『平民を人間扱いしない公爵令息、あなたも平民です! ~系譜検察官の目は欺けません~

鷹 綾

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第30話 王前審問

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第30話 王前審問

王宮謁見の間。

重厚な扉がゆっくりと開いた。

その瞬間、場の空気が張り詰める。

赤い絨毯の両側には貴族たちが整列している。

そして正面の玉座。

そこに座るのは――国王。

王国最高の権威。

この場はただの謁見ではない。

王前審問。

王命によって行われる正式な審理だった。

ざわめきが広がる。

「本当に呼び出されたのか」

「ジオニック公爵が」

「公爵家が審問など……」

重い扉がもう一度開く。

侍従が声を張り上げた。

「ジオニック公爵、入場!」

大広間に緊張が走る。

ゆっくりと歩いて入ってきたのは一人の男。

壮年の貴族。

豪奢な衣装。

堂々とした態度。

ジオニック公爵。

その後ろに立つのは息子、

アドリアン。

父子は玉座の前まで進む。

そして止まった。

公爵は軽く一礼する。

「陛下」

落ち着いた声だった。

「突然の召喚とは、いかなる御用でしょう」

国王は静かに言った。

「王命による審問だ」

その一言で空気が凍る。

「ジオニック公爵家の系譜について」

「重大な疑義が提出された」

ざわめき。

公爵の眉がわずかに動く。

「疑義……?」

国王は続ける。

「王国系譜検察官より報告書が提出された」

「よって王命調査を実施した」

公爵の声が低くなる。

「まさか」

「我が家を疑っておられるのですか」

国王は答える。

「疑いではない」

そして短く言った。

「確認だ」

公爵は鼻で笑う。

「名門公爵家に対して確認とは」

「随分な扱いですな」

だが国王は動じない。

「調査結果を聞こう」

そして命じた。

「前へ」

赤い絨毯の上を、一人の少女が歩く。

黒いドレス。

落ち着いた表情。

アウレリア。

彼女は玉座の前で一礼した。

「王国系譜検察官補佐、アウレリアでございます」

貴族たちがざわめく。

系譜検察官。

それは貴族社会では特別な意味を持つ役職だった。

血統を調べる者。

爵位の正統性を確認する者。

つまり――

貴族の存在そのものを証明する役職。

アウレリアは静かに言った。

「調査報告を提出いたします」

侍従が羊皮紙を受け取り、玉座へ運ぶ。

国王はそれに目を通す。

沈黙。

謁見の間には誰一人として声を出さない。

やがて国王が顔を上げた。

「説明せよ」

アウレリアは頷く。

「はい」

そして静かに語り始めた。

「ジオニック公爵家の爵位認定契約書」

侍従が一つの古文書を持ってくる。

「こちらは王宮公文書庫に保管されていた原本です」

公爵の表情が少し硬くなる。

アウレリアは続けた。

「この文書には複数の矛盾があります」

公爵が言う。

「矛盾?」

アウレリアは指差した。

「第一に、国王署名の筆跡」

侍従が別の文書を並べる。

「同時期の王命書と比較した結果」

「筆跡が一致しません」

ざわめき。

公爵の表情が歪む。

「偶然だ」

「筆跡など変わるものだ」

だがアウレリアは続ける。

「第二に、証人の署名」

彼女は文書の一部を示した。

「ここに署名している証人は」

「その時点で既に死亡しています」

貴族たちが息を呑む。

「そんな……」

公爵が怒鳴る。

「でたらめだ!」

アウレリアは淡々と言う。

「第三に」

「紋章登録」

紋章台帳が運ばれる。

「ジオニック家の紋章登録は」

「爵位認定より後に作られています」

ざわめき。

普通なら逆だ。

紋章登録があり、その後に爵位が認められる。

アウレリアは静かに言った。

「順序が逆です」

公爵の顔から血の気が引く。

だが彼はまだ言う。

「書類の不備だ!」

「それだけで我が家を疑うのか!」

アウレリアは最後の文書を出した。

「王宮系譜記録」

「三十年前以前」

「ジオニック家の記録は存在しません」

謁見の間が凍りつく。

それはつまり。

この家は突然現れた家ということ。

アウレリアは頭を下げた。

「以上の調査結果より」

静かな声。

「ジオニック公爵家の爵位認定には重大な不正の可能性があります」

沈黙。

すべての視線が玉座へ向く。

国王はゆっくりと口を開いた。

「ジオニック公爵」

低い声。

「説明せよ」

公爵は口を開く。

だが言葉が出ない。

そして。

その沈黙が、

すべてを物語っていた。

国王は静かに言った。

「よかろう」

その一言で空気が凍る。

「王命により」

「最終判断を下す」

謁見の間の誰もが理解した。

次の宣告で、

ジオニック家の運命が決まる。


---

もしよければ次に
この作品で一番カタルシスが出る

第31話(王命断罪・強ざまぁ回)

を書きます。

ここは読者が一番気持ちよくなる回なので
かなり強いざまぁにできます。
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