せるのか、
 見極めよう。」

ウィッシュの最後のチャンスが与えられた。

しかし、その背後でアイラが勝手に叫ぶ。

「大丈夫よウィッシュ様!
 わたしが応援してあげます!!
 文書も書いてあげますから♡」

ウィッシュ((やめろおおおおお!!))

※この瞬間、彼の敗北はほぼ確定した。


---

◆同じ頃、隣国ヴァルメルでは…

エヴァントラは庭園で紅茶を飲んでいた。

アイオンが最新の王国情報を伝える。

「……どうやら、王太子の“廃太子”が
 正式議題になったようです。」

「まぁ。それは穏やかではありませんわね」

彼女はページをめくりながら淡く笑う。

「でも……わたくしには関係のない話ですわ」

アイオンはしばし彼女を見つめ──
小さく息を吐いた。

「本当は……つらかったでしょう。
 あの国に、あの男に……裏切られて」

エヴァントラの指が止まる。

けれど静かに答えた。

「……過去のことですわ。
 いまは、こちらで穏やかに過ごせていますもの」

アイオンはそっと言う。

「あなたを守れる場所にいられて、よかった」

エヴァントラの頬が淡く染まった。

(……どうして、この人の言葉はこんなに優しいのかしら)

王国が崩れていくほどに、
二人の心は静かに近づいていく。


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