真実の愛のお相手は弟の妻でした ―年上悪役令嬢は二十九歳―』

鷹 綾

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第二十四話 王太子の掌返し

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第二十四話 王太子の掌返し

王宮の会議室。

重い空気が室内を満たしていた。

長いテーブルの周囲には、王宮の重臣たちが座っている。

宰相。
法務卿。
宮廷司祭。

そして。

部屋の中央には、カルディオン王太子が立っていた。

彼は苛立った様子で腕を組んでいる。

「つまり」

宰相が静かに言った。

「社交界で広まっている噂は事実ということですか」

カルディオンは苛立って言う。

「知らん」

その言葉に、宰相は眉をひそめた。

「殿下」

カルディオンは机を叩いた。

「だが一つだけはっきりしている!」

彼は声を荒げた。

「私は騙されていたのだ!」

室内がざわめく。

宰相が静かに言う。

「騙された……とは?」

カルディオンは怒りに満ちた顔で言った。

「ヴィオレッタだ!」

彼は吐き捨てる。

「二十歳だと言っていた!」

「それが二十九歳だと?」

彼は拳を握る。

「ふざけるな!」

宰相は静かに答えた。

「年齢詐称の件ですね」

カルディオンは頷く。

「そうだ!」

彼は強く言った。

「私は若い令嬢だと思っていた!」

宰相は少し間を置いた。

そして静かに言う。

「殿下」

カルディオンは苛立って睨む。

「何だ」

宰相は冷静だった。

「ヴィオレッタ嬢が既婚者であることは」

「ご存知でしたね」

カルディオンは一瞬黙った。

だがすぐに言う。

「それは問題ない!」

彼は言い切った。

「離婚させればいい!」

室内の空気がさらに重くなる。

宰相は小さく息を吐いた。

「つまり」

彼は言う。

「殿下は」

「人妻であることは理解した上で」

「関係を持たれた」

カルディオンは不機嫌そうに言う。

「愛だ」

宰相は無表情だった。

カルディオンは続ける。

「私は彼女を救おうとした!」

彼は机を叩く。

「公爵家が無理やり嫁がせたのだ!」

「可哀想な女性を助けるのが何故悪い!」

その言葉を聞いた宰相は、しばらく黙っていた。

そしてゆっくり言った。

「殿下」

カルディオンは睨む。

「何だ」

宰相は冷静に言う。

「年齢の件は」

「確かに騙された可能性があります」

カルディオンは頷いた。

「そうだ!」

宰相は続ける。

「ですが」

その声は静かだった。

「人妻であることは」

「最初からご存知でした」

カルディオンの顔が歪む。

宰相はさらに言う。

「したがって」

「不貞の問題は」

彼ははっきり言った。

「消えません」

室内が静まり返る。

カルディオンは言葉を失った。

そして。

彼は怒りに震えながら言った。

「……つまり」

宰相は答えた。

「殿下」

その声は冷静だった。

「年齢詐称は」

「免罪符にはなりません」

カルディオンは拳を握る。

だが。

もう言葉が出なかった。

その沈黙が。

王宮の重い空気の中で――

長く続いた。
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