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第十四話 王家の資金不足露呈
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第十四話 王家の資金不足露呈
王宮の金庫室は、ひどく静かだった。
重厚な扉が閉じられ、石造りの壁に冷たい空気がこもっている。
「……これだけか」
国王の低い声が響いた。
金庫番が震える指で帳簿を差し出す。
「現時点で即時に動かせる金額は、こちらのみでございます」
帳簿の数字は、かつての半分にも満たない。
南方開発の違約金。
停止した港湾整備の損失補填。
東部砦補給の緊急調達。
どれも“保証前提”で組まれていた。
その保証が消えた今、王家単独では足りない。
「不足分は」
「……短期借入が必要かと」
「どこから借りる」
金庫番は言葉を詰まらせた。
公爵家は除外。
侯爵家はすでに保証を断っている。
「商会連合が条件付きで応じる可能性がございます」
「条件とは」
「利率が高く、返済期限も短い」
国王は目を閉じた。
信用が落ちれば、条件は厳しくなる。
それが市場の論理だ。
同じ頃、王太子の執務室。
「商会に借りればいい」
アルヴァリオは苛立たしげに言った。
「一時的な問題だ」
宰相は静かに書類を差し出す。
「利率をご確認ください」
アルヴァリオは目を通し、顔色を変える。
「……高すぎる」
「王家の信用が揺らいでおります」
その一言が刺さる。
「揺らいでいるのは、公爵家が噂を流しているからだ」
「噂の前に、契約がございます」
また条文。
また責任。
「臨時徴税は」
「商会が反発しております。流通が止まる恐れがございます」
八方塞がり。
「……俺は悪くない」
小さく漏れた。
だが、その声は机の上の書類に吸い込まれるだけだ。
公爵邸。
「王家が商会へ借入打診」
執事が報告する。
私は書類から目を上げた。
「条件は」
「かなり厳しいかと」
「当然ですね」
信用は目に見えないが、数字で表れる。
「お嬢様、王家の資金不足は社交界でも話題です」
家宰が言う。
「“王家単独では持たないのでは”と」
私は静かに紅茶を口にする。
「話題になるのは避けられません」
「お止めにならなくてよろしいのですか」
「公爵家が動けば、“やはり依存していた”と証明することになります」
沈黙。
それは、王家の自立が問われているということ。
王宮の回廊では、囁きが増えていた。
「王家の金庫が薄いらしい」
「南方の違約金で圧迫」
「公爵家保証が消えた途端に……」
噂は形を持ち始める。
単なる婚約破棄の騒動ではない。
王家の財務基盤の脆さ。
それが露呈し始めている。
夜。
国王は一人、机に向かっていた。
「……アルヴァリオ」
息子の名を呟く。
愛を選ぶこと自体は罪ではない。
だが、契約を読まずに署名し、保証を前提に国策を進める。
それは王として致命的だ。
「第二王子はどうだ」
側近が静かに答える。
「冷静でございます」
比較。
それは残酷だが、避けられない。
王太子の立場は揺らいでいない。
だが、“信頼”は揺らいでいる。
王都では、すでに次の話題が出始めていた。
「王太子殿下は資金をどう工面するのか」
「第二王子殿下のほうが適任では」
まだ声は小さい。
だが確実に広がっている。
公爵邸の庭。
夜風が薔薇を揺らす。
私は星を見上げる。
「お嬢様、王家の資金不足は深刻でございます」
「ええ」
私は静かに答える。
「ですが、それは公爵家の責任ではございません」
婚約は破棄された。
保証は失効した。
契約は終了した。
それだけのこと。
それでも王家は回ると思っていた。
その“当然”が崩れた今、露わになったのは――
依存。
そして、資金の空白。
嵐はまだ止まらない。
むしろ、ようやく全体が見え始めただけだ。
王家の金庫は薄くなり、信用は削れ、噂は広がる。
王太子はまだ理解していない。
問題は金ではない。
“王家単独で立てるのか”という問いが、静かに王都を包み始めている。
王宮の金庫室は、ひどく静かだった。
重厚な扉が閉じられ、石造りの壁に冷たい空気がこもっている。
「……これだけか」
国王の低い声が響いた。
金庫番が震える指で帳簿を差し出す。
「現時点で即時に動かせる金額は、こちらのみでございます」
帳簿の数字は、かつての半分にも満たない。
南方開発の違約金。
停止した港湾整備の損失補填。
東部砦補給の緊急調達。
どれも“保証前提”で組まれていた。
その保証が消えた今、王家単独では足りない。
「不足分は」
「……短期借入が必要かと」
「どこから借りる」
金庫番は言葉を詰まらせた。
公爵家は除外。
侯爵家はすでに保証を断っている。
「商会連合が条件付きで応じる可能性がございます」
「条件とは」
「利率が高く、返済期限も短い」
国王は目を閉じた。
信用が落ちれば、条件は厳しくなる。
それが市場の論理だ。
同じ頃、王太子の執務室。
「商会に借りればいい」
アルヴァリオは苛立たしげに言った。
「一時的な問題だ」
宰相は静かに書類を差し出す。
「利率をご確認ください」
アルヴァリオは目を通し、顔色を変える。
「……高すぎる」
「王家の信用が揺らいでおります」
その一言が刺さる。
「揺らいでいるのは、公爵家が噂を流しているからだ」
「噂の前に、契約がございます」
また条文。
また責任。
「臨時徴税は」
「商会が反発しております。流通が止まる恐れがございます」
八方塞がり。
「……俺は悪くない」
小さく漏れた。
だが、その声は机の上の書類に吸い込まれるだけだ。
公爵邸。
「王家が商会へ借入打診」
執事が報告する。
私は書類から目を上げた。
「条件は」
「かなり厳しいかと」
「当然ですね」
信用は目に見えないが、数字で表れる。
「お嬢様、王家の資金不足は社交界でも話題です」
家宰が言う。
「“王家単独では持たないのでは”と」
私は静かに紅茶を口にする。
「話題になるのは避けられません」
「お止めにならなくてよろしいのですか」
「公爵家が動けば、“やはり依存していた”と証明することになります」
沈黙。
それは、王家の自立が問われているということ。
王宮の回廊では、囁きが増えていた。
「王家の金庫が薄いらしい」
「南方の違約金で圧迫」
「公爵家保証が消えた途端に……」
噂は形を持ち始める。
単なる婚約破棄の騒動ではない。
王家の財務基盤の脆さ。
それが露呈し始めている。
夜。
国王は一人、机に向かっていた。
「……アルヴァリオ」
息子の名を呟く。
愛を選ぶこと自体は罪ではない。
だが、契約を読まずに署名し、保証を前提に国策を進める。
それは王として致命的だ。
「第二王子はどうだ」
側近が静かに答える。
「冷静でございます」
比較。
それは残酷だが、避けられない。
王太子の立場は揺らいでいない。
だが、“信頼”は揺らいでいる。
王都では、すでに次の話題が出始めていた。
「王太子殿下は資金をどう工面するのか」
「第二王子殿下のほうが適任では」
まだ声は小さい。
だが確実に広がっている。
公爵邸の庭。
夜風が薔薇を揺らす。
私は星を見上げる。
「お嬢様、王家の資金不足は深刻でございます」
「ええ」
私は静かに答える。
「ですが、それは公爵家の責任ではございません」
婚約は破棄された。
保証は失効した。
契約は終了した。
それだけのこと。
それでも王家は回ると思っていた。
その“当然”が崩れた今、露わになったのは――
依存。
そして、資金の空白。
嵐はまだ止まらない。
むしろ、ようやく全体が見え始めただけだ。
王家の金庫は薄くなり、信用は削れ、噂は広がる。
王太子はまだ理解していない。
問題は金ではない。
“王家単独で立てるのか”という問いが、静かに王都を包み始めている。
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