真実の愛のお相手は弟の妻でした ―年上悪役令嬢は二十九歳―』

鷹 綾

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第二十九話 自白

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第二十九話 自白

玉座の間。

重い沈黙が続いていた。

国王の言葉が、空気を冷たく凍らせている。

「今の発言は、すべて記録された」

カルディオン王太子の顔がわずかに歪んだ。

だが次の瞬間、彼は鼻で笑った。

「それがどうした」

玉座の間の貴族たちがざわめく。

カルディオンは腕を組んだ。

「何が問題だ」

「私は間違っていない」

彼は堂々と言い切る。

「不幸な結婚から女性を救う」

「それが罪だというのか?」

その言葉に、何人かの貴族が目を伏せた。

だがカルディオンは気づかない。

彼はさらに言葉を続けた。

「そもそも」

彼はヴィオレッタの肩に手を置く。

「こんな美しい女性が」

「不幸な結婚をしているのが間違いだ」

ヴィオレッタは涙を浮かべていた。

「殿下……」

弱々しい声。

カルディオンは彼女を守るように立つ。

「安心しろ」

「俺が守る」

その言葉を聞いた瞬間。

宰相が小さく目を閉じた。

フロレンティアは静かにその様子を見ている。

カルディオンはさらに続ける。

「父上」

彼は玉座を見上げる。

「これは正義です」

「人妻だから助けない?」

彼は笑った。

「そんな馬鹿な話があるか」

玉座の間の空気がさらに重くなる。

カルディオンは胸を張る。

「私は王太子だ」

「王族として」

「弱い女性を救った」

そして。

誇らしげに言った。

「人妻でも助ける」

「それが正義だ」

沈黙。

誰もすぐには言葉を発しなかった。

やがて。

フロレンティアが静かに言った。

「なるほど」

カルディオンが彼女を見る。

「何だ」

フロレンティアは穏やかに微笑んだ。

「殿下の正義は」

少し首を傾げる。

「とても分かりやすいですわ」

カルディオンは得意そうに笑う。

「当然だ」

フロレンティアは続ける。

「つまり」

彼女は静かに言った。

「人妻と関係を持ったことは」

「事実」

カルディオンは迷わず答えた。

「当然だ」

フロレンティアはもう一度確認する。

「本人の意思で?」

カルディオンは即答した。

「もちろんだ!」

その瞬間。

宰相がゆっくり目を開く。

法務卿が書類を閉じた。

宮廷記録官が羽ペンを置く。

フロレンティアは小さく礼をした。

「ありがとうございます」

カルディオンは眉をひそめる。

「何がだ」

フロレンティアは穏やかに答えた。

「自白をいただきましたので」

玉座の間。

完全な沈黙。

カルディオンの顔が固まる。

宰相が静かに言った。

「記録」

宮廷記録官が答える。

「はい」

「王太子殿下」

「人妻との関係を認めました」

法務卿がゆっくり言う。

「証言成立」

そして。

玉座の上。

国王が静かに言った。

「これで」

一瞬の間。

「言い逃れはできぬ」

カルディオンの顔から血の気が引いた。
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