『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』

鷹 綾

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第38話 突然の来訪者と、守るべきもの

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第38話 突然の来訪者と、守るべきもの

 翌朝。
 いつも通りエレナが屋敷の巡視をしていると、門番が血相を変えて駆け寄ってきた。

「奥様っ……! 大変です! あの、その……!」

「落ち着いて。何があったのです?」

「ルカ様のーーご実家、サルヴァトーレ侯爵家の使者が……!
 しかも、その……前妻候補だった“元・婚約者”様まで……!」

「…………え?」

 エレナの思考が、一瞬真っ白になる。


---

◆屋敷の応接間。嵐の前の静けさ

 重厚な扉の向こうで待っていたのは、
 上品ぶった笑みを浮かべる金髪の令嬢――リディア・フェルメール。

 かつて、ルカと政略婚約させられそうになっていた、あの娘だ。

「まあ、エレナ様。初めまして。
 突然のお伺い、驚かれたでしょう?」

 にっこりと微笑むその顔は、美しい。
 しかしエレナの勘が告げていた――この人、完全に“やりに来た”タイプだ。

(……嫌な予感しかしませんわね)


---

◆リディアの宣戦布告

「本日はご挨拶に伺いましたの。
 ルカ様の“真のご結婚相手”として」

「失礼ですが、それは……誰のご決定でしょう?」

「もちろん、侯爵家のですわ。
 あなたのような、出自の怪しい方では相応しくありませんもの」

(出たわね、典型的な“勘違い系のお嬢様”……!)

 やわらかく微笑むエレナの背後では、使用人たちがピキピキと凍り付いていた。


---

◆エレナ、穏やかに反撃

「私どもは正式に婚姻しております。
 その事実は、王家の紋章入りの証書にも記されておりますが……」

 エレナは静かに書類を机の上へ置いた。
 リディアの笑顔が一瞬ひきつる。

「そ、それは……ですが、侯爵家は認めておりませんわ!」

「そうですか。では、旦那様に直接伺ってみましょう。
 ちょうど今、領地視察からお戻りになったばかりですし」

「えっ」

 その瞬間、扉がノックされた。


---

◆ルカ登場、そして“保護者モード”発動

「エレナ、聞こえたが……使者が来ているのか?」

 姿を現したルカは、昨夜よりもさらに鋭い気配をまとっていた。
 だがエレナを見ると、その表情がふっとやわらぐ。

 対して、リディアの顔色は見るからに青ざめていく。

「ル、ルカ様……! 私、侯爵家の命で……!」

「侯爵家の命? 私の妻を侮辱するためにか?」

 低い声が応接室に響いた。

「エレナは私の正式な妻だ。
 侯爵家であろうと、彼女を傷つければ許さない」

 その一言で、リディアは完全に固まった。

 エレナですら思わずドキッとしたほど、迷いのない“守る者の声”だった。


---

◆使者たち、逃げるように退散

「ひ、ひとまず今日は失礼いたします……!」

 リディアは足をもつれさせつつ退室。
 使用人たちは、静かに、しかし見事なチームワークで“お見送り”した。

 部屋に残ったのは、エレナとルカだけ。

「……ごめん。迷惑をかけたな」

「いいえ。それより……旦那様が、あんなふうに言ってくださるとは思いませんでしたわ」

 そう言うと、ルカはわずかに顔を背けた。

「……当然だ。君は、私の妻だ。
 誰が何と言おうと、守るのは当然だろう」

 エレナの胸が、不意に熱くなる。

 昨夜感じた揺らぎが、よりはっきりとした形になって迫ってくる。


---

◆そして、物語は次の局面へ

(……この婚姻、本当に“白い結婚”のままでいられるのかしら)

 エレナの心は、静かに波立ち始めていた。

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