『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』

鷹 綾

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◆第16話 国民、ついに激怒──暴かれる“偽りの王太子妃”

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◆第16話 国民、ついに激怒──暴かれる“偽りの王太子妃”

王都の広場には珍しく、大勢の市民が集まっていた。

理由はただひとつ。

「国がおかしい」

それに尽きた。

物価は急上昇、魔物討伐隊は機能不全、
外交はアイラのラブレター騒動で大炎上。

ついに市民たちの不満は限界を迎えていた。


---

◆王都広場にて

「王太子殿下は何をしているのだ!」
「仕事もできぬ平民の少女を妃に迎えるからこうなる!」
「エヴァントラ様を追い出したから、国が呪われたんだ!」

怒号が飛び交い、貴族も庶民も一緒になって叫んでいる。

その噂の中心にいる本人──アイラは、
侍女を連れてお買い物の真っ最中だった。

アイラ「ちょっとぉ! なんでこんなに治安悪いの!?
わたしが王太子妃になるのよ!?
もっと歓迎ムードでいいでしょ!?」

市民全員「「「はぁぁぁぁぁぁ!?」」」

空気が一瞬で凍りつく。

ある老婦人が怒鳴りつけた。

「お前みたいな小娘が王太子妃? 寝言は寝て言え!」

若者たちも続く。

「エヴァントラ様を追い払いやがって……!」
「彼女がどれだけ国に貢献していたか知ってるか!?」

アイラは両手を腰に当て、不満げに叫んだ。

「だってあの人、可愛げがないんだもんっ!
わたしのほうが可愛いでしょ!?
国民も絶対わたしを好きになるはずなのに!」

市民たち「「「好きになるかあぁぁぁぁ!!!!!」」」

怒気が爆発した。


---

◆王城 謁見の間

その騒動はすぐに王城へ届いた。

国王の怒りは限界に達していた。

「アイラ……貴様、今度は市民を煽ったそうだな?」

アイラ「え、ちょっと挨拶しただけですよ?」

国王「“わたしのほうが可愛いから王太子妃にふさわしい”と
叫んだと報告が入っている!」

アイラ「あら、可愛いのは事実ですけど?」

ウィッシュ「アイラ……頼むから黙って……」

アイラは首を傾げた。

「ウィッシュ様? どうして落ち込んでるの?
わたし、庶民に人気になるはずなのに……」

ウィッシュは両手で顔を覆った。

「なるわけないだろ!!
フェルメリアがどれほど国に貢献していたか……
お前は何も知らない……!!」

その言葉に、アイラは頬を膨らませる。

「だってウィッシュ様が、“エヴァントラって冷たいし、
 俺のこと好きじゃなさそう”って言ったから──」

国王「………………」

側近「………………」

文官「………………」

全員が悟った。

(あ、これ完全に王太子が悪いパターン)

国王は重々しく椅子に腰をかけ、ついに言った。

「……ウィッシュ。
 お前を王太子のままにしておくのは、危険だ」

ウィッシュ「っ……父上……!」

国王「覚悟しておけ。
 次の評議会で“廃太子”が正式議題に上がる」

ウィッシュの視界が揺れた。

(どうして……どうしてこうなったんだ……
 俺はただ……恋をしただけなのに……)

足元が崩れ落ちるような感覚。

しかし、それは自分が蒔いた種だった。


---

◆同じ頃、隣国ヴァルメル

エヴァントラは優雅に紅茶を飲んでいた。

アイオンが新聞を読みながら言う。

「……王国、ついに大規模な市民デモが起きたようです」

「まぁ。わたくしがいなくなってから、忙しそうですわね」

エヴァントラは特に興味もなさそうに本を開いた。

アイオンは彼女の横顔を見つめる。

(本当に……強く、美しい人だ)

けれど彼は気づいていた。

彼女が本当は傷ついていたことにも。

だからこそ、そっと告げた。

「フェルメリア様。
 こちらに来てくださって……ありがとう」

エヴァントラの手が止まり──
照れたように微笑む。

「わたくしこそ、アイオン様に救われていますのよ?」

二人の距離が少しずつ、確実に縮まっていく。

一方で王国は、
ついに崩壊寸前へと追い込まれていた。


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