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第二十話 公開会議
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第二十話 公開会議
王都の大広間。
重厚な扉が開かれ、貴族たちが次々と入場する。
今日は非公開ではない。
王命により、財務監査の中間報告が“公開”される。
それが意味するものはひとつ。
隠さない、という宣言だ。
中央に長机が置かれ、その前に国王、重臣、監査官が並ぶ。
一段下に、王太子アルヴァリオとセシル。
ざわめきが広がる。
「公開とは……」
「ここまでとは」
「王家の信用に関わるぞ」
国王がゆっくりと立ち上がる。
「王家は疑念を放置せぬ」
静かな声。
だが重い。
「監査官、報告せよ」
監査官が一歩前へ出る。
「南方事業、東部補給再編、港湾整備の三案件について」
書類が配られる。
「保証前提で組まれた資金計画。婚約破棄により保証失効」
ざわめき。
「盗用問題。原案と王宮提出案の一致を確認」
セシルの肩が震える。
「さらに」
監査官の声が一段低くなる。
「南方商会前払金の一部が、アーディン家名義口座へ移動」
場が凍りつく。
「不自然な分割送金。承認印は王太子殿下のもの」
視線が一斉にアルヴァリオへ向かう。
「説明を求める」
国王の声。
アルヴァリオは立ち上がる。
「……投資の一環だ」
小さなざわめき。
「将来利益で補填予定だった」
「王家の正式承認は」
「俺が承認した」
重臣の一人が問う。
「利益計画書は」
沈黙。
用意されていない。
「横領の疑いは否定できますか」
セシルが叫ぶ。
「違います!父が運用を――」
「王家資金です」
監査官が遮る。
「私的運用は許可されておりません」
場内の空気が変わる。
それは怒りではない。
失望だ。
国王はゆっくりと息を吐く。
「アルヴァリオ」
その名を呼ぶ声に、父としての響きはない。
「王太子としての自覚はあったか」
アルヴァリオは答えられない。
彼の胸に浮かぶのは、舞踏会の夜。
“俺が守る”
だが守る対象を、間違えた。
重臣の一人が立ち上がる。
「王家の信用は、契約と責任で成り立つ」
「情ではない」
冷たい言葉。
セシルは青ざめる。
味方のはずだった貴族たちが、誰も口を開かない。
公爵邸。
報告はすぐに届く。
「公開の場で、不正が明言されました」
私は頷く。
「王家は隠さなかった」
「はい」
それは最後の矜持。
隠蔽せず、晒す。
だが晒せば、傷は深まる。
王都では、噂が一気に確信へ変わる。
「横領は事実」
「王太子の監督責任」
「義妹の家族も関与」
茶会の席で、令嬢が呟く。
「婚約破棄の夜、勝ったと思っていましたのに」
「本当に勝っていたのは……」
名前は出ない。
だが、皆が知っている。
大広間。
アルヴァリオは座ったまま拳を握る。
視線が痛い。
誇りが削られる。
セシルが小さく呟く。
「殿下、どうして……」
答えはない。
公開会議は、単なる報告ではない。
それは宣言だ。
王家は揺らいでいる、と。
そして王太子の資質が、衆目の前で問われている。
国王が最後に告げる。
「監査は継続する」
短い言葉。
だが、その意味は明白。
まだ終わらない。
むしろ、ここからだ。
公開された事実は、もう後戻りできない。
王太子は守る選択をした。
その結果を、今、王都全体が見ている。
そして――
王家の天秤は、ゆっくりと傾き始めていた。
王都の大広間。
重厚な扉が開かれ、貴族たちが次々と入場する。
今日は非公開ではない。
王命により、財務監査の中間報告が“公開”される。
それが意味するものはひとつ。
隠さない、という宣言だ。
中央に長机が置かれ、その前に国王、重臣、監査官が並ぶ。
一段下に、王太子アルヴァリオとセシル。
ざわめきが広がる。
「公開とは……」
「ここまでとは」
「王家の信用に関わるぞ」
国王がゆっくりと立ち上がる。
「王家は疑念を放置せぬ」
静かな声。
だが重い。
「監査官、報告せよ」
監査官が一歩前へ出る。
「南方事業、東部補給再編、港湾整備の三案件について」
書類が配られる。
「保証前提で組まれた資金計画。婚約破棄により保証失効」
ざわめき。
「盗用問題。原案と王宮提出案の一致を確認」
セシルの肩が震える。
「さらに」
監査官の声が一段低くなる。
「南方商会前払金の一部が、アーディン家名義口座へ移動」
場が凍りつく。
「不自然な分割送金。承認印は王太子殿下のもの」
視線が一斉にアルヴァリオへ向かう。
「説明を求める」
国王の声。
アルヴァリオは立ち上がる。
「……投資の一環だ」
小さなざわめき。
「将来利益で補填予定だった」
「王家の正式承認は」
「俺が承認した」
重臣の一人が問う。
「利益計画書は」
沈黙。
用意されていない。
「横領の疑いは否定できますか」
セシルが叫ぶ。
「違います!父が運用を――」
「王家資金です」
監査官が遮る。
「私的運用は許可されておりません」
場内の空気が変わる。
それは怒りではない。
失望だ。
国王はゆっくりと息を吐く。
「アルヴァリオ」
その名を呼ぶ声に、父としての響きはない。
「王太子としての自覚はあったか」
アルヴァリオは答えられない。
彼の胸に浮かぶのは、舞踏会の夜。
“俺が守る”
だが守る対象を、間違えた。
重臣の一人が立ち上がる。
「王家の信用は、契約と責任で成り立つ」
「情ではない」
冷たい言葉。
セシルは青ざめる。
味方のはずだった貴族たちが、誰も口を開かない。
公爵邸。
報告はすぐに届く。
「公開の場で、不正が明言されました」
私は頷く。
「王家は隠さなかった」
「はい」
それは最後の矜持。
隠蔽せず、晒す。
だが晒せば、傷は深まる。
王都では、噂が一気に確信へ変わる。
「横領は事実」
「王太子の監督責任」
「義妹の家族も関与」
茶会の席で、令嬢が呟く。
「婚約破棄の夜、勝ったと思っていましたのに」
「本当に勝っていたのは……」
名前は出ない。
だが、皆が知っている。
大広間。
アルヴァリオは座ったまま拳を握る。
視線が痛い。
誇りが削られる。
セシルが小さく呟く。
「殿下、どうして……」
答えはない。
公開会議は、単なる報告ではない。
それは宣言だ。
王家は揺らいでいる、と。
そして王太子の資質が、衆目の前で問われている。
国王が最後に告げる。
「監査は継続する」
短い言葉。
だが、その意味は明白。
まだ終わらない。
むしろ、ここからだ。
公開された事実は、もう後戻りできない。
王太子は守る選択をした。
その結果を、今、王都全体が見ている。
そして――
王家の天秤は、ゆっくりと傾き始めていた。
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