『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』

鷹 綾

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第39話 侯爵家からの圧力と、揺らぐ“白い夫婦”

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第39話 侯爵家からの圧力と、揺らぐ“白い夫婦”

 リディア一行が去ったその日の午後。
 屋敷の空気はどこか落ち着かず、使用人たちもざわついていた。

 エレナは書斎で仕事を進めながらも、胸の奥がざわりと揺れ続けている。

(……旦那様は、迷惑ではなかったかしら。
 私との結婚は“白い結婚”なのに)

 と、そこへルカが静かに入室した。

「エレナ、少しいいか?」

「もちろんです。どうぞ」

 いつもより声が低い。
 ただならぬ気配がある。


---

◆侯爵家からの正式文書

 ルカは机の上に分厚い封筒を置いた。

「サルヴァトーレ侯爵家からの文書だ。
 “婚姻の無効と、リディア嬢との再婚を求める”と書かれていた」

「……随分と思い切った要求ですわね」

「まったくだ。私への侮辱以前に、君への冒涜だ」

 ルカの指がわずかに震えている。
 怒りを押し殺している証拠だった。


---

◆エレナ、冷静に状況分析

「侯爵家は……旦那様を政治的に利用したいのでしょう。
 私の出身国とは異なる思惑も働いているはず」

「わかっている。だがーー」

 ルカは深く息を吸った。


---

◆ルカの“告白に近い本音”

「エレナ。私は……君との婚姻を誰にも否定させたくない」

「……旦那様?」

「最初は確かに政略だった。
 だが今は違う。
 君と過ごす日々が、私の生活の中心になっている」

 心臓が跳ねた。

(……それって、まるで……)

 ルカは続ける。

「君が笑うと嬉しい。
 怒ると慌てる。
 距離を置かれると、不安になる」

 エレナの手が震える。

(これ……告白? いえ、たぶん告白……!)


---

◆エレナ、動揺。そして少しだけ勇気。

「旦那様。
 ……私も、あなたとの生活が嫌ではありませんのよ」

 言葉に出した途端、頬が熱くなる。

 ルカは目を丸くし、それから少し微笑んだ。

「それだけで、十分だ」

 その声が優しくて、胸がぎゅっとなる。


---

◆ルカ、侯爵家との“決別”を決意

「侯爵家からの要求はすべて拒絶する。
 王家にも正式に手続きを出す。
 “妻への侮辱行為”として処罰も求めるつもりだ」

「そ、そこまで……?」

「当然だ。エレナを傷つけた報いだ」

 ルカの瞳は静かに燃えていた。
 穏やかな男が怒ると、これほど怖いのかとエレナは実感する。

(……私のために、ここまで。
 本当に、この婚姻……“白い”ままでいられるのかしら)

 胸が熱い。少し痛い。
 でも嫌じゃない。


---

◆そして物語は最終局面へ

 夜、エレナは一人、寝室の窓辺で月を見上げた。

(旦那様に、どう向き合えばいいのかしら……)

 自分の感情が、もう“契約夫婦”の枠をこえて動き始めていることに
 気づかないふりは、もうできなかった。


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