『平民を人間扱いしない公爵令息、あなたも平民です! ~系譜検察官の目は欺けません~

鷹 綾

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第31話 王命断罪

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第31話 王命断罪

王宮謁見の間。

空気は張り詰めていた。

赤い絨毯の中央。
そこに立たされているのは――

ジオニック公爵。

そしてその背後に、

アドリアン。

玉座には国王。

左右には王国の重臣と貴族たち。

王前審問の場である。

先ほどアウレリアによって提出された調査報告。

爵位認定契約書。
紋章登録台帳。
王宮系譜記録。

そして決定的証拠――

偽造契約書。

すべてが並べられていた。

国王はゆっくりと書類を閉じる。

そして静かに言った。

「ジオニック公爵」

低く重い声。

「説明はあるか」

公爵の顔は蒼白だった。

しかし次の瞬間。

彼は叫んだ。

「これは陰謀です!」

ざわめきが起こる。

公爵は必死に言葉を続ける。

「書類の不備にすぎません!」

「戦乱の時代の記録です!」

「多少の矛盾など珍しくもない!」

アウレリアは何も言わない。

ただ静かに立っている。

公爵はさらに声を荒げる。

「証人が死んでいる?」

「紋章登録の順序?」

「そんなもの!」

「役人の手違いでしょう!」

貴族たちの視線は冷たい。

だが公爵は気づかない。

必死に言い続ける。

「それを理由に!」

「我が公爵家を疑うなど!」

その時だった。

後ろから声が響く。

「そうだ!」

アドリアンだった。

彼は前へ出る。

「こんなものは陰謀だ!」

そしてアウレリアを指差した。

「この女だ!」

「書物ばかり読んでいる学者風情が!」

「公爵家を貶めようとしている!」

ざわめきが広がる。

アドリアンは叫ぶ。

「こんな女の調査など信用できるか!」

「証拠など捏造だ!」

その瞬間だった。

国王の声が落ちた。

「黙れ」

低い一言。

謁見の間の空気が凍る。

アドリアンは言葉を失う。

国王はゆっくりと彼を見た。

そして言った。

「世の認めた」

一拍。

「系譜検察官の能力を疑うのか?」

雷のような言葉だった。

貴族たちがざわめく。

系譜検察官。

それは王国が公式に認めた血統調査の権威。

その能力を疑うということは、

王国制度そのものへの否定。

アドリアンの顔が青くなる。

「そ……それは……」

言葉が続かない。

国王は静かに続けた。

「王命による調査だ」

「証拠も揃っている」

そして侍従に命じる。

「出せ」

一枚の羊皮紙が運ばれてくる。

それは――

偽造契約書。

さらにもう一枚。

家系図偽造の依頼契約書。

謁見の間がどよめく。

公爵の顔から血の気が消えた。

国王が言う。

「証人は既に拘束している」

沈黙。

公爵の膝が震える。

そして次の瞬間。

彼は崩れ落ちた。

「お許しください!」

謁見の間がざわめく。

公爵は床に手をつき、必死に叫ぶ。

「私は!」

「家を守りたかっただけです!」

「戦乱の混乱の中で!」

「生き残るために!」

だが国王の表情は変わらない。

アドリアンが叫ぶ。

「父上!」

そして玉座へ向かって言う。

「陛下!」

「これは罪ではありません!」

「貴族とは力です!」

「三十年も公爵として働いてきた!」

「それを今さら否定するなど!」

その姿は必死だった。

しかし貴族たちの視線は冷たい。

誰も味方しない。

国王はゆっくり立ち上がった。

場が完全に静まり返る。

そして宣言する。

「ジオニック家」

重い声。

「爵位詐称罪」

貴族たちが息を呑む。

国王は続ける。

「よって」

「ジオニック公爵家の爵位を剥奪する」

公爵は崩れ落ちた。

アドリアンが叫ぶ。

「待て!」

「私は貴族だ!」

「公爵の息子だ!」

国王は冷たく言った。

「違う」

そして最後の宣告。

「お前たちは」

一拍。

「平民だ」

謁見の間が凍りつく。

国王はさらに命じた。

「全財産没収」

「爵位詐称の罪により」

「身柄を拘束する」

衛兵が前に出る。

アドリアンが暴れる。

「触るな!」

「私は貴族だ!」

「離せ!」

衛兵は淡々と腕を掴む。

アドリアンは叫び続ける。

「こんなはずがない!」

「私は公爵だ!」

「公爵なんだ!」

その姿は、

あまりにも見苦しかった。

アウレリアは静かに目を伏せる。

そして小さく呟いた。

「いいえ」

その声は静かだった。

「あなたは」

「最初から」

「ただの平民です」

こうして――

偽りの公爵家は、王命によって完全に終わった。
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