『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』

鷹 綾

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第20話 廃太子、決定──崩れ落ちる王家と、決して振り向かぬエヴァントラ

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第20話 廃太子、決定──崩れ落ちる王家と、決して振り向かぬエヴァントラ

評議会室には、重い沈黙が流れていた。

議長がゆっくりと宣言する。

「──これより、
 王太子ウィッシュ殿下の廃太子決議を行う。
 賛成の者は挙手を」

最初は数名。

だが──

次々に手が上がり、
ついには 評議会の全員が賛成 を示した。

まるで国そのものが、
ウィッシュ王太子を切り捨てたかのように。

ウィッシュの喉が震える。

(……本当に……終わった……?)

議長「全会一致──
   廃太子、可決とする。」

その瞬間、ウィッシュの世界が砕けた。

力が抜け、椅子に崩れ落ちる。

「や……やめてくれ……俺は……っ
 俺は王太子だ……!
 フェルメリアが戻れば……!」

国王がゆっくりと立ち上がる。

「フェルメリア嬢は二度と戻らぬ。
 それが“あの結果”の答えだ。
 お前が手放したのだ、ウィッシュ」

ウィッシュ「……っ」

国王の言葉は冷たく、しかし真実だった。


---

◆アイラ、ついに“王宮出禁”

すると──

アイラが泣きながら国王にしがみついた。

「や、やです!!
 ウィッシュ様が廃太子だなんて!!
 わたし、王太子妃になれなくなるじゃないですか!!
 困ります!!」

議場「((そこ!?))」

国王は冷ややかな目で彼女を見る。

「アイラ。
 お前は王宮出入り禁止とする。
 王太子妃候補からも外す」

「え、えええっ!? なんでですかぁっ!!?」

「なんで、ではない。
 お前が王宮を乱し、国益を損ない、
 国中の不満を招いたからだ」

アイラ「わたし悪くないもん!
 だってウィッシュ様が、“エヴァントラより可愛い”って──」

国王「黙りなさい」

アイラは衛兵に連れて行かれた。

抵抗しながら叫ぶ声が響く。

「きゃーっ! わたしは王太子妃よーっ!!
 離しなさいよーっ!!」

議場は静まり返った。

やっと──国の病巣が取り除かれたのだ。


---

◆ウィッシュ、称号剥奪

議長が淡々と告げる。

「これよりウィッシュ殿下を王太子の座より外し、
 “第二王子”として扱うものとする」

ウィッシュは膝から崩れ落ちた。

(フェルメリア……
 どうして……俺を見捨てたんだ……
 俺が悪かったのか……?
 いや……全部アイラが……
 アイラが……っ)

いや──違う。

最後の最後に、
彼は低くつぶやいた。

「ぜんぶ……俺のせいだ……」

崩れ落ちた王子の姿に、
議員たちは目をそらした。

“甘えた王子”の物語は、ここで終わった。


---

◆同じ頃、隣国ヴァルメル

エヴァントラは庭園のベンチで
温かな風と草木の匂いを感じていた。

アイオンが静かに歩み寄る。

「……決まりました。
 王太子ウィッシュ殿下、廃太子だそうです」

「そう、ですの」

エヴァントラはほんの少しだけ、目を閉じた。

(わたくしを“可愛げがない”と捨てた国が……
 自ら崩れていくのを止める力は、
 もう持っていないのね)

しかし次の瞬間、彼女は微笑む。

「……でもそれも、もうわたくしには関係のない話」

アイオンはその横顔を見つめる。

「あなたの未来は、この国にある。
 王国がどうなろうと──
 私はあなたを守る」

エヴァントラの胸があたたかく揺れた。

「アイオン様……
 わたくし……本当に、こちらに来てよかった。」

二人の指が、そっと触れ合う。

王国は沈んでいく。
しかしエヴァントラは──

これから上がっていく未来を歩み始めるのだった。


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