真実の愛のお相手は弟の妻でした ―年上悪役令嬢は二十九歳―』

鷹 綾

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第十九話 年齢発覚

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第十九話 年齢発覚

王都の貴族街。

とある侯爵家のサロンで、小さな茶会が開かれていた。

テーブルの上には香り高い紅茶と菓子。

だが、集まった令嬢たちの話題は甘いものではなかった。

「……聞きまして?」

一人の伯爵令嬢が声を潜める。

「ヴィオレッタ様のこと」

数人の令嬢が視線を合わせる。

「またその話?」

「ええ、でも今度は――」

彼女は周囲を見回し、さらに声を落とした。

「年齢の話ですの」

沈黙が落ちた。

一人の侯爵令嬢が眉をひそめる。

「年齢?」

伯爵令嬢は頷いた。

「二十九歳だとか」

部屋の空気が一瞬止まる。

「……え?」

別の令嬢が思わず声を上げた。

「二十九歳?」

「まさか」

「ヴィオレッタ様は二十歳でしょう?」

そう言った令嬢に、伯爵令嬢は静かに言う。

「それが」

「教会の記録が見つかったそうですの」

侯爵令嬢が小さく呟く。

「教会?」

「結婚の記録」

その言葉に全員が息を呑んだ。

一人の令嬢が言う。

「ダリオン様との…」

伯爵令嬢は頷く。

「三年前の結婚」

侯爵令嬢は計算するように指を動かした。

「三年前…」

「当時十九歳?」

伯爵令嬢は静かに首を振る。

「いいえ」

そして言った。

「二十八歳」

一瞬。

誰も言葉を出せなかった。

「……二十八歳?」

「結婚当時?」

「つまり」

侯爵令嬢が呟く。

「今は」

伯爵令嬢ははっきり言った。

「二十九歳」

部屋がざわめく。

「そんな…」

「でも社交界では」

「ずっと二十歳…」

一人の令嬢が震える声で言う。

「年齢詐称?」

その言葉が空気を重くする。

侯爵令嬢が静かに言う。

「それより問題は」

「王太子殿下ですわ」

全員が頷いた。

「ええ」

「殿下はご存知なの?」

伯爵令嬢は首を振る。

「分かりません」

だが別の令嬢が言った。

「人妻なのは知っているでしょう?」

沈黙。

「それでも婚約」

「しかも二十九歳…」

誰かが小さく呟く。

「王太子妃…?」

その時。

別の令嬢がふっと笑った。

「でも」

「殿下は知らないのでは?」

侯爵令嬢が首を傾げる。

「何を?」

令嬢は小声で言う。

「年齢」

一瞬。

室内が静まり返った。

そして。

一人がぽつりと呟いた。

「もし殿下が知らないなら」

「大変ですわね」

侯爵令嬢がため息をつく。

「ええ」

そして静かに言った。

「だって殿下」

「二十歳の令嬢を選んだつもりで」

彼女は紅茶を口に運びながら続けた。

「二十九歳の人妻を婚約者にしたのですもの」

その言葉に、令嬢たちは一斉に顔を見合わせた。

そして。

小さな笑いが漏れた。

「……ふふ」

「殿下が知ったら」

「どうなるのかしら」

侯爵令嬢が静かに言う。

「さあ」

そしてゆっくり紅茶を置いた。

「でも」

彼女の目は鋭かった。

「この話」

「もう止まりませんわ」

その言葉通り。

その日を境に――

王都中に噂が広がり始めた。

ヴィオレッタ・オデット。

二十九歳。

人妻。

そして。

未来の王太子妃。
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